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『プロフェッショナルマネージャー論』(7−3)PMとペアシステム

 (7−1)アドホック組織をプラスで絶妙なネーミングのアドホック組織もできた。(7−2)PMのジョブディスクリプションで優秀なPMも選任できたとする。

UchuBiz連載より

 これでプロジェクトは開始できるが、その前に創造性組織工学(Creative Organized Technology)が生まれたロケット研究での糸川さんの失敗を紹介しておく。それは『創造性組織工学講座』(プレジデント社)に詳しく紹介されている。

 東大生産技術研究所でロケット研究が開始したのは戦後10年しかたっていない1955年だ。当初ロケット研究には20数異名が集まった。日本は戦時中にロケット弾もどきを作った経験があるだけで、専門家がいない。

 宇宙観測用のロケットとか、人工衛星を上げ、地球の周りを周回する技術など、日本中の誰も知らない。とにかく種々の専門家が集まってAVSAプロジェクトははじまった。「糸川英夫は自分がリーダーになって、ロケット研究の組織を東京大学に作ろうとしている。これは独裁者の全体主義だ」と教授会で叩かれた。これが当時の社会的風潮だったのだろう。糸川さんは、プロジェクトには自発的に集まったのだからヒトラーの全体主義ではないと弁明したが、その直後にほとんどの人がこの研究プロジェクトから降りたという。

 残ったのは糸川さんを含め6人だけとなった。ロケット研究は失敗の連続だった。糸川さんはその原因を6人の共同作業から生じるものではないかと考えた。ムカデ競争のように6人の足並みが揃わないのだ。はじめのうちはうまくいくが、せっかちな人と少しテンポが遅い人がいて、足を出すタイミングが少しでもずれると、たちまち転んでしまう。

 ムカデ競争に勝つには、まずは二人三脚のトレーニングをやってからの方がいいのではないかとひらめいたのだ。さっそく6人を集めて、糸川さんの最初の二人三脚(ペアシステム)が組まれた。それがうまく行けば次に残りの4人にもペアになってもらということで、プロジェクトを閉店休業にした。これがうまく行ったので、半年後に残り4人がペアを組むことになった。

 このように糸川さんの創造性組織工学(Creative Organized Technology)は現場の実践(失敗)から生まれた再現可能な知恵で、頭で考えてできたものではない。宇宙開発は組織でないとできない領域だ。ペアシステムが宇宙研究から生まれたのは当然のことだろう。

 ペアシステムには次の4つのメリットがある。


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