見出し画像

【9/12 それぞれの一歩#4】(株)Magic Shieldsの杉浦太紀さん、「転んだ時だけ柔らかい床“ころやわ”ができるまで」

皆さん、こんにちは。イノピー広報の岡川です。

台風が過ぎ、いきなり涼しくなりましたが、皆さん体調を崩されてはいませんか?

暦は9月となり、ついにイノピーも最終月を迎えました。しかし、台風の前の厳しい残暑と同様に、今月もアツい内容とディスカッションになっておりますので、どうぞ最後までお付き合いをよろしくお願いいたします!

さて、本投稿は9/12におこなわれた座談会「それぞれの一歩#4 ころやわ!転んでも立ち上がれる世界を本当に創っていくために」のイベントレポートになります。


*“ころやわ”に関する具体的な説明や商品案内は、(株)Magic Shields のHPをご覧ください。ここではイノピーらしく、「なぜ、その人がその行動をとったのか?」「どんなビジョンを描いているのか?」について書いています。


ゲスト紹介

今回のゲストは、(株)Magic Shields のユーザー体験責任者/理学療法士の杉浦太紀氏(以下、杉浦さん)です。

まずは、杉浦さんの理学療法士としての歩みについて簡単にご紹介します。

愛知県内の総合病院に10年間、理学療法士として勤務していた杉浦さん。

この病院では、ICUなどの急性期から療養病棟まで、様々な病期の患者さんのリハビリに従事していたようです。そんな杉浦さんでしたが、2017年からの3年間は、“ADL維持向上等体制加算”の中心的な役割となる“病棟専従”の理学療法士をしていました。

この“ADL維持向上等体制加算”では、病棟専従の理学療法士や作業療法士を設けて、急性期や一般病棟に入院中している全ての患者さんを対象に、その名の通りADLの維持・向上のための関わりをするのです。

病棟専従ということもあり、杉浦さんは病棟で起こる患者さんの転倒について考えることが多くなります。

運動療法で身体機能を上げる、ベッドサイドの環境を工夫する、センサーを設置する……それでも患者さんは転けてしまいます。

身体拘束は避けたい、そしてリハの効果を上げるためには病棟生活での自立度を上げたいが、看護師含め病棟のスタッフから反対される。

そんな“理学療法士あるある”のジレンマを持ちながら、杉浦さんはこう考えます。

「転んでも、骨折さえしなければいいじゃん」

この考えが、のちの“ころやわ(転んだ時だけ柔らかい床)”の最初の着想でした。

この時はまだ、夢物語のように漠然とした考えだったようですが、ここからの杉浦さんの行動でそれは現実になっていきます。

“ころやわ”誕生

その後、“ころやわ”開発とは別目的で、MBA(経営学修士)取得のために大学院へ進学した杉浦さん。そこではもちろん、医療関係者だけでなく様々なバックグラウンドを持った同級生と出会うことになります。

そのうちの1人である、バイクのエンジニアをしていた方(のちに(株)Magic Sheields の現社長・下村さん)に杉浦さんが、

「病院で転ぶ人が多くて、骨折もして大変なんです。だから転んでも骨折しない床を作りたいんです。」

と、伝えたところ、下村さんからバイクの衝突時のショック吸収のメカニズムを教えてもらうことになりました(潰れる構造体=「メカニカルメタマテリアル」だそうです)。

その技術の転用で「転んだ時に床が潰れて衝撃を吸収できれば」と考え、“ころやわ”の試作品の作成や、事業の設立準備を始めたそうです。


何気ない会話から、“ころやわ”誕生に向けて一気に話が進みます。

しかし、その源流にあるのは、杉浦さんの課題感の認識と行動力でしょう。もし杉浦さんが病棟で起こる転倒に課題を感じていなければ、または大学院に行かなければ、バイクエンジニアの同級生とも出会うことはないので、“ころやわ”はこの世に存在していません。

行動力、そして出会いというものは、人生や世の中を変えるものだということが、改めてわかるストーリーですね。

ころやわの実力

ここからは“ころやわ”の実力について少し触れていきます。

昨年、テレビやYou tubeで多く取り上げられたため、詳しくはそちらやHPを見て頂ければいいのですが、とにかくすごいです!

頭の上から“ころやわ”の上に植木鉢を落としても割れません!

なのに普段歩く程度の負荷では普通の床のようにしっかりしている(研究によりTUGや歩行評価でフローリングと成績に差は無いと実証済み)。


つまり転倒のように強い衝撃が加わった時だけ中の構造体が潰れて衝撃を吸収されるようです。

そして肝心の骨折するのか?しないのか?ですが、工学的にも証明されています。

大腿骨は221kgfの衝撃が加わると骨折するという過去の論文があるのですが、“ころやわ”に大腿骨のモデルを衝突させてみると、その基準値を下回ります。

また、臨床的な視点で見ても、複数の病院で実証実験をしたところ、約半年間で“ころやわ”上で起きた骨折は肋骨骨折1件であり、大腿骨の骨折はありませんでした。

個人的にですが、こういう数値で示してもらうと説得力がありますよね。さすが企業だなぁ、と感じました。

おわりに

“ころやわ”の有用性は、我々のように臨床で働く者ならすぐイメージできます。

しかし、そんな素敵な製品は、杉浦さん個人の力では開発は難しいものです。大学院での異業種の出会いから、技術を手に入れ、それからも現場の声を聞いて改良を重ねて転倒・骨折という課題解決に向けた取り組みを続けたこと。そして自分たちだけでなく、試作を受け入れてくれる病院や施設の挑戦する勇気があって“ころやわ”が生まれたと、杉浦さんは言っていました。

イノピーでは、何度も課題感というワードが出てきましたが、今回もやはり出ましたね。

さらに、課題を感じて1人で抱えている人にとって、今回の「異業種との出会い」というのは、一つ大きな参考になるのではないでしょうか?

何か課題がある時、同じ文化の中にいる人たちだけだと盲目的になります。異業種のように別の角度から物事を見てくれる存在というのは、非常にありがたい存在です。

そんな異業種とどう関わりを持つのか…については、今後皆さんでアイデアを持ち寄りながら考えていきたいと思います(笑)。

杉浦さん、貴重なお話をありがとうございました。“ころやわ”のこと、周囲にもオススメしておきます!

そして、次回は電マPTがイノピーを震えあがらせますので、皆さん乞うご期待です!

最後までお読みいただきありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?