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『地域創生の失敗研究』(9−3)石徹白村の水力発電

 (9−2)小さなモデル「新しき村」の失敗研究で20個の失敗研究を列挙した。これをベースに地域創生として成功していると言われている日本の事例を考察する。まずは、山間部から。


岐阜県郡上市白鳥町石徹白の地域創生

 日本100名山のひとつに白山という山がある。他の山々と山脈を形成しない独立峰だが、この白山の太平洋側からの登山口として、住民250名の石徹白村がある。もともとは福井県大野郡に属していたが、地理的な利便性から岐阜県郡上市白鳥町に編入された。冬には2メートル近くの雪が降る豪雪地帯で、1981年(昭和56年)の豪雪時には、積雪が515cmを記録した。

 この石徹白村で、水力発電が4機稼働しており、電力会社から電力を買うどころか電力の売電収入(年間2400万円の売電益)が入る仕組みになっているという。これを実現するための推進役でヤキトリの串になったのは岐阜市出身の平野彰秀氏だ。彼は14年間東京で働いた後、2008年に岐阜にUターンし、2011年に石徹白村に移住した。

 売電収入で得られたお金は、維持管理費や減価償却費などを差し引いた数百万円が石徹白の地域おこしの費用になっている。現在は公共施設や街灯の電気代、用水の維持管理費に用いており、さらに今後は耕作放棄地を復活させて新たな就農を促すなどへの利用も予定しているという。平野氏が優秀なのは、まずは小さなものをきちんと作ろうと大学との共同研究で2009年にらせん水車を、2011年に上掛け水車を作ったことにある。アプローチの方法は、ペンシルロケットと同じリーンスタートアップ方式だ。発電電力量はそれぞれ家1軒と4軒分だが、これにより石徹白の人たちが、水力発電の可能性に気がついたのだ。

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