朝焼けに、捧ぐ唄。#あさうた 第三小節目 VJレポート
あさうた 四小節目(2nd anniversary)の開催が決まりましたので書き溜めてた前回分のVJレポートを。
次回はこちら。
結構前になるのですが、3/31、群馬の高崎で行われました「あさうた(朝焼けに、捧ぐ唄。)」ご来場ありがとうございました!
今回からこのイベントの非常勤VJとして所属することになりました。INOMUSICAです。
福島県の郡山に住んでいながら群馬の高崎という少し遠い土地のイベントに所属するようになった経緯ですが、2回目のときゲストVJとして出演してみて表現と空間がたまたまわたしのやりたいことと一致してたことが挙げられます。
群馬には優秀なアニソンVJさんがたくさんいるのですが、その中でも遠方の私に声をかけてくださったのは意図がある・・・やはり通常のアニソンVJとは違った空間演出としてのアプローチを求められていると思ったので、いろいろ考えて演出をしてみました。
(たまたま前出演したHAIKAI福島、V-Rush等の電子音楽主体のイベントでアニソンリミックス、VTuber楽曲等での表現についてはいろいろ研究していたところはあるので、それをアニソン原曲で応用したともいえます。)
イベントの概要
このイベントは「アニメED、劇中歌、映画楽曲中心イベント」とあるとおり、
アニメのエンディング及び劇場版の曲などを扱うイベントで、いわゆるBPMの遅い曲やビートのない曲なども割合多く扱うイベントです。
特に劇場版の曲に関してはピンポイントで素材があるとも限らない、劇伴音楽では映画っぽい表現が求められるので、ある程度の演出をしてあげる必要があると個人的に思ったりしてます。(もちろんこれなんの曲?を示すのは特に歌詞がない音楽ではかなり大事だったりはしますが・・・)
やってみたこと→VJソフトでめいっぱい遊ぶ。
アニソン原曲イベントにおいてエフェクトを使ったりすることは賛否両論なところがあります。エフェクトを重ねたり、他の映像素材を重ねると一般に「情報としての」映像は見づらくなるからです。
・・・。
とはいえ、会場の照明も暗くしてるしわたしは普段アニソン以外のジャンルでもVJしてる。VRとかでも一時期やってた。配信でもVJやってる。今回、VJのプロジェクターも2台あるし、空間演出したほうがよくない?じゃあしましょうか。ってことで
アニクラVJをリミックスの手法で行うことを検討しました。
オープニングであれば動きのある映像も多いので、それだけでもある程度盛り上がりを作ることができるのですが、エンディングは1枚絵だったり、動きが少ない映像が当てられていることが多いため、工夫する必要があります。(遊んでもいい、という)
なので、「(あれば)場面素材+エフェクト+泡や水、ノイズ等の汎用素材+あれば歌詞映像(レコボリリック)」という特殊な方法でVJさせてもらいました。
以下、解説していきます。
解説にあたって、BOOTHにありますsenaleonさんの「アニクラ向けVJ素材」をVirtualDJのレイヤーの例として使わせていただきます。この場を借りてお礼申し上げます。
1.VJソフトでタイムシーケンスを組む。4拍~8拍かけて背景映像と素材を濃くしていく。
とりわけ汎用・背景素材の中でも、自分のグループ分けで言うSky・Water・Fog族はこういうイベントにぴったりです。
ただしこういう映像はアニクラVJと混ぜると結構どちらの素材も見えづらくなります。ので特に空の映像を合成するときは4拍~8拍かけてゆっくり合成していくような手法もとることが可能です。
私の作ったサンプルコンポジションだとTransPorterのLinear4ってやつをつかいます。
こうすることにより、雰囲気としてのVJ演出とアニクラVJを同時に行っても、通常の加算より映像が見やすくなります。
2.Edge DetectionやThresholdなど背景映像を混ぜやすいエフェクトをうまく使う。
ResolumeなどのVJソフトではVirtualDJなどの映像にもエフェクトをかけることが可能です。その中でも特に使いやすいのがEdge DetectionやThresholdなどのエフェクトですね。
特に線画にするEdgeDetectionと黒を透過するAutoMaskを利用すると、素材とアニメ映像を以下のようなテイストで合成することもできます。
ResolumeやVDMXであれば、ある程度拍に合わせた自動化もできるので、通常のアニソンVJと組み合わせてもなんとか手は足ります。
ちなみにですが。レコボリリックを使用する場合も現映像にエフェクトをかけたり、シーケンスを組むことで見やすくなることがあったりします。わたしはBPMで点滅させてます。
例として・・・
VirtualDJで読んだ映像→EdgeDetectionなどのエフェクトを4拍かけて戻す
+
レコボリリック(テクスチャリリックを使って水や炎・虹を切り取る)
+
背景映像(空や水の映像を4拍かけてゆっくり入れる)
+
ノイズ素材等
って感じをひとつのパターンとしてVJしてます。
暗転・黒落としを使ってみる
これは通常のアニソンVJでも有効な手法なのですが、曲をフェードアウトして改めて入れる場合とか、音がなくなる場合は、暗転をすると劇場感が増すような気がします。
特にEDや劇伴音楽、挿入歌を使用する場合だとフェードアウトしてから次のイントロを入れるとか、ギターやピアノなどの楽器残響を使って次の曲を入れたりと、OP中心の盛り上がり系のアニクラ以上に「音をあえてなくす」という音響表現は好んで使われる傾向にある、と思っています。
そういうときに、VJソフトもしくはV1-HDなどのミキサーで映像を黒に落とすとかなり臨場感・緊張感が出ると思うのです。
また、EDや劇場版音楽はイントロが長い傾向があるので、イントロドンのような現象も通常のアニクラよりは起こりにくい場合があります。そういったときに、次の曲を視覚的に気づかせるタイミングは黒落としから入れることによりコントロールしやすくなります。
特にアニクラVJでVirtualDJのみを使用する場合はソフトでの黒落としは工夫しなくてはならないのでアニクラVJで黒落としをするひとは実はあまりいないのですが、うまく使えば差がつくテクニックの一つだと思っています。
Resolumeでの組み方としては何かしらのフェーダーをマスターに振ればいいですし、V-1HDの場合だとミキサー側でも黒落としが可能です。
セピアや白黒にしたりノイズを混ぜたりする
劇伴音楽の場合は、回想シーンっぽい雰囲気を出すためにセピアや白黒にするエフェクトを使用してみたり、Staticなどでノイズを混ぜてみるのもひとつの手だと思っています。今回はある劇伴音楽であるシーンをセピアにしてみたら好評をいただきました。
また、ちょっと年代が古いテイストのする音楽とかでも有効な表現だと思います。
ブラス主体の音などの曲において西部劇や麻袋のようなカントリーな雰囲気を出したり、昔の映画みたいな雰囲気をつくるにも有効な表現です。
HipHopとかでもテレビノイズ的な表現が合う場合もあります。
ネットの集合知を大いに使う+黒帯を使う
あまり大きな声では言えないですがアニソンVJとして必ずしも「正解の映像」を使わなくてはいけないわけではないと私は思っています。
何とはいいませんが・・・
「作品名+シーン」「作品名+告白」「作品名+別れ」「作品名+最終話」とかで検索するといろいろ出るには出るわけです。
また、そういう動画には字幕や余計なものがついてることが多いので字幕部分を黒帯にするエフェクト(CropやSolidColor)なんかを組んでおきます。上と下が黒くなるだけでも劇場版とか特別なアニメ感でるので、表現としても一石二鳥です。映像がないときは空や街の映像+先述のセピアエフェクト+黒帯とかでもそれなりにそれっぽくなります。
直接その映像を流さなくとも、「桜」の中での告白シーン、「花畑」の中での親子の交流シーン、主人公とヒロインが「星」を見に行く、「炎」属性の主人公がバトルするシーン、などのヒントは得られます。それらを汎用素材として持っていれば、そういうのを足すのも表現の一助になるんじゃないかなと思います。
素材がないときには
いわゆる素材がないときの汎用素材なんですが、こういったイベントに限らず、Beepleとかの無駄にサイバーな素材を出してしまうVJさんもいます。
(VirtualDJの運用上仕方ないこともありますが)
SF作品とかクラブミュージック要素が強い楽曲、オタ芸楽曲ならそれでいいんですが、アニソンの場合特に青春を感じるような爽やか作品でギラギラのクラブ映像やりすぎると違和感がすごいことになります。オタ芸楽曲やゴリゴリのロックが主体のイベントであれば問題ありません。
こういうときは空とか音符とか紙吹雪とかのマイルドな素材がむしろおすすめです。
極論すべての時間帯の空の映像あればアニクラのVJはなんとかなるくらい空とか水とかの素材は便利です。
今回のイベントは春に開催されたので、さよならメモリーズ(Supercell)などの卒業関連の曲なんかもかかったんですが、このくらいの曲になると空と桜だけでも結構いい感じになります。
まとめると・・・
・通常のアニクラVJにRemixVJの手法を導入し非日常感と空間演出をする
・空や水・ノイズなどの映像を混ぜ込んだり4拍MIXする
・黒落としをする
・上下を切って大人の事情への対策と演出を同時に行ってみる
・ネットの集合知を利用する
といった感じです。どうしても通常のアニクラVJとは違ったアプローチになってしまうところはあるのですが、せっかくVJソフトがあるならこういう使い方もあるよ、という感じで参考にしていただければ幸いです。
次回
朝焼けに捧ぐ唄。 #あさうた の次回4回目は、2周年で、こんどの7月に予定されています。
そちらでもまたVJしますので、ちょっと変わった映像表現が見たい方、アニメや音楽に浸った一日を過ごしたい方はぜひ。