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映画「狂猿」


映画「狂猿」見に行った。@アップリンク吉祥寺

https://kyoen-movie.com/
デスマッチファイター葛西純のドキュメンタリー映画。

ある人が「『ザ・ノンフィクション』(日曜午後に放送されてるドキュメンタリー番組)みたい」と評してたが確かにそういう感じはあった。
リングでおびただしい血を流しながら戦う試合映像と、長津田の自宅付近で家族と過ごす場面だったり、若いころに住んでた場所を巡る穏やかな映像が対比で流れる。

葛西についていろんな関係者がインタビューに答える。
佐々木貴、松永光弘、本間朋晃、藤田ミノル、伊東竜二、奥さん、それにお母さん。

大日本プロレス登坂社長が
「(葛西が退団したのは)お金も出せてなかったし、やりがいを持てるポジションも与えていなかった。無理もなかったと思う」
と言っていたのが胸に残った。

葛西がいた当時、登坂さんは「統括部長」という運営側の現場トップみたいなポジションだった。

あのときの大日本は苦しかった。
インディー団体の夢を追って横浜アリーナでの大会を発表したものの、エースの本間が突然退団、もう一人のエース山川竜司が頭蓋骨骨折で長期欠場、残った主力のシャドウWXは火を使った攻撃を失敗して後楽園ホールをあやうく火事にしかける大失態を犯し、内情はボロボロだった。
それこそ葛西をはじめ残った選手とCZWの外国人選手が盛り上げて何とか横浜アリーナまでつないだけどCZWの待遇改善に団体は答えられず彼らに去られ、横浜アリーナ大会は夢の引き換えに大きな赤字になり、その後遺症で選手が何人も辞めていった。
そんな矢先に葛西がケガして、その治療費と生活費に充てるべきギャラが団体は払えず、葛西は生活のために別の団体に移った。

登坂さんはそんな当時の事情を胸の奥にしまいこんで、現在の団体代表としてかつての所属選手に詫びた。
大日本がその後持ち直したから言えるのだろうし、葛西があれから飛躍したから言えるんだろうけど、時間が経ったんだな…と思わずにいられなかった。


証言に出てくる一人一人にいろんな思いがよぎる。

本間朋晃が公の場で大日本時代のことを語ったのもほとんど初めてじゃないかと思う。

「葛西はすごい、あんなデスマッチ俺にはできない」って言ってたけど、違うよ。
あなたもすごかったよ、本間。
ずっと続けてる葛西は確かにすごいけど、本間、山川竜司、シャドウWX。あなたたちだってすごい試合をやっていた。体育館の二階から一階に向けてパワーボムとか、葛西とは違うベクトルであなたたちは狂ってたし、それを見てた俺たちも狂っていた。でも、本当にあれは最高だった。


葛西の出世試合として2001年1月の金村キンタロー戦の映像が使われた。
試合前に金村が「この試合終わったら200円渡すから、売店行ってチョココロネ買ってこい!この野郎!」と言って試合が始まるやつだ。

あの試合直前、登坂さんが当時エースだった本間朋晃が欠場していることをファンに報告してると葛西がやってきて「もういいじゃねえか言っちまえよ、マホン(=本間)は市来(同じ団体にいた女子レスラー)とランナウェイしちまったんだよ!」と暴露してしまって、観客が「ええー!?」みたいにどよめいたところで金村がやってきて「本間のことはええやろ!それよりお前、この試合終わったら~」というマイクにつながっていく。

本間は試写を見ただろうか。この場面をどういう思いで見たんだろう。


藤田ミノルはこの葛西と金村の試合を「会場で見てましたけど、葛西が1から10まで完璧だった」と語った。

この頃の藤田はデビューした大日本からみちのくプロレスに移って、そのみちのくを「雑用が嫌だ」と退団して、海外に行ってみたけどあまり試合が組まれなかったりして国内では試合してなかった時期だ。
そんな時期に後輩が躍進してるのをどういう思いで見ていたんだろう。
その藤田も巡りめぐって数年前から大日本に戻ってきて、昨年はデスマッチチャンピオンになった。


「葛西の試合を見たとき、『これだ!俺がなりたいのはこれだ!』と思ったよ」と後楽園ホールの階段で語っていたダニー・ハボックは昨年亡くなった。
こんな形で彼の最後の映像を見るとは思わなかった。

葛西の盟友になった佐々木貴にも、デスマッチの過酷さを表現する竹田誠志にも、現在のデスマッチを支える杉浦透や佐久田俊行にもいろんな思いが出てくる。

でもそれはすべて「葛西純」というフィルターがあってのものだ。

本編でも触れられてるけど、葛西ほど長い間にわたってデスマッチをやってきている選手は他にいない。偉大な選手になったんだと思う。
葛西がデビューしてからの24年は、自分が社会人になってからの24年とリンクしている。
葛西純と同じ時代を歩めたことは、大きな幸せだったと思う。これからもずっとがんばってほしい。シェー!!


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