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『日本人海外赴任者制度の限界と対策』(6−5)投資家の視点からの対策例

 視点を投資家にデセンターし、問題の対策を考えてみる。グローバルビジネスの持続性や発展性だけでなく、株価にもプラスの影響を与える。

 このことを投資家の視点としてESGデータから読み解いておくことも企業経営としては重要なことだろう。グローバル企業において、ESG投資は経営的に極めて重要だが、COVID-19のパンデミック以前は、環境(E)やガバナンス(G)ばかりが注目を集めていた。しかし、COVID-19のパンデミック以降は社会(S)が注目度を集め、特に従業員の健康と安全の確保、雇用の維持等に対する企業としての対応が投資家の関心事項になった。 ESGの社会(S)の問題点は定量的に測りにくいことだ。

 ドイツのメルケル元首相による「測れないものは、守れない!」という2007年のドイツのポツダムでのG8における発言を踏襲すると、ESGの社会(S)を測れるようにしないとESGデータとして情報を開示することすらできないだけでなく、従業員の健康と安全の確保ができないということになる。

 ESGの情報開示において、第1段階の統合報告書(IIRC)への対応はほとんどの日本のグローバル企業は完了している。第2段階の情報開示フレームワークであるマティリアリティー(重要課題)が業界で固定されるSASBスタンダード、あるいはGRIスタンダード、ISO26000などをベースにWebサイトで情報開示する段階もほぼ完了した。現在は第3段階のESGをKPIとして数値化し、毎年を比較しながら開示するESGデータとしての開示が必須事項になっている。なぜなら、会社が発信する情報やプレスリリースなどをAI(人工知能)が自動的に収集し、「ESGスコア」が自動算出されるような時代に入ったからだ。つまり、財務情報の株価情報のように、非財務情報のESGスコアがリアルタイムに更新され時代になっていくのだろう。このような時代の変化に適応することは企業経営において重要なことだ。したがってここでは、外国人労働者をテーマにして、さらに具体的にESGの社会(S)におけるダイバーシティKPIを中心に考察をしてみよう。

 社会(S)として女性活躍推進が思い浮かぶ人も多いだろうが、ダイバーシティとは性別だけでなく、年齢、人種、性的指向など幅広い多様性を含めたものだ。女性活躍はダイバーシティの一つの構成要素でしかない。しかし、日本企業の女性活躍がグローバル水準と比較するとあまりにも少ないため、経済産業省と東京証券取引所が共同で2012年度よりなでしこ銘柄という政策を重点的に推進しているのが、現在の日本の状況だ。物事は比較すると分かりやすくなるので、同じなでしこ銘柄の2つのグローバル企業におけるESGの社会(S)のダイバーシティKPIについてのESGデータを比較してみよう。2社をすると違いがが明らかになってくる。


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