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Topatz Love MV語り

 アオハルイメージなのが「Topatz Love」のMVである。KinKi Kidsの二人もキラキラした背景の中で歌うが、陰キャ的には「そんな青春時代は無かった」せいか、アオハルの印象が強い。
 制服姿の子供が、友達と訪れた店で働く男性に惚れて、その店の商品を買う。その商品は万華鏡作成キットらしく、工作課程や万華鏡を覗き込んだシーンも流れる。検索したところ、万華鏡の工作キットは数百円から手に入るようだ。小学校の夏休みの宿題にもお手頃価格で便利そうな万華鏡キット。
 万華鏡には「鏡」と言う漢字が使われているだけに、部品には鏡が使われている。万華鏡を作ったことはなくとも、分解したことがある人なら、(壊しても気にならない値段の)万華鏡は単純な構造であることを知っているだろう。円柱状の筒の中に底無し三角柱の(値段等によって枚数は変わる)鏡。覗く側とは反対側には、ビーズやスパンコールのキラキラしたものが封入されている。覗いている時に幾らかの光を取り入れなければならない為に、覗く側とは反対側のパーツは、透明の素材で出来ている部分もある。
 万華鏡を覗いて見えるのは、ただ鏡に映し出されただけの虚像。だが、手芸店や百均で手に入る安価なビーズやスパンコールなどの小さなキラキラしたパーツが、偶然出来た配置によって様々な光景を人に見せる。それは、あくまでも三枚の鏡が見せた虚像でしかない。鏡に映るのはあくまで虚像。様々な経験値の低い子供の「突発的な恋」も、そんなものかも知れない。自分の目にはキラキラしたものに映ったものも、所詮は「少しでも動かしてしまえば崩れてしまう」刹那的な虚像だ。鏡に映し出されたものを取り出してみても、人工的に作り出された(手芸が趣味とかネイルアートに使うとかしなければ)他に何に使えるのかも分からない小さなパーツ。その現実を見なければ、夢の中で幻の幸せを堪能出来たかも知れないキラキラとした虚像。陰キャから見たら青春を謳歌しているように見える奴等もそれと同様、人気者に日和っているだけかも知れない。

 MVでは、子供が「惚れた男性店員が彼女らしき人と話している」のを目撃して、とりあえず大人の女性の髪型を真似しようとしている。そこが、とても子供っぽい。その程度で大人二人に割って入るつもりなら、大人二人はたまったもんじゃない。見た目だけで恋愛関係がするなら、婚活やマッチング系のあれこれは商売として成立しない、多分。
 結局、子供は作った万華鏡を男性に差し出して何かを言ったようだが、その後の流れからして諦めたのだろう。そもそも、客として訪れただけの未成年に手を出したら、大人の男性が逮捕される。未成年から言い寄ったとしても、逮捕されるのは大人だ。店員と客の関係でしかない以上、下手に関わらない方が身の為だ。
 しかし、最初は友達と来ていたのに、後は一人で押しかける辺り、どういう心理なのかは陰キャには分からない。憧れは憧れのままで良い。そう万華鏡が作り出す一瞬の美しさのように。
 公式には、「Topatz Love」のショートムービーも在り、こちらは歌詩付きで二人の歌声を堪能出来る。異脳(堂)同名と呼ぶのにぴったりな、二人だからこそ出来る異なる歌詩での歌唱。MVでも、二人の顔を堪能しながらそのパートを聴けるのだが、ショートムービーの仕掛けも美しい。メロディーが青春を表すように清らかなら、歌詩は若さ故の青臭さを表現している。それぞれのソロ活動ではやらない、二人の合作だからこその「Topatz Love」と言う曲。そのMVは、青春など無かった陰キャには清浄過ぎて、浄化されて消滅してしまいそうだ。

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伊野聖月
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