空の色、赭
ずっと、空を飛べないことがコンプレックスだった。
つい最近まで神様を信じていたし、それ以外の全てすら信じていた。
まぶたの裏にずっと秘密を持ち続けていたいから、世界から光を集めた。
光の繭の中で生活をした。長いこと外に出ていないから、図書室や本屋や、そんなところでさえ億劫に感じた。
きっと心が擦り減っているから、日記を書くのをまたやめたんだと思う。何に擦り減っているのかはわからないけれど、きっといま、過去に戻りたい。
大きな音はつらい。でももっとつらいことは、人の疲れた顔をみること。今からどんな思い出を残しても、飛ぶようにすぎていく時間だけは自分のものにできない。
どうやっても日記が書けない。そんなふうに、曲が作れない。
中学生の頃から、友情関係が上手くいかないことが時々ある。結局他人の希死念慮を聞いているだけの、殻みたいになっているような時期が来たら、離れなければいけない。とはわかっている。
真夏の蝉が懐かしい。それと同じように灰色のマフラーが、夏に懐かしくなる。