ショートホラー お帰りクダサイ
これは、小学生が名札に十円玉を隠し持っていた頃の話です。社会人の間で携帯が普及し始めたものの子供用はまだなく、近所になら十円でもそれなりに通話が可能だった頃だからこその出来事でした。
多かれ少なかれ、女子というのは占いを好み、それが動物霊頼りでさえやろうとする。それも、紙と筆記具、十円玉が有れば出来る儀式なら。
地域差はあれど、鳥居に五十音、それに数字や肯否を紙に書く。そして、十円玉を紙に乗せ、複数人の指を十円玉に乗せる。
その後で動物霊に語りかけ、知りたいことをそれに尋ねる。色々と曰く付きの儀式だが、小学生の好奇心は怖さを打ち負かしてしまった。
ある日、グループのリーダーが儀式に使う紙を用意し、グループで一番の下っ端が名札ケースから十円玉を提供。金曜日の放課後、静まり返った教室でその儀式は行われたのです。
とは言え、誰も彼もが小学生。儀式の半ばで、先生から直ぐに帰るように注意されてしまいます。そして、グループのリーダーは、メンバーを悪者にしつつその場を仕切り、儀式に使ったもの全てを持ち帰ってしまいました。
残されたメンバーは、提供した十円玉を持ち去られた子に同情し、後で返して貰うよう口々に言いました。それから、儀式を行ったメンバーはそれぞれ帰路に就き、帰宅した頃には何を儀式で問うたかも忘れました。
その翌週、彼女達が週始めに登校した日のことでした。あの儀式をやろうと言い出したリーダーが亡くなった。そう担任から聞かされたのです。
クラス中がその知らせに呆然とし、儀式を行ったメンバーは泣き出しました。メンバー達はひとしきり泣いた後、儀式が原因ではないかと疑い始めました。
こっくりさん、それは終わらせ方を間違えると呪われる儀式。儀式に使った十円玉を持ったままだと呪われるとも言われる。
そのどちらもリーダーはやってしまった。儀式にさんかしたメンバー達は、その日から落ち着かない日々を過ごすことになったと言います。