熱抵抗の重要性
熱設計は何より【熱抵抗】
熱設計の勉強を始めようとすると、最初に伝熱の三形態から始める教科書が多いように思います。
もちろん、熱伝導、対流、輻射は重要ですが、何より熱抵抗が重要と感じています。
熱抵抗のイメージ
電気担当の方から見れば、電気抵抗とまったく同じ考え方です。
中学で習ったオームの法則で出てくるあの抵抗(R)です。
熱の抵抗とは、そのまま「熱の移動しにくさ」を表しています。
例えば、ある適当な形状の棒をイメージしてください。その先端をお湯に入れ、その逆端を手で持つとします。
その棒の材質が「アルミニウム」と「樹脂(PPとか)」であった場合、どちらの棒のほうが熱く感じるでしょうか?
大半の方が、「熱伝導」というワードを理解していなくても、「金属のアルミニウムのほうじゃない?」と考えるかと思います。正解です。
専門的な知識を知らなくても、樹脂よりも金属のほうが熱を伝えやすい、というのはイメージできるかと思います。
すなわち、
樹脂のほうが熱が伝わりにくい
→
樹脂のほうが熱伝導の熱抵抗が大きい
と言えます。すべての金属/樹脂で成り立つわけではありませんが…。
対流もそうです。
ある熱いモノを扇風機で冷やすことを考えます。
このとき、扇風機の風量を「弱」にするよりも「強」にしたほうが早く冷却できるのはすぐにイメージできるかと思います。
すなわち、
風量が弱いほうが冷却しにくい
→
風量が弱いほうが対流の熱抵抗が大きい
となります。
輻射は少し難しいと思います。
太陽が一番身近でしょうか。
例えば、夏の暑い日、太陽がジリジリと照り付ける日を考えます。
このとき、日傘の下に入るのと、日差しを浴びるのではどちらが暑く感じるかと言うと、当然日差しを浴びる方です。
これは太陽からの輻射の影響を日傘で遮っているためです。
すなわち、
日傘をさして影を作ると太陽からの熱を受けにくい
→
日傘によって輻射の熱抵抗が大きくなった
と言えます。
伝熱の三形態を知る前に、熱抵抗のイメージを掴む
以上のように、伝熱の三形態である「熱伝導」「対流」「輻射」を知らずとも、「熱い」「冷たい」「暑い」「寒い」と感じたことのある身近な例で、概ね熱抵抗のイメージがつかめるかと思います。
伝熱の三形態はシンプルでイメージできればすぐに実用的な部分は理解できるかと思います。それよりも先に「熱が伝わりにくい構造とはなにか」をイメージしやすい熱抵抗を先に感覚として理解できたほうが、よりよい設計ができると思います。