孤独を願った少女の物語

その少女には幼少期のころの記憶がない
思い出せるのは下層を独りふらふらとさまよっていたところまでだ
親の顔も思い出も何一つ思い出せない
そんな少女の"少し昔"のお話し




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ここはヴィルーパ下層。
治安が悪く、中層から落ちてくる廃液が酸性雨となり降る環境。
ここでは強盗や殺人なども多く、生きるのも大変な世界。

そんななか一人の少女が働いていた。いや、働かされていた。
年齢はまだ10歳にも満たないほどの幼さで。

子供には重い荷物を運ぶ。
休むことは許されない。少しでも手を休めれば、怒鳴られ鞭でたたかれる。
まるで奴隷のように働かされていた。

少女に親はいない。
親に奴隷として売られたのだ。
人間と人間の親の間に生まれた子供は獣人だった。
そんなことはあり得ない。しかし、祖先に獣人がいたのか、
獣人として生まれた。

気味悪がられ、親からは奴隷として売られた。
獣人は人間より身体能力が高いため、奴隷としては高値で売られた。
それから、この生活になり2年が経っていた。

自由を奪われ、蔑まれて、少女は心を閉ざしていった。

とある日、隣のセクターで謎の光を目撃したという情報があった。
それがオーパーツかもしれないと大人たちの間で囁かれた。
オーパーツは欲しいがそのセクターは危険な生物がいるという場所だった。
そこで大人たちは、少女に取りに行くよう命じた。
少女に拒む権利はなかった。

少女はその目撃の場所に向かった。
目的の場所付近で小さなクレーターのような爆発跡が見つかった。
そこには星型の石が落ちていた。
少女はそれがオーパーツだと気づき、持ち帰ろうとする。
するとどこからともなく、いや、直接語り掛けるような声が聞こえた。

<願い事を叶えましょう>

少女はびっくりしたが、再び声が語り掛けてきた。

<私は願いを叶える者。なんでも一つ叶えてあげましょう>

「なんでも・・・叶えてくれる・・・?」

<そうです。さぁ、その心の奥底にある願いを解き放つのです>

少女は少し躊躇ったが、とっさに声に出していた。
「奴隷なんかいやだ・・・もっと自由に生きたい・・・」
「・・・あんな大人たちなんて消えちゃえ・・・!」

<貴方のその願い叶えましょう>

少女が気が付くと、さっきの星形のオーパーツは消えていた。
「あ・・・なくしちゃった・・・帰ったら怒られるのかな・・・」

「・・・怒られる?・・・誰に?」

少女はわけがわからないまま自身の本能を頼りに家に帰りついた。
「ただいま・・・」
少女は家に入り、主人に声をかけた・・・が
主人は気づいていないらしく、お客さんと話をしていた。

「隣のセクターにオーパーツらしきものがあったらしい。」
「でも、そこは危険な生物がうじゃうじゃいるらしいじゃないか。」
「うちにも奴隷の一人や二人いたら取りに行かせてるんだがなぁ。ッチ」

そういうと家の主人は少女が見えていないようなそぶりで隣をすれ違った。
いや、少女を知っていた者、全てから少女の存在が消えていた。
そして、少女からも今までの記憶が徐々に消えていた。

「ここは・・・?この人たちは誰・・・?」
「おなかすいたなぁ・・・すみません何か食べ物をください・・・」

少女の声は届かない。まるで少女が存在していないかのように。

「どうして、誰も気づいてくれないの・・・?」
「どうして・・・私は何も思い出せないの・・・?」

「私は・・・誰?」





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とある言い伝えがある。星形の灰色にくすんだオーパーツがあると
それは願いを叶えると言われている
人々はそれを【願い星】と名付けた

ただし、それは願った通りには叶わず違った形で叶える
絶望は希望に、希望は絶望に反転して
そしてそれは、こう呼ばれた

【ネガい星】と・・・

少女の願いは反転した
「消し去ってほしい」という願いは自身に返り存在が消えた。
そして記憶からも消えることで自身から大人たちの存在が消えた


少女はこれから独り彷徨うことだろう・・・
だが、とある出会いが少女の運命を変える

しかしそのお話はまた別のお話しで

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