あーこれ、これ
7月9日
昨日は飲み会だった。
前の職場の先輩であるMさんと、今いるバイト先の先輩、MさんとYさんの2人と私を含めた4人で市内の居酒屋で行った。
食べ飲み放題のお店で、席は2時間、1時間半でラストオーダーがくるシステムのお店だ。
律儀にも、デザートは1人2品まで頼めるらしい。
前の職場の先輩と今いるバイト先の先輩2人と言うと、なんとなくややこしい感じではある。説明すると、それぞれの先輩は同じ専門学校の出で、顔見知り。今のバイト先の先輩であるMさんは前の職場に勤めていた先輩でもあり、前の職場の先輩Mさんとも当然顔見知り。バイト先で共通の先輩との話が出ることは、話のネタとなるためなんとなく便利でよく使っていたら、飲み会の話が急浮上した。
急浮上したからって、特にする必要なんてなかったのだろうけど、私がセッティングした。
とりあえず外で飲みたかったんだろう、私が。
19時30分、Mさんが先に到着しており奥の席に鎮座していた。
一緒にいこうよ、というお誘いをしてくれたYさんと合流するのに手間取った私は、Yさんと2人で数分の遅刻をした。Mさんからは特に遅くなったことを色々とがめられる事はなかった。
Mさんは十分ほど遅刻し到着した。
それぞれビールを注文し、会はスタート。
食事の注文は一番下の私に任された。
最近流行りのタブレットメニューでの注文だった。
なんでもいいと言われたので、油物を多めに頼んだ。
量も味もそこそこと言った感じだ。
Mんと会うのは約10年ぶりくらいだった。
Mさんの結婚式が多分最後だ。
髪型も肌の感じも、あの時のままだった。全く老けていない。
そして、やはりというべきか、性格もあの時のままだった。
Mさんは、ちょっと変わっている。
どう変わっていると言うか何かと難癖をつけてくるのだ。
今回の飲み会は当初、MさんとY田さんと私を含めた3人であったのだが、3人は嫌だと言い出した。飲み会の場所も、私は最近できたばかりの韓国居酒屋をチョイスしたのだが、Mさんは、落ち着かない、といいだす。結局、三浦さんチョイスでお店は決めた。
過去のエピソードを何か上げろと言われても、思い出せないが、私が選んだものに関して、手当たり次第難癖をつけていたイメージが強く、飲み会の人数で言われた時に、あーこれこれ、これが三浦さんだ
、と思い出した。
ビールが到着し、酒が入れば皆一様に喋り出すのが世の常というべきか。
会は滞りなく進んだ。
滞りなんて、してもしなくてもいい飲み会でも、やはり飲むときは楽しくいたいなあと思う。
飲み会も中盤、近況報告とYさんの物言いがつきそうな奥さんとの出会いエピソードあと事件は起こった。
Mさんが、私のおいたした話を威勢よく話し出した、それも特盛つゆだくだくで。
その件をすっかり忘れていた私は、はとに豆鉄砲よろしく唐突なできごとにあっけに取られたわたし。
私が入社して間も無く、Mさんの紹介で知り合った6つ上の大柄な女性との関係だった。一度飲み会を開いてもらったり、津久見の花見に行ったり、よくわからず何度かデートに行った。酔っ払っていったカラオケで先輩を前にして、大声でアジカンのリライトを歌ったことを覚えている。ちょいちょい部屋の隅で接吻をしていたとのことだったが、あまり記憶にない。
その人とは一度だけ、ホテルにいった。確か、相手の車でラクテンチの裏の入り口にちょっとした駐車場があり、そこから夜景を見に行ったのだ。
それから何時間かつれまわされ、安いホテルに泊まった。
それから私はすごい勢いで迫られることとなった。あまりの勢いに怖くなり連絡を取らなくなった。その当時はまだEメールでのやり取りで、それなりに連絡のキャッチボールは今にくらべて緩いものではあった。急に連絡を遮断した私に対して電話が何度か相手からあった。だが、その当時結婚や交際を迫る女性がどうしても恐ろしくなり、取ることができなくなった。まだ20代半ばの男児、青春が終わる恐怖と何故だか結婚という選択肢がちらつく年上との女性との情事の後の後ろめたさに、その時の私の心はダイハードよろしくジョンマクレーンばりに憔悴しきっていた。
Mさんの手前申し訳ない気持ちと、その当時まだ多少なりとも女性に対する誠実さがあった私は、Mさん付き添いのもと電話で相手と話した。
場所はMさんの愛車キューブの中で、確か田浦ビーチだった気がする。
電話では、連絡を急に取らなくなった私への叱責から始まり、男として責任を取れと言われ、特上のメインディッシュ、私には怖いお兄さんがついていると言う脅し文句のフルコースを小一時間聞いた。
餅つきの合いの手のように、すみません、すみませんと平謝りする私に、埒があかないことを悟った相手は、何か呪いのような言葉で会話を締め括った気がする。
確か天気はあまり良くなかった、雨の日だった気がする。
Mさんは本当にこいつ最悪なんですよーと
私の素性をあまり知らない両先輩の前で、嬉々とした表情で話すMさん。
回想シーンが途切れた瞬間、ふと三浦さんの横顔に目がいき、あーこれこれ、これがMさんと心で呟いた。
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