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映画「若き見知らぬ者たち」

映画「若き見知らぬ者たち」見る。

これの監督の前作「佐々木インマイマイン」を見たかったがついにタイミング合わなかったのと(今年一週間だけリバイバル上映やってたがそれも合わなかった)、LiLiCoさんがラジオ番組で磯村勇斗をゲストに迎えたのをたまたま聴いてて、面白そうだなと。

私の映画レビューは毎度ネタバレ全開なので、これから見る人はここで閉じて映画館いってください。

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まだ50代、下手すると40代後半くらいなのに精神疾患を抱えて日常生活に介護が必要な母親と同居する兄弟の話。

兄の彩人(磯村勇斗)は親が残した借金と店(場末のスナック)を引き継ぎ、母親を介護しながら生活している。
日向(岸井ゆきの)という恋人がいる。
弟の壮平(福山翔大)はアルバイトしながら総合格闘技(プロ修斗!)をしている。格闘技は亡くなった父親の影響で始めた。

苦しいながらどうにか生活を続けている兄弟に、壮平の世界王座挑戦と、彩人の親友・大和(染谷将太)の結婚というトピックが同じタイミングで起こる。
だが悪化していく母親の症状、不幸の連鎖が
彩人に降りかかっていく…。

ヤングケアラーにならざるをえなかった若者の閉塞感がよく描かれている。
逆にいうと、それしか描かれていない。
80年代地獄漫画『四丁目の夕日』のごとく、不幸が過剰に山盛りになりながら斜面を転がるようなエピソードが続き、なるほどこれが「PG12」になった所以か、と納得した。
まあ俺が子供の頃にはこれぐらいの映画が普通に茶の間に流れてましたけどね。松本清張とか。
1970年代から80年代ごろの日本は小説も映画も「不幸」を娯楽にしていた気がします。

で、ひるがえって2020年代の不幸とは何かを考えたとき「親ガチャ」はわりと深刻なテーマであるんだろうな、と思った。
身に迫る戦争はない。
貧困はなくはないけど、飢えのため他人を襲うまではない。
ただ親の「生活基盤構築の失敗」を子供が引き受けざるをえなくなる、はリアルにある不幸だ。
全部でないにせよ、今世の中を席巻してる「闇バイト」だって貧困が大きく影響してるはずだ。
そこにヤングケアラーが乗っかる。
もっともわかりやすい、「現代の不幸」が描かれている気がした。
「不幸」色にしたいがゆえにちょっと現実性の薄いエピソードもあるけど、全体としては「現代に起こり得る重めの話」だ。
「幸福な家庭が少しずつ壊れていき、狂っていく母親」役の霧島れいかが怖かった。
彩人の親友・大和役の染谷将太と、捜査ミスを知りながら大和に応対する警察官・瀬戸(東龍之介)が面会する場面が、何か「芝居だけど芝居じゃない」迫力があった。

なんか純文学的な話だな、と思ったら原作は
島口大樹の小説なのね。
彩人の恋人の日向(岸井ゆきの)の書き方が適当で、そこが男性作家ぽかった。

たぶん、話としてはクライマックスの世界タイトル戦で入場する壮平のモノローグが一番この映画で言いたいことなんだろうけど、そこはプロレスとか格闘技見てるとまあまあ聞いたことある「語り」なので、初めて見たのに既視感ある主張だった。
福山翔大さんは俳優さんだと思うけど、本当の修斗選手みたいだった。
格闘技指導は佐藤ルミナさんなのね。

まあ好き嫌いはあるだろうけど、印象に残る映画だった。


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