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浅草ロック座 9~NINE~ 武藤つぐみさんの感想

※演目のネタバレがあります。
※オタクが感じた事100%煮凝りみたいなものなので演者さんや制作さんの意図していない事ばかり書いているかもしれません。


武藤つぐみさんが復帰された。
浅草ロック座にスーパースターが帰ってきた。


これまで

私はストリップで活躍されている武藤つぐみさんという踊り子さんのファンです。
ここ1年ストリップのお客さん人口の増加は目ざましく、武藤さんを見た事がない方も居るだろうなと思います。なぜ休まれてなぜ復帰なのか、分からない方もいらっしゃるだろうから少しだけ。

武藤つぐみさんと言えば、浅草ロック座の中でも独自のスタイルを貫く今年10年目の踊り子さんです。ボーイッシュな見た目で女性ファンも多く、講談師・神田伯山さんもファンを公言しラジオで何度も取り上げています(※1)。 エアリアルやコンテンポラリーを得意とされ、神聖なものからコミカルまで幅広い表現力をお持ち。また性別を感じさせないお姿から男役の上手さはピカイチで2022年夢幻第二期公演で光源氏の景を演じられた際のハマりぷりは常軌を逸しておりました。
2024年の2月、浅草ロック座Breath公演にてご自身のメイン6景のステージ中にアキレス腱を断裂、長い療養生活を余儀なくされました。

この1年は療養中にできることを、と上原亜衣さんが顧問を務めるPalmuという配信アプリを始め、横浜駅の広告をかけたバトルでは1位を取り、巨大な一面ポスターが飾られるなど精力的に活動されていました。(※2)

(※1)伯山さん(松之丞時代)のラジオで最初に紹介された回。

(※2) Berilの横浜駅広告 左一面が武藤さんです


復帰


毎日の配信の中でふと11月頃からふんわりと復帰の報は伝わってきておりましたが、ずっと夢見心地で現実味がなく日々が過ぎていきました。
私の中でストリップは2024年の2月で時が止まったままだったのです。

開演前のロビーでは武藤客が円になって震えていました。どうやら客にも一丁前に1年のブランクというものはあるみたいで、どんな気持ちで初日を迎えたら良いのか、感覚が分からなかった。
本当に武藤つぐみがここにいるのか?、もしかしていないんじゃ…(?)現実じゃないんじゃないか…
色んな意味のわからない会話をしていたと思います。(敬称略をお許しください)

復帰週ということで少し体を気遣った景を担当されるのかなと、そうであったら我々も少し安心して見ていられるかもしれない。
しかしメイン景の照明が着いた瞬間モチーフが分かり、そんなことは無いと察しました。
なぜなら2017年正月公演「舞」で武藤さん自身が演じられた演目の再演だったからです。(私は2018年からのファンなので見た事がなかったのですが、写真集7巻を穴が開くほど見つめて喉から手が出るくらい見たかったものの1つ)
(その写真の1つはロビーに飾ってあります。)


写真集7巻に載ってます


道成寺


おそらくあの演目は、『道成寺』

https://noh-sup.hinoki-shoten.co.jp/sh/94/ja

ざっくり言うと道成寺は「安珍清姫伝説」をベースにしたのその後の物語を表した能演目。
好きな人に裏切られたと思い込んだ清姫が、その怨念で大蛇になって追いかけてきて寺の鐘の中に隠れた安珍という僧を焼き殺してしまうというストーリーがベースの為、2025何は巳年だからもしかしたらお正月に同じモチーフがあったりするかなーと思っていたのですが、まさかの2月公演に!ご自身での再演!!🐍
(武藤さんはポラ館演目にも道成寺演目がありますがそれとはまた別の演目です。)

ポラ館での道成寺は選曲も合間ってロックでカッコよくカラッとした気持ちのいい狂気と色気に満ちており相手のことなどお構いなしで狂気の中に愛と自分を貫いていく女の強さすら感じる演目ですが、
浅草ロック座(元祖)版は自分の放った愛で自分を苦しめ、泥水を啜るように「どうして」「どうして」と問いかける。想いが思念となって具現化しその放った全てが自分に返ってきて身を焦がし焼き尽くしてしまう因果に満ち満ちています。
私の中ではポラ館演目が「安珍・清姫伝説」、浅草ロック座が「道成寺」みたいに見えたりしています。


登場の能面姿はまさに独特な拍子を踏む白拍子そのもの。
よくぞここまで能とダンスを上手く融合させたなという天才的な振り付けに、顔が見えなくても分かる言葉にしようのない武藤さんの放つオーラが合間って、照明が着いたその瞬間のなんとも異様な存在感よ。
初日、1回目の8景、ステージの照明がついた瞬間の、「私たちが恋に落ちた武藤つぐみ」がそこに居て、1年前と地続きにまるで何事もなかったように舞い始めたあの一瞬を忘れないと思った。
本当に頭の中で私のストリップがまた動き始めた感覚がした。

曲も当時からのファンの方に聞いたら2017年当時のそのままだそうで、1曲目はほぼ7分間、たった1人であの難しい表現のダンスを踊り続けます。
まるでいわくつきと封印された能面が暗い木箱の中で人知れずカタリと音を立てるような序盤から、四肢を得て白拍子として舞をはじめると清姫の感情が顔を出し…と思ったら我に帰り白拍子としての舞を続け…そしてまた踊るうちに感情がふつふつと湧き上がるを繰り返すような不気味な踊りの一曲目。
全ての観客の目が自分1人に集まるあの状態は、指先まで油断のならない乱拍子のよう。

写真集を見返していると武藤さんはこの頃の年代よく仮面やヴェールを纏い素顔が一切見えない…などの景が多く、この綺麗なお顔を隠すなんて凄いことをするなプロデューサーさん…と思ったのですが、いや、武藤さんの仮面を付けた時にでも漏れ出るオーラとそれでもここまでの存在感を示せるダンスに惚れてしまったんだなと今なら納得する。

曲の盛り上がりと共に暗転、そして衣装を脱ぎ捨て明転と共に女が現れ花道を駆けていく。
白拍子の出立ちを放って清姫の姿(ベット着)になって登場した時のかっこよさよ…!凄いカタルシス!!!盆へズサァッっと倒れ込むのめっちゃ良い…!!!

帯をどんどん解いていき翻すのですが、音楽に合わせて放物線を描くように綺麗に上に登って天井を染める赤はまさに燃え盛る業火のようであり、また怒り狂いとぐろを巻く姿でもあり……
盆に来てドクンドクンと鼓動を打たせる振りがめちゃくちゃ音楽に合っていてかっこいい!ずっと白拍子を通じて思念だけで動いていた清姫の心臓が動き出したみたいでゾクゾクしました。
そして1曲目ラストのあの印象的な4ポーズ、照明と曲の解釈との合わせ技で本当に本当に奇跡的なカッコ良さ…!地獄の淵から舞い戻ってきた清姫すぎてやばい。そしてそれを盛り上がるジャッキ上げ。多くの人の印象に強く残る場面だろうなと思います。
1曲目の終わり倒れ込みながらそっと長い紐をするすると手繰り寄せるのですが、それが鐘の中にするりと入っていく大蛇の尻尾に見えてすごく良い。

道成寺としての序破急は1曲目に詰め込んでおり、2曲目はより清姫の内面へと潜り込んでいくような構成。
2曲目、今度はまるで蛇のように女のように客席に視線を絡みつかせていきます。
ああ、ようやく見つけた、もう逃さないと言わんばかりに手を差し伸べたり、手招きをしたり、目元は黒いレースで半分見えないのですが、その奥に蛇のように捉えて絡めて離さない眼力が強く強く光っている。
武藤さんには珍しいシンプルな黒いネイル…白い指に不気味に美しく映えていて手元をくっきりと浮かび上がらせます。
そして物理的にも盆まわりの人は容赦なく赤い紐がぶつかるし絡みつく。なので清姫の攻撃には覚悟してお座りください。目の前で燃え盛る炎を前になす術もなく火の粉がパチンと皮膚を焼くようなガチの4DX。
全身に紐が巻き付いて切って行くポーズはポラ館版を彷彿とさせるところもありそこで2つの清姫がリンクするような気もして対みたい。
盆の上では紐を咥えたり舌なめずりしたりなど蛇のように挑発していくの凄く良いしステージへ戻る時にお客さんに向かってシッ🤫てしたとことか見ちゃってシンプルに強くてカッコよくて好き…口元は不敵に笑っていてもうこのまま地獄の果てまで連れていかれそう。いや連れて行かれたい。。

歌詞も本当にそのまんまというか、よくこんなにもぴったりな曲を探してこれたなという。(このくらいの時の公演、まじで選曲が鳥肌ものばかりな印象です)

ラスト、帰りの花道で自分に巻き付いた赤い紐を自らの手で解き放ってしっかりした足取りでステージへ戻っていきます。
ステージに残した紐を手繰り寄せる仕草もすごくかっこいい。
最後の最後だけ纏わぬ姿になるのですが、中から白いお体が見えるのがまるで脱皮をして月白の姿に変態する蛇のように凛々しく神々しい。
脱皮して以て大蛇と成る、一見禍々しい演目ですが、復帰され新しい武藤さんがこの地に足をつけるのにこれほど門出を示す演目があろうか…。

武藤さんはロング出演ということで、本当に、本当に、この激しい景をどうかどうか最後まで無事に駆け抜けることができますようにと、ステージの神様に祈るばかりです。

療養中、手術してリハビリして配信して…たくさんたくさんたくさん辛い事を乗り越えてきたはずの武藤さん。
いつも命懸けで難しい景を担当する事も多く傷や怪我も治らないうちにまた次のステージへ…という過去もあり今回は完全回復を待ってからの復帰だったそう。
1年ぶりのステージは私たちには想像できないようないろんな不安があったかと思います。
それでも初日このステージを完璧に仕上げて立ってくれて、武藤つぐみであってくれて、ありがとう。
改めてここには武藤さんが必要で、武藤さんにしかでいないことがいっぱいあると思いました。



IQ3ゾーン

※ここからIQ3になります。

フィナーレッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(頭抱え)
フィナーレはファムファタと同じBeなイタリアン シャンシャン('ω' ノ۝ノ゛。
違うのは立ち位置です!いやいやまさかと思いましたがMC!!!!!!!!!
照明が着くとドセンターで脚を組む武藤さん!!!!!ハッッッ無理ッッッッ!!!!!!そのリップどこの何色!?!?!?何番!??!?!?!
いつもよりかっこよくて艶っぽい低音ボイスでメンバー紹介です。
武藤さんMCからしか摂取できない栄養素に今まで入ってなかったもの。
むりむりむりむり。きいてない。新発売。

このフィナーレの時の武藤さんの全ての動きの色気と言ったら半端じゃない。
本当にどの瞬間も絵になるほど美しく色っぽい。
ご本人的には普通に踊ってるつもりなんだろうけどこっち的には理解を超えたえっちさなんです。
前回のファムファタと立ち位置が変わって小宮山さんとの双璧の位置なんですが、花道をゆっくり歩いてくるところとか強すぎてほんと負けたい。めちゃくちゃに負けたい。コテンパンに負けたい。
1秒1秒全てが美しくて色っぽいのでここがとかもはや言えないんですが、例えば椅子に座って脚を開いてタンバリンする時の足の角度とかで1時間くらいは話し続けられると思います。
上を向いて仰け反るポーズのところで2時間いけます。やらせてください。
顔がね!!!!綺麗だね!!!!!!!!!好きだよ!!!!!!!!!!!!!

浅草ロック座「9~NINE~」1st公演は2月20日まで、
武藤さんのご出演は2nd 3月10日まで続きます。
どの景も常連さんにも初めての方にもみんなが初見で楽しめる演目だと思うので、ぜひ足を運んでいただきたいです。


最後に色々と書きましたが、演目の題材をまったく知らずに見てもめっちゃカッコいいし、真っ新な気持ちで見て頭で想いを巡らせるのも素敵だしそれがその人の答えなので、そういう見方も凄く良いと思います。(ご本人や公式から発信があったわけではないので、私の感想や推測も全て憶測です。)


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