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「食べる」が怖い

ある日から、人前で食べることが怖くなった。

所謂、“会食恐怖症”というものだと思うけれど、診断がおりているわけでもなく、ただずっと食べることが怖いと感じている。


小さい頃がずっと好き嫌いが多くて人よりも少食だったのもあってか、給食も好きではなかった(もはや休み時間まで残って食べているタイプの子どもだった)し、食自体に興味がなくて「食べずに生きていけるのなら食べなくたっていいや」とすら思っていた。

そんなわたしが会食恐怖症になったきっかけは高校生の頃に行った保育園実習だったと思う。
高校生とはいえ職業体験のようなものではなくて、夏休みに1週間保育園に通って日誌も書くような、専門コースならではの本格的な実習に行かせてもらっていた。


そんな実習で給食を食べるとき、わたしはお味噌汁のお椀を滑って落としてしまった。それも1日に2回。

その日のおやつはスイカだったのだけれど、先生たちは机でスイカを食べている中、わたしは子どもたちと一緒にブルーシートで食べるよう指示された。

短い実習期間の中で少しでも長く子どもと関わってほしい、子どもたちも実習生という存在が好きだから嬉しいだろう、という意味をもった指示だったかもしれない、というかそうだったのだと頭では思っている。けれど、その日のわたしには「貴方は食べものをこぼすから子どもと一緒に汚れてもいい場所で食べてください」という意味に聞こえてしまった。先生たちが机を囲んで笑っていると、自分自身が笑われているような気がした。


そんなことがきっかけで会食恐怖症になったわたしは、

・こぼすことが怖い
・口の周りや食べ方が汚いと思われることが怖い
・食べきれずに残すことが怖い

という気持ちが常にある。
こぼさないように、と思えば思うほど手が震えるし、食べきれなかったらどうしよう、と思った瞬間に吐き気がして食べものが喉を通らなくなる。

その結果、スープ類やプリン、ゼリーなどのスプーンからこぼれやすいものやハンバーガーやサンドイッチなどの間に挟まっている食材が落ちやすいものは食べるのを躊躇するし、普通の1人前すら食べきれないことが怖くて頼めない。

特にスープ類が1番苦手で、外食ではもう何年も頼んでいない気がする。コーンスープ飲みたいなあ、と何度も思っては諦めている。


それに、友達がSNSで外食の写真を載せるたびに“幸せな気持ちだけでこれを食べられるの羨ましいな”とすら思ってしまう。
わたしはそもそも食べられそうなものしか頼めないし、料理がテーブルに届いてからもこぼさないかに恐怖し周りの目に恐怖し食べ切れるかに恐怖し、食を楽しむ余地なんて残っていないから。

そんなだから、人といるときにごはんに誘われるとどれだけおなかがすいていても「あんまりおなかすいてないや〜」と言って外食を避けたり、外食をするとしてもドリンクのみ、サイドメニューのみになってしまったり、事情を知っている人にはお店選びから気を遣わせてしまったり、どんどん外食が嫌になっていく。

もうこんな生活嫌だとわたしが1番思うのに、そう簡単には抜け出せず、ましになったり酷くなったりを繰り返しながら何年も付き合い続けている。

いつまでこれが続くのかもわからないし、一生付き合っていかなければならないのかもしれないけれど、そんな労力はもうわたしには残っていない気がするね。


「食べる」が怖い、そんなわたしのお話。

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