24日目:「サンタクロース」とは出口戦略がすべて(100日目に40歳になる猪瀬)
※この記事はサンタクロース(以下、サンタ)の存在に関するネタバレを含みます
クリスマスの季節がやって来た。といっても、クリスマスを祝う理由をいまだにわかっていないので、私は花見のような季節を愉しむイベントくらいの感覚だ。
恋人たちはよくこの日に愛を語らい確かめ合うというが、親になってからはそんな流暢なことも言っていられなくなった。どこの誰がいつから始めたのかもわからない高難度イベント「サンタクエスト」が始まるからだ。
寝ている時にそっとプレゼントを置いたり、変装してプレゼントを渡したりとサンタクエストの任務遂行の方法は家庭によって試行錯誤と工夫がなされている。いずれにしても子供の笑顔が溢れる心温まる光景だ。
たが、このとき大人は当然のように嘘を付いていることを忘れてはならない。喜ぶ子どもの笑顔がみたいという利己的な理由で嘘を付いているかもしれない。いずれにしても愛情からくる優しい嘘だ。だからそのことについて私はとやかく言うつもりはない。私もときどきついてしまう。
重要なのはそんな嘘も子どもが成長すると自然と気づくようになるということだ。ネタばらしをしなければならない瞬間が必ずやってくる。魔法はいつか解けるものなのだ。
そのときどんな言葉を投げかけるか考え、準備している人はどれだけいるだろう。 何事もなかったかのように受け流すのだろうか。
そう、このサンタクエストの一番の難しさはタネの明かし方なのだ。愛ゆえの嘘の精算をするときこそ、最後まで子どもへの愛を持って接して欲しい。
私はこのネタばらしの瞬間を雑に扱われたことによって、いまでも思い出せるくらいには当時衝撃を受けた。大人にとっては些細なことも子どもにとっては一大事なのだ。自分がサンタのためにこれまでしてきたことが無意味に感じて悲しさが心の底から溢れかえった。
自分の体験の中で嫌な予兆は何年もかけて何度もあった。
・プレゼントが欲しいと思っていたものと違った
・今年はいらないと念じていたのに何故かプレゼントが届いた
・プレゼントに対する熱い想いと感謝の言葉を綴った手紙を机の引き出しにこっそりとしまっていたら、プレゼントにまったく反映されなかった
これらの積み重ねから、なぜか両親が知っていることしかプレゼントに反映されないことを経験として学習した。首を傾げて不思議に思いながらも、それでも両親から何も言われなかったのでサンタを信じていた。
そうこうしてるうちに、サンタの存在を大きく揺さぶる決定打が友達から放たれてしまう。
「サンタってお父さんらしいよ?」
これまで信じていたことが嘘だったとわかったとき、どれだけの虚無感に襲われるのか想像してもらいたい。そこに気持ちをたくさんこめて、自分なりに行動していたのならならなおさらその反動は大きいのだ。
だから今回はそんな私の経験を踏まえて、私なりの「サンタクエスト」に対する明るい出口戦略を綴る。我が子が成長してこの記事を読める頃にはきっと私の仲間になってくれると信じて。
① 「サンタクロース」 とは
はたしてこの言葉を辞典で引くべきか、引かざるべきか……私は小一時間悩んだ。なぜならもし辞典で引いたとき、そこに「サンタクロース」が記載されていたら扱いに困るからだ。
概念が言語化されるとそこに意味が生まれる。意味が辞典に載った瞬間から「サンタクロース」という存在は固定されるのだ。これは禁断のワードな気がする。我が子が周りにいないことを確認するとすばやく言葉を引いた。
見つけてしまった……。今回はあえて触れずに先に勧めたい。子どもが辞典で引かないことを祈る。
② 私の釈義
我が家のサンタクエストの出口戦略を紹介する。といってもまだこの戦略を実行する段階に至っていない(まだサンタを信じている)ので、今のところプランニングどまりではあることをご承知おきいただきたい。
まず、出口戦略というと戦争や経営で使われる言葉だ。ここではサンタの存在にひとまずの幕引きをするにあたり、我が子からの心理的な損失を最小限に留める方法くらいの意味で捉えてもらいたい。
そして実際の経営に当てはめて考えると、よく言われる出口は5つある。
なので、これを我が家のサンタクエストに当てはめてみよう。するとこんな感じだろうか。
サンタの存在を明らかにするとき、一般的には4が選択されていることがわかる。そして、外部から仕入れた情報により、サンタの真実を知った我が子が一方的に判断して5になることだけは絶対に避けねばならない。
3は両親を疑っている場合の一時的な場しのぎには有効だろう。ただ、本質的には解決していないのでいずれ他の選択を迫られる。また1にすることでより非日常的な演出などもできそうだが、今回の幕引きの手段としては向いてなさそうである。
ということで、私の中での選択肢は2か4に絞られた。そしてしばらく考えた後、私は2に決めた。我が子に活動を継ぐことを目指す。
なぜならサンタクエストを改めて考えてみると、とても素敵に思うのは誰かのために考えて実際に行動しているということだ。親が愛する我が子のために一生懸命になって頑張っているのだ。
つまり、サンタクエストの価値はプレゼントを送るという物理的なやりとりにではなく、そうしたいと思ったこの利他的な気持ちにある。だからそれを育む機会にできないかと考えた。
ということで、サンタクエストを継承する際のシナリオを用意することにしたのだ。これはいままで貰う側(Take)だったものを今度は渡す側(Give)に一緒になろうと提案するものである。
これで我が子の気持ちが毀損されれずにタネ明かしの瞬間を受け止めてもらえるだろうか。来たるべき時を思うと少しドキドキする。そして願わくば利他的な気持ちを育む機会になってもらいたい。
サンタクロースとは出口戦略がすべて
■想定シナリオ
▼我が子(想定:小学校1〜3年生)
同級生との会話や自分の中で生まれた違和感によりサンタの存在について疑念を持ち始め、私や妻に相談する。もしくは疑問を投げかけるなどの行動をとる
▼私
まずは笑顔で子どもを迎える。子どもが「なんでお父さんはこんなに笑顔なんだろう?」と思われるくらいがいい!
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不思議がっていても気にせず進める。「また一つ成長したな!」的な言葉で抱きかかえる。ずっと私が喜んでいることを発信し続ける。
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十分に盛り上げてから、トナカイで空を飛び煙突から入ってくるサンタは伝説上の人物であることを伝える。そのうえで、フィンランドにサンタクロース村があってそこにサンタがいることは伝える
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そしてプレゼントは私が用意していたこと、私がそうしていた理由は私がフィンランドのサンタと約束していたからだと真面目に語る
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サンタとした約束の内容はみんなを笑顔にすること
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そして、サンタの存在について疑問を持ったということは、私と同じプレゼントを用意する側に回る準備が整ったことを告げる。クラスチェンジするタイミングなのだと
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プレゼントを貰って嬉しかったかどうかを確認する
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今度は自分がプレゼントを用意してみんなを喜ばせる番になったことを伝え、その手始めに、次のクリスマスには私と一緒にお母さんに内緒でヒミツのプレゼントを用意することを提案する。サンタはバレてはいけない
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最後に、我が子にはサンタからではなく父として私からプレゼントを贈ることを約束する
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