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緑溢れ過ぎる星

今から百年ほど前「地球再緑化条約」が国連にて締結。
荒れ果て、瀕死となった地球を再生するべく、全人類が「宇宙船地球号を取り戻せ」というスローガンのもと立ち上がる事となる。有史史上初めて世界が一つになった瞬間だった。とはいえ、二百億人いた地球人はその数を二億人にまで減らしていた事を考えると、至極当然の流れとも言えたが。

人類にとって急務だったのは「酸素の確保」だった。
百九十八億人と、数え切れないほどの地球生命が死んだ事によって、大幅に酸素への需要は削減されたものの、酸素供給量は微々たるもので、わずかな要求にも答えられる状態ではなかった。心肺停止状態の地球に残された酸素は残り少なく、いつ終わりが来るのか、少なくとも近いうちである事は誰の目にも明白であった。
危機の最中『半年以内に二千万人の人間が死ななければ、酸素供給のバランスは不可逆な段階にまで破壊される。』というデマが世界中で横行、パニックによる暴動が発生。あっという間に十万人が死んだ。人類の結束なんてこんなものである。

残された人類は、数世紀前に建造され、大災厄の中で放置されていた「ノアの方舟」に一縷の望みを託す事にした。
その名も『スヴァールバル世界種子貯蔵庫』
世界中の種子という種子が集められ「来たるべき時」に備えて保存する為の人類のフェイルセーフ施設である。
放射線で汚染された北極圏の中、辿り着いた調査隊が見たものについて、彼らはあまり多くを語らなかったが、美しくもおぞましい何かがそこにあったとだけ言い伝えられている。

そして現在。
地球は命のゆりかごとしての役割を完全に取り戻した。
少なくとも「方舟」はその役割を十分過ぎるほど果たしたようだ。
「方舟の住人」は、人類から地球の支配権を取り上げて、緑で塗りつぶそうとする。「放火士」になった俺は、肉食性の危険な「過肉植物」を焼き払い、緑が溢れ過ぎているこの星でどうにか生きながらえている。

【続く】

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