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『地域創生の失敗研究』(まとめ)地域創生のルーツ大山町

 地域創生は大分県大山町の一品一村運動がルーツだ。1961年に当時の農業協同組合長・矢幡治美氏が提唱した「梅栗植えてハワイに行こう」というスローガンのもと始まった取り組みNPC(New Plum and Chestnut)運動が、その後の大分県や日本全体を巻き込む「一村一品運動」のモデルとなった画期的な事例として知られている。


逆境は成長のルーツ

 当時、大山町は山間部で稲作に適さず、農業生産性の低迷と過疎化が深刻な課題だった。矢幡氏はこうした状況を打破するため、梅や栗などの山間部でも栽培しやすい作物に転換し、付加価値の高い加工品へと商品化することで、農業の活性化と農家の所得向上を目指した。

  • 梅と栗の栽培と加工品の開発: 梅干しや栗きんとん、栗おこわなど、高品質な加工品を次々と開発し、全国へ積極的に売り込んだ。

  • ブランド化と販路拡大::大分ブランドとして積極的にPRを行い、百貨店やイベントへの出展、海外への輸出など、販路を拡大した。

  • 農業協同組合の改革:農業協同組合を生産だけでなく、加工・販売まで一貫して担う体制へと改革し、効率化と高付加価値化を実現した。

一品一村運動の成果

 大山町の一村一品運動は、次のような成果を上げた。

  • 農業生産額の飛躍的な向上: 梅や栗の生産量と加工品の販売額が飛躍的に向上し、農家の所得も大幅に向上した。

  • 過疎化の歯止め::農業の活性化により、若い世代の流出を食い止め、人口減少に歯止めをかけた。

  • 大分県全体への波及: 大山町の成功事例は、大分県全体に波及し、一村一品運動の推進力となった。

 大山町の一村一品運動は、単に農業の活性化にとどまらず、地域経済の活性化、過疎化対策、地域ブランドの確立など、様々な面で大きな成果を上げた。その成功事例は、全国の多くの地域で参考にされており、地域活性化における一村一品運動の重要性を示している。

イスラエルとの関わり

 大分県大山町(現・日田市)とイスラエルのメギド町は、1970年に姉妹都市協定を締結し、長年にわたり深い関係を築いた。イスラエルのキブツ(集団農場)を視察し、その農村づくりの理念に感銘を受け、大山町との交流を通じて地域の発展に役立てたいと考えたのがはじまりだ。

 姉妹都市提携以降、両地域は様々な分野で交流を深めていった。特に活発なのが、農業分野での交流だ。大山町からは農業研修生がイスラエルへ派遣され、キブツでの農業技術や生活様式を学び、帰国後には大山町での農業の発展に活かされていった。また、イスラエルからは農業指導者が大山町を訪れ、現地での指導や講演会を開催している。
 農業分野以外にも、教育、文化、スポーツなど幅広い分野で交流が行われている。たとえば、学生や青年向けの交流事業や、伝統芸能の公演など、様々なイベントなどだ。

 このように、大分県大山町とイスラエルは、姉妹都市提携を機に築いた深い関係を、現在もなお発展させ続けている。この交流を通して、両地域住民の相互理解が深まり、友好関係が築かれている。

イスラエルとの交流

 大分県大山町とイスラエルの交流に関する具体的な例を次に示す。

  • 農業研修:大山町から毎年数名の農業研修生がイスラエルへ派遣され、キブツでの農業技術や生活様式を学んでいる。研修生たちは、帰国後、大山町での農業の発展に活かしている。

  • 農業指導:イスラエルから毎年数名の農業指導者が大山町を訪れ、現地での指導や講演会を開催している。指導者たちは、キブツでの農業技術や経験を共有し、大山町の農業の発展に貢献している。

  • 学生・青年交流:大山町とイスラエルの学生や青年を対象とした交流事業が毎年開催されている。参加者たちは、ホームステイや文化体験などを通して、相互理解を深めている。

  • 伝統芸能公演:大山町の伝統芸能である「大山祇神楽」がイスラエルで公演されたり、イスラエルの伝統芸能である「ダブカ」が大山町で公演されたりしている。公演を通して、両地域の文化が紹介されている。

 これらの交流事業を通して、大分県大山町とイスラエルの住民たちは、互いの文化や習慣を学び、理解を深めている。また、交流を通して築かれた友情は、両地域の関係をさらに深めていくものとなっている。

 2011年11月19日にはNPS運動50年の記念式典が開催されている。大山町は2005年には日田市に吸収合併され、人口もピークの1955年の6485人から2500人以上減っているが、運動の中核となっている大山農協は大分県農協に合併せず独自の道を歩んでいるいう。

 ここで重要なのは、大山町のようなNPS運動をしたとしても、人口が減少しているということだ。何もしなければどうなっていたのだろうか。地域創生とは絶え間ないイノベーションを必要とするという意味で、企業経営と同じだ。

 【シーズン9】
 (9−1)武者小路実篤の「新しき村」
 (9−2)小さなモデル「新しき村」の失敗研究
 (9−3)石徹白村の水力発電
 (9−4)久米島システム
 (9−5)イスラエルのキブツ

UchuBiz連載より

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