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『ヒットを生む技術 小規模出版社の編集者が"大当たり“を連発できる理由』世界大恐慌で生まれた現在の創作出版形式の編集者の役割(業界の歴史)

 小規模出版社の編集者の企画方法などをまとめた本で、ターゲットは出版に限らないコンテンツ業界のクリエイターとのこと。

 書籍に発行点数のピークは2013年の8万2589点から2022年の6万6885点にまで落ち込んでいる。紙や印刷代の高騰もあり、原価もアップ中だ。売れるか売れないか分からない企画は通りづらい。しかし、出版社は資金繰りのため本を出し続けないといけないという宿命がある。そうなると二番煎じの無難な企画が増え、結果、つまらない本ばかりが巷に並ぶ。当然、つまらない本を買う人は減り、読書人口も減り、さらに人口も減少している。

 そんな中、売れる可能性のある本は次の3つだという。

1)筆者やキャラクターにファンがついていてるグッズとしての本。
2)実用的であることにひたすら特化した本。
3)読んで「めちゃめちゃ面白い!」と思える本。

 また、ヒットする本の企画は次の2つの組み合わせだという。

1)<距離>が読者にとり身近だということ。
2)<強弱>中身が弱くではだめ、今まで聞いたことがない強い内容が必要。

 本書にはないが、現在の編集者の役割は世界大恐慌という経済環境から生まれたものだ。

 当時、著者が自分の書きたいことを書き、それを一字一句変えずに出版することが当たり前だった時代に、「創作出版」の名のもと、著者との共同作業による本作りを行い、ミリオンセラーを連発したのが、神吉氏だ。
 編集者の仕事は、読者の代表として著者の一番近くにいる素人に過ぎない。著者側でなく、読者側に立ち、自分の大衆としての感覚、感情、欲望を起点に、著者と一緒に共感共鳴のバイブレーションを起こしていくことだとしている。
 当時は世界大恐慌で本がまったく売れない時代。すぐれた企画だけが生き残る競争時代に入っていた。光文社は苦境のドン底だった。その環境で神吉氏が手掛けた『少年期』は売り出された。

『編集者、それはペンを持たない作家である』(実業之日本社) 

 現在の出版不況は、世界大恐慌時と同じだと考えれば、今までの創作出版における編集者の役割にはイノベーションが必要なのではないだろうか。例えば、日本は人口が減少するため、市場はシュリンクするのだから他国へ販路を広げる必要性は高くなる。そうなると、アメリカ人のニード、台湾人のニード、韓国人のニード、イギリス人のニード、フランス人のニード、メキシコ人のニードに対し、編集者が読者の代表になるのには無理がある。日本で売れたものが他国でも売れるという方程式が必ず成立するならばいいが、日本の武士コンテンツやドメスティックなものが他国で受け入れられる現実をみると、それ以外の大きなニードがグローバルコンテンツビジネスにはあると考えられる。

 本書はあくまで、日本市場という小さなパイの中での創作出版という世界大恐慌のときに生まれた編集者の役割から成功方程式を明らかにしたものだ。したがって、グローバルコンテンツビジネスに適応できるとは限らない。

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Creative Organized Technology 研究会(創造性組織工学研究会)
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。