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『アントレプレーナー富田洋氏と人道目的の地雷除去支援の会(JAHDS)』(多くの人のために立つことを第一に)

 先週、ある方の紹介でJAHDS(人道目的の地雷除去支援の会)というタイとカンボジア国境でのプロジェクトを推進していたソーシャル・アントレプレナー富田洋氏にお会いした。

 JAHDSプロジェクトは無事現地の組織に引継ぎ、すでに完了したプロジェクトだが、NHKの『プロジェクトX』でも取り上げられたプロジェクトだ。

 各分野で最先端の企業がそれぞれの本業の技術やノウハウを持ち寄って、地雷除去のための活動を展開しているJAHDSをご紹介しましょう。

 1992年に国連の初代DPKO地雷除去責任者パトリック・ブラグデン氏がジオ・サーチ(株)の冨田洋氏を訪問しました。路面下の空洞探査を本業とするジオ・サーチに、「その技術を地雷の探知に活かせないか?」と協力を求めたのです。

 冨田さんは、探知機の開発に協力してくれた企業と共に試作機をカンボジアに持ち込みましたが、実際の地雷原の惨状を目にして、地雷除去の問題が個人や一企業では解決できない問題であると気がつきました。帰国後、当時、(株)セコムの会長であった飯田亮氏をはじめ、多くの人々の協力を得て、1998年3月に設立されたのがJAHDSです。

 JAHDSが最初に取り組んだのは、ブラグデン氏の要請を受け開発に着手した、地中レーダー式地雷探知機の開発です。材質にとらわれず地中に埋設されたのものを可視化する探知機のことで、「マイン・アイ」と名づけられました。

 現在、世界の地雷被災地で広く地雷除去に使われているのは、金属探知機です。しかし、金属製の地雷ばかりではなく、磁性部分の非常に少ないプラスチック製の地雷が増えています。また、紛争のあった地域には、砲弾の破片や鉄屑も多く埋まっており、そのため全ての金属に反応してしまう金属探知機では地雷の発見に多くの時間と労力がかかります。こうした問題を解決するために、地中のものを目に見えるようにする「有効な目」としてマイン・アイの開発に取り組んだのです。

 マイン・アイは電波レーダーによって地中に埋められた地雷の形状や深さ情報を土表面に接触することなく、液晶画面に可視化することができる最新技術です。開発に当たっては、基本コンセプトをジオ・サーチ、センサー部分をオムロン、コンピュータ部分を日本IBM、液晶をシャープが担当しました。

 また、地雷除去に始まる復興計画を立案していくためには正確な地図が必要ですが、地図のない地雷原がたくさんあります。そのため、ヘリコプターやセスナで地雷被災地の空撮を行い、ソニーのデジタル映像技術を利用して、撮影画像をもとにデジタルマップを作成、パスコのGIS(Global Information System/地理情報システム)と連携させ、現地で収集する除去作業の進捗状況や住民情報などをインプットし、地雷除去プロジェクトの評価と復興計画に資するデータを提供するためのJAHDS visionの開発を進めています。

 このほか、トヨタが車輌の提供、ホンダがバイクや発電機・ポンプなどの提供、日本郵船が資機材の輸送やコンテナを寄贈し、協力しています。また、森ビルがオフィススペースを、日本サムソンがオフィス機器を、コクヨがオフィス什器を提供しているほか、多くの企業が広報その他で協力しています。

 国連、国際機関、NGOや被災地の人々と連携しながら地雷除去活動を支援しているJAHDSの活動には、このように多くの企業・団体・個人が参加しています。世界でも類をみない新しいNGO/NPOのかたちとして国連や国際機関からも注目されています。

 JAHDSには、各界から多彩な人々が理事および役員として参加しています。

 また、活動資金の寄付だけではなく、マイン・アイやJADHS vision の開発に見られるように、多くの企業が、技術・製品・サービス・ネットワークといった本業を活かした支援をしていることが大きな特徴です。

 また、JAHDSが持続性のある活動して行くためには、しっかりとした組織と体制を作らなくてはなりません。そのためには、実務経験に裏付けられたマネジメントスキルを有する人材が必要です。JAHDSには企業からの有限出向者も職員として勤務していますし、外務省からも研修員が参加しております。

 更に地雷除去という特殊な社会では、専門的な知識を有する人材が必要不可欠であり、現在、国際的な地雷除去のエキスパートである英国人と南アフリカ人も参画しています。JAHDSのポリシーはオープンドア。国籍や官・民を問わず、様々な人たちが被災国の復興を加速化するために参集(ALLIANCE)する----JAHDSのめざす新しい組織のかたちは、日本発の素晴らしいモデルです。

 最後に、対人地雷禁止条約と日本について、少し紹介しておきます。1996年10月5日、「対人地雷禁止条約」(「オタワ条約」)が成立しました。対人地雷の使用、貯蔵、生産と移譲の禁止、廃棄に関する条約です。

 2001年の調査によると、対人地雷を生産しているのは、エジプト、イラン、イラク、中国、北朝鮮、ビルマ、インド、韓国、パキスタン、シンガポール、ベトナム、キューバ、アメリカ、ロシアとのこと。

 日本は1997年12月3日に「対人地雷禁止条約」条約に署名し、1998年9月30日に批准しました。批准後は、対人地雷の製造を中止し、1999年3月31日までに製造施設を閉鎖しました。日本は1954年以降対人地雷の輸出と使用をしていません。

 国内では自衛隊が保有している地雷を破棄する作業を続けています。2003年2月8日に、日本で最後の対人地雷が爆破処理されます。

 被災国に対しても様々な援助を行っています。地雷除去に関する支援は、大きく3つの形態にわけられます。国連等の国際機関を通じた援助、二国間援助、政府系及び国際NGO等の地雷除去団体に対する草の根無償資金による援助です。2001年度に日本は、国際援助 341百万円、二国間援助 55百万円、草の根無償 441百万円、総計 837百万円の援助を行いました。(USドル@\120)

 何より、プロジェクトがきれいに完了し、現地に引き継がれたことがすばらしいことだ。

  JAHDSはNPOという組織形態のプロジェクトだが、インドネシアのアサハンプロジェクトはアルミ精錬が目的の合弁株式会社形態のものだったそうだ。
(アサハンプロジェクトはプロジェクトファイナンスとして成功した事業のひとつだ)

 その会話の中で海外でのプロジェクトにはいろいろなことがあるが、最近、いろいろなNPO/NGOの渡り鳥をする日本人の若者が増えているようだ。富田洋氏はこれを随分と問題視されていた。

 Volunteerにはいろいろな意味があるが、ある程度の自分の基盤があることが前提にないと本来のボランティアにはなれないのだろう。

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Creative Organized Technology 研究会(創造性組織工学研究会)
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。