熱設計について考える

なぜ熱設計について書くのか

私は、会社の業務として主に熱設計を担当しています。
正確には熱流体シミュレーションを利用して、熱や流体に関する設計の勘所や設計方針の検討を進めている立場です。
いわゆる”設計者”とは異なる立場であり、様々な業務に追われる設計者からすると、「熱について考えろ!」と外野からガミガミ言うような、余計な仕事を増やす人間です。厄介に思われているような気もします。
しかし、綺麗事でもあり、仕事柄でもありますが、熱流体シミュレーションが設計に役立つ部分は多いと考えています。
そこで、まずは私の業務内容について記すためにも、そのギャップについて書いていこうと思います。

熱設計とは?

熱設計という単語を普段から使用していますが、改めて定義を知るためネットで調べてみましたが、どうやら一義的でないようです。

熱シミュレーション等によって製品設計の段階で必要な熱対策を盛り込むことを言います。

パナソニックインダストリー社、熱対策の基礎知識(3) ~熱設計と熱対策~
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b9

端的には半導体部品のTJを最大定格内TJMAXに納めるように設計するのが熱設計。

ローム社、熱設計とは
https://techweb.rohm.co.jp/know-how/thermal-design/9170/

私の中では、熱設計は半導体部品に限定されておらず、パナソニックインダストリー社の資料のほうがニュアンスが近いので、このnoteにおける熱設計はパナソニックインダストリー社の定義とします。

要は、「熱流体シミュレーションや簡単な手計算により、熱対策の可否を検討すること。必要に応じて適切な熱対策を講じること。」という意味です。

設計者と解析専任者とのギャップ

この段落で記すことが、ある意味で私の業務の紹介にもなります。
また、この愚痴のようなものはあくまで私が属する会社に限った話であることを断っておきます。セミナーなどで聴講した他社事例はそうでないと思うので。

設計者が設計を進めていくのに必要なことはそれこそ無限にあります。大半は1つの製品に集中することさえもできず、複数のプロジェクトに専念度20%程度で関わっているといったケースもあると思います。

そんな中で、1つの製品の熱設計に十分検討せよ、というのも現実的に厳しいと思われます。
と言いますのも、製品の目玉となる仕様(ある部分が100℃以上であるのが売り、など)であれば熱について考えることは多いと思いますが、多くのところ「うまく排熱/断熱できてさえいればいい」という設計的には優先度が低く、なるべくなら考えたくない課題であるからだと思います。
そうなると、他の目玉となる仕様を満たした評価機を作り、「実験してみて、温度や発熱量が問題になれば対策しよう」と考えてしまうのは至極当然のことと思います。

しかし、熱流体シミュレーションの担当者としては、「もっと早い段階からリスクを検討して早いうちから熱対策案を考えましょう」という理想論をかざすことになります。

製品開発のスケジュールが決まっており、さらに様々な検討項目に対処する設計者と、ある意味で部外者で綺麗事を言い出す解析専任者の間にある溝を埋めるのは相当困難であると言わざるを得ないと考えています。

それなら設計者がシミュレーションをすればよいではないか」という意見は最もであり、現に設計者が使うCADツールに付属したシミュレーションツールも多々あります。設計者がシミュレーションツールを使うためのハードルを極力低くすることには一定の効果はあると思います。しかし、前述したとおり熱問題は優先度が低くなりがちなので、ツールの操作方法やツールを適切に扱うための周辺知識を学ぶのにも限界があります。

簡単にまとめると、以下のようなイメージです。繰り返しますが、あくまで私が属する会社に限った内容です。

  • 設計者は、熱設計は必要と考えている(いないかもしれない…)が、それらを検討するための時間がない。

  • 設計者は、熱問題は設計の副産物(しかもマイナス方向の)であり、製品仕様の目玉ではないので出来るなら検討したくない。

  • 解析専任者は、熱設計の必要性をより強く訴えたいが、現場の多忙さを体感していない(が多忙なのはわかる)ので大きな声を出しづらい。綺麗事を言っている自覚はある。

ギャップを埋めるには?

ここまでが背景で、この段落のタイトルが私のこれからの仕事です。

様々な活動をしているつもりですが、それが功を奏しているかはわかりません。
流石にその内容を詳細に書くことは企業情報でもあり難しいので、これら背景がある前提で、解析専任者として知っておいてほしい熱設計に関する知識を少しずつ書いていこうと考えています。一般論なので特に問題ないはずです。
これらがメカ設計者の一部に伝わるといいなと思いつつ…。

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