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『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』作家と編集者(ペアシステム)

 アーネスト・ヘミングウェイら世界的な作家を見出した編集者マックスウェル・パーキンズの元に無名の作家トマス・ウルフの原稿が持ち込まれたことからこの映画ははじまる。

 どの出版社に行っても「一銭の価値もないと言われ続けた」トムの作品は、パーキンズという編集者に出会うことで、世の中にデビューすることができた。人生の扉の鍵をもつ人はたった一人だと言われているが、トムの場合はパーキンズだったのだろう。
 はじめて自分の作品を認めてくれた編集者から手渡された印税の前渡し金500$は、金額以上に価値を認められたという喜びに溢れていた。

 その後、原稿を世の中に売り出すものに仕立て上げるため、編集者とともに削除は続く。往々にして書き手は、伝えたいことがあるため本を書く。そのためどうしても多く書いてしまいがちだ。削除を嫌う作者と読者を考える編集者とのせめぎ合いからちょうどいい具合の作品ができあがり、世の読者はそれを受け入れればベストセラーになる。
 タイトルの議論も面白かった。本の売れ行きを決める要素の一つにタイトルがある。結果的に作者が最初に考えたものが採用されたようだが、タイトルの言葉には何かが宿るのものだ。

 1作めが月に1万5千冊売れているというが、時はアメリカの大恐慌の真っ最中だ。失業者の群れが配給を受け取る時代のベストセラーだが、失業者のことを書いたのに肝心の彼らは本を読まない、と作者が嘆くシーンは印象的だ。

 2作めに取りかかる二人は昼夜を問わず執筆に没頭することに。編集者は家庭を犠牲にし、作者の愛人アリーンは、二人の関係に嫉妬し胸を焦がす。二人のペアシステムは日に日に強固になり、周りが見えなくなってしまったのだ。

 私自身が出版のためいくつかの出版社を訪問し、多くの編集者に会ったきたこともあり、この映画のプロセスはよくわかる。この映画では描かれていないが、編集者と著者のペアシステムは作品の制作過程だけでなく、販売過程においても大きく影響をすることもあるように、B2Cビジネスの裏方には、この映画に描かれた編集者と著者のようなペアシステムが、大なり小なり存在しているだろう。




Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。