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サイバーファイトフェスティバル雑感

【6.6サイバーファイトフェスティバル雑感】

さいたまスーパーアリーナで開催されたDDT、NOAH、東京女子、ガンバレプロレス4団体合同興行「サイバーファイトフェスティバル」に行ってきました。

観客は上限5000人という話だったけど、見た限り設定した座席はほぼ埋まってるように見えた。

感染症対策は仕方ないのだけど、場内で飲食禁止がちょっとね。

今日は5時間越えかなと思ったら4時間半でした。

雑感を箇条書きで。

・今日はDDTの大会でなく4団体合同興行なので、そこかしこにDDT一辺倒にならないような配慮が感じられた。 
 エンディングはMISIAの「Into the Light」ではないし、最後も3団体のチャンピオンが並列に並ぶような配慮だった。

○第三試合 DDTvsNOAH対抗戦 20分一本勝負
 男色ディーノ&スーパー・ササダンゴ・マシン vs 杉浦貴&桜庭和志

・ダンゴさんのパワーポイントは「杉浦&桜庭に勝つ方法」。
「杉浦組がふざけたプロレスに付き合ったら自軍の勝ち」「杉浦組がうっかり笑ったら自軍の勝ち」。
「DDTとNOAHでは価値観が違う=価値観の多様性=SDGs(ササダンゴs)」だそうです。

組み合わせは面白いけど、やっぱり難しいなと思った。
結局、ここに杉浦軍を入れるんだったら試合の佳境で葉加瀬太郎の「エトピリカ」が流れてスローモーションになって「俺の名前は杉浦貴。プロレスリングノア所属の50歳のレスラーだ」から始まるVTRが始まらないといけないと思うんだけど、そこまではやれなかったんだろう。
なんでパンストをかぶるところで終了になる。
で、これDDT見慣れてると「こんなもんかよ杉浦」になってしまうけど、ノアしか見ないファンだと「杉浦こんなことやってるのかよ」になると思う。それも好意的より、反発の方が多いのでは。
そのあたりを杉浦自身もきっとわかってて、だから試合後に「ノアファンのみなさん、しょっぱい試合してすみません」とか先回りして謝ってしまう。

けどファンは選手に謝ってほしくはないんだよね。楽しくやってほしい。
だからどっちかしかなくて、「やるんだったら楽しくやる」「やらないんだったら3分くらいでオリンピック予選スラムでKO」だったと思う。
DDTとノアの中間点を探ってしまった結果、「どっちも面白くない」みたいな中途半端な着地点になってしまった。

それを引き続き感じたのが

○第八試合 DDTvs金剛全面対抗12人タッグマッチ 30分一本勝負

高木三四郎&彰人&樋口和貞&坂口征夫&吉村直巳&納谷幸男 vs 拳王&中嶋勝彦&征矢学&覇王&仁王&タダスケ

この試合で。

結局、金剛がシリアスに出てきてもその後DDT軍がドラマチックドリーム号(自転車)だったりメカマミーのロケットパンチだったりヨシヒコを連れてきてしまえば、あきらかに持ってってしまう。
拳王はそこで「真面目にやれ!」みたいに怒ってしまう。
違うんだよ。
DDTの文脈で「真面目にやる」というのはこういうことなんだ。だから噛み合わない。

試合は拳王が高木さんをボコボコにして(よくあれだけ打撃受けた。身体張りすぎ!)、そこに吉村とか坂口とかDDT軍が反抗して、そのあたりは上手く回っていた。
が、終盤に高木さんがドラマチックドリーム号を使おうとすると拳王は付き合わずあっさり交わす。
問題はその後の場面だ。

拳王は自分でドラマチックドリーム号に乗ってしまった。
いやわかる。乗ったらおいしい。
でも、そしたらさんざんこれまで自身が言ってきた「ふざけたプロレス」との整合性がとれなくなってしまう。
コロナで大声で叫ぶのは禁止されてるのだが、あそこは「おまえは乗っちゃダメ!!」ってよっぽど叫びたかった。
ノア、というか金剛の文脈が崩れてしまう。あれを見て征矢とか覇王とか配下のレスラーは「結局目立ちたいのかよ…」と思ったんではなかろうか。

DDTとNOAHは対立軸が一緒ではない。
90年代に新日本とUインター、新日本とWARの団体対抗戦が盛り上がったのは「どちらの団体が強いか」という対立軸が真ん中にあったからだ。
けれどDDTとNOAHは同一の対立軸がない。
DDTは「エンターテイメントを全方位に取り入れた面白いプロレス」であって、NOAHは「極限まで身体を張るプロレス」だ。
お互い、相手のフィールドに足を踏み入れることはできるけれど、「どっちがすごい」には適していない。

言うなれば「酒を飲むグループ」と「パフェを食べるグループ」みたいなもので、両方に所属している人がいたとして「こっちでは酒を飲む」「こっちではパフェを食べる」にはなるけど、「酒とパフェ、どっちがすごいんだ」みたいな論争はナンセンスになってしまう。
「どっちもそれぞれでいい」になる。

だからササダンゴが「DDTとNOAHでは価値観が違う=価値観の多様性を認めよう」とプレゼンしたのは今回のフェスの肝要をついていた。
「団体対抗戦」と中立的な場を用意して混ぜるのではなく、たとえば興行を「前半はDDTパート」「後半はNOAHパート」みたいにして、前半に出るのであればNOAHの選手であってもヨシヒコのカナディアンデストロイを受けないといけないし、後半に出るのであればDDTの選手でも純粋に試合内容だけでの評価にしないといけない。

だから

○第九試合 DDTvsNOAH対抗戦 30分一本勝負

竹下幸之介&上野勇希 vs 清宮海斗&稲村愛輝

この試合が一番スウィングしたのも「竹下と上野はいわゆるエンタメ試合を普段はせず、試合内容だけで勝負するNOAHの価値観に近い」ということだったからではないかと。
清宮の元気のなさは気になったが、この試合は「どちらが強いか」の座標軸が同一だったように思う。

DDTとNOAHは歴史も価値観も違いすぎる。
同じグループでもNOAH/DDTと東京女子の対抗戦は組まれないように、この2団体も混ぜない方がいいように思える。
ただ「特別試合」みたいな形で、それぞれの枠の中に出張みたいな形で別団体の選手を入れるのはいいと思う。
GHCに竹下が挑戦してもいいし、KO-Dに清宮が挑戦してもいい。それでタイトルとったら一年くらい出続ける。
その「特別試合」をサイバーファイトフェスティバルでやればいいんじゃないか、と思った。

それ以外の3大タイトル戦について。

○トリプルメインイベントⅠ プリンセス・オブ・プリンセス選手権試合 30分一本勝負

<王者>山下実優 vs 坂崎ユカ<挑戦者>

自分が知ってる坂崎ユカという選手は「すごく楽しそうにプロレスをする人」だったのだが、今日は終始不機嫌というか、冷めた表情をしていた。
何があったのだろう。
試合後、二人で長く話した末に坂崎がパーンと山下の頬を張ってリングを去っていったのが気になった。

○トリプルメインイベントⅡ KO-D無差別級選手権試合 60分一本勝負

<王者>秋山準 vs HARASHIMA<挑戦者>

HARASHIMAもよく動いていたと思うが思った以上に秋山準の試合だった。

しかしHARASHIMAは売りがすべて「過去」になってきていて、「現在」が何もない。
もちろん秋山も「過去」を持ち出されるが、昨年秋以降は「こんな動きができるんだ…!」という「今」を我々に見せつけている。
これから「新しいもの」を身につけることをHARASHIMAに望むのは難しいのだろうか。

○トリプルメインイベントⅢ GHCヘビー級選手権試合 60分一本勝負

<王者>武藤敬司 vs 丸藤正道<挑戦者>

※第34代王者3度目の防衛戦。

まさか2021年にもなってさいたまスーパーアリーナの興行メインイベントで58歳の武藤敬司がタイトルマッチをやってるとは思わなかった

まさか2021年にもなって「HOLD OUT」で入場してくるとは思わなかった。

まさか、まさか「もう人工関節になってしまったから無理」と言ってたムーンサルトを再びこの目で見られるとは、ゆめゆめ思っていなかった。

そして「ムーンサルトを出したがゆえに、ヒザに大ダメージを負って敗れる」というのはよくできた物語だった。
武藤はこうしてまた伝説になった。
その場に立ち会えたことを光栄に思う。

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