冤罪加害という異常性癖
寒中見舞い申し上げます。
おかげさまで、穏やかな新年を迎えております。
ところで新年早々、Xでは盛大に冤罪でっち上げ祭りが開催されていた。標的はこちら。
ざっくり説明すると、オフパ婚した夫婦が気兼ねなくセックスするためにパイプカットを選択した話。これがなぜか、『妻による夫への性加害』だと歪曲され、一部で噴き上がっていた。
一から十まで特殊な世界観ではあるため、共感はできないまでも、犯罪扱いは穏やかでない。
少なくとも夫婦間で同意があり、手術後の関係性も変わりないようだ。"性加害"の必要条件である被害者なんて、どこにもいないのだ。ではなぜ?
ヒガイシャはつくれる
身も蓋もない言い方をすると、二次創作だ。
実在する人物を題材にしており、nmmnといえる。
"原作では明記されていない部分を独自に補完"して、登場人物である夫への被害者設定を"あえて混入"させることで、胸糞パロを成立させたのだ。
そんな彼らが注目したのは、以下の要素。
・話を持ちかけたのは妻
・夫は"本当は子供が欲しかった男"
・協力者は妻が呼んだパイプカット推進派?の知人
・不妊手術のメリットしか語らない説得シーン
・母体保護法の要件についての説明不足
・年の差夫婦(妻が12歳上)
これらをまとめて捏ねて揉んで膨らませた結果、
妻は夫に不妊手術を強制した。夫は性被害者だ!
というストーリーを仕立て上げ、大拡散した。
ちなみに、
・手術を決めたのは夫の意思
この要素は無視、あるいは同調圧力に抗えなかっただけだと却下されてしまった。
かくしてnmmnは、全世界に晒された。
このホラー感、わかる人にはわかるのではないか。
ここ最近盛り上がってきた中居正広氏の件についても、(事実関係が不明な部分を独自に補完して拡散するという意味で)同じことだ。
週刊誌の報道そのものが二次創作とも言えるが、関係各位は最低限、己の加害性に自覚を持つべきだ。
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件の漫画が反感を買うことについては、異論ない。
先述の"特殊な世界観"を許容できる人は多くないだろうし、何より状況説明(≒読者への配慮)が圧倒的に足りない。別にそれ自体に問題があるとは思わないが、可燃性を帯びるのは確かだ。
当の夫や、周囲の(彼女のパーソナリティを理解している)人たちにとっては面白いんだろう。
要は、内輪ネタにあたる作品なのだと思う。
当然、外部の人間には伝わらない。さらに、昨今増加している自分の理解が及ばないことにアレルギーを持つ人々にとっては、それだけで耐えがたいアレルゲンになり得る。
この場合、対策は2つ。
対症療法としての『触れないこと』。
原因療法としての『除去すること』。
後者の結果として、今回の炎上は起きた。
二次創作によって、個人のアレルゲンを社会のアレルゲン(性犯罪)に結びつけたのだ。
これが、世に言うキャンセル・カルチャーです。
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それはそれとして、作者側も炎上自体は想定していたようだ。後日、補足説明も兼ねて出された夫のnoteに、匂わせる記述がある。
なお個人的に、(パイプカット云々より)作者の朝比奈氏自身が全世界に発信したかったのは夫へのクソデカ感情なのではないかと思っている。
別の作品で描写されているモノローグが、彼女の本質をあらわしているような気がして。
私の予測が当たっていれば、(その点に関しては)結果的に大成功だったといえるだろう。
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さて、2025年新春あけまして司法を介さず人を裁くお正義文化が極まったな、と感じている。
みんなのお気持ちは、法律より重い。
『正義』と『justice』は違う意味なのだそうだ。
Xで声高に主張されるのは『正義』だ。
いいねの多さが"腕力"。自分の正しさを、不特定多数の他人にどう共感させられるかが勝負。
裁判官だってキャンセルできちゃうかもしれない。
『正義』を掲げることがおかしいわけじゃない。
それで善悪が決まるわけじゃないし、私にだって私の中の正義がある。
でも、いくらなんでも当事者に"勝手に被害者にしないでください"とまで言わせるのは違うでしょう。
nmmn拡散してまで貫きたい正しさって何ですか。
誰かに求められ説得されたとしても、たとえそれが同調圧力だとしても、自分が決めたのならそれは畢竟、自分の意思だ。
大概、意思なんて周囲の人や環境に左右されながら決定するものだ。まったくブレないのは余程の傑物かサイコパスじゃない?
「実はそれ、あなたの意思じゃないんですよ」
なんて横から囁く人がいたら、狂ってるでしょ。