おわりはじまり。

サヨウナラ。

目の前で、カレーを頬張る君。
お別れすると、決めたのはわたし。
サヨウナラを伝えたのもわたし。

カレーライスの野菜。

わたしは、大きく切ったごろごろした感じが好き。
君は、それとは真逆で、小さく切った野菜が好きだったね。


「まだ大きい」
「もっと小さく」
付き合いたての頃は、君の言うとおりに、
カレーを作る度に、野菜のカタチは変わっていったよね。


「どこまで小さく切ればいいんだよ」
わたしの思考の声は、
反するものから、野菜の大きさに比例して溶けて消えていったのかもしれない。


君好みのカレーライスから、
いつしか、私たちのカレーライスになったよ。


まろやかに、
時を重ねて、
ひとつひとつが、
君とわたしからうまれたら愛の結晶。


私たちは、若かった。
愛のカタチが変わりゆくこの世界の仕組みに、
ついていけなくなった。


今、私たちの最後の晩餐が
目の前で繰り広げられている。


私たちのカレーライスを、
一口、口にする度に君は泣いていた。


理不尽なことは、
頭ではわかっている。
だけど、
なぜだか堪えきれない
わたしから溢れだす雫は、
瞳から幾度となく、零れ落ちていく。


おわりは、はじまり。


おわりと共に、
恋が愛に変わる。


ヒトは、愛に触れると
理由を超えて涙がでるのかもしれない。


みんな、本当は覚えている。
忘れちゃってるだけ。


自分のなかで眠る
愛の発動ボタンがあることを。

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