「ロケ」の檻から解き放たれた『ハネノバス』。草薙&後藤の心地よい旅路

昼に観た日テレ『ハネノバス』が面白かった。宮下草薙・草薙と四千頭身・後藤の2人旅。

本人たちの行きたいところに行き、やりたいことをやってもらうという企画。旅は1泊2日、移動は後藤が最近買ったアウディ(お値段450万…!) 

YouTubeに行き先を決める打合せの様子があがっているのが、本人たちは特に行きたいところもやりたいこともないのがもう可笑しい。

草薙の「去年はすごい喧嘩させられたもんね」から始まる2人の会話は、テレビへのボヤきに満ちている。取れ高ほしいとか言わないでほしい、とスタッフに釘を刺し、釣りをやると決まればバラエティの「お約束」をしないことを確認する。

後藤「(水に)落ちたりしなくていいっすよね?」
草薙「そんなのしなくていい。本当に。かかってないのに『かかったかも』って言ってあげてみるかやんなくていい」
後藤「(笑)」
草薙「そんなんばっかやってきたじゃんか、去年」
後藤「釣れたの確認して下ろしてもう一回やり直す」
草薙「やんなくていいから(笑)」

旅の同行者はスタッフ2人だけ。アウディの後部座席に乗り込み、カメラはディレクター手持ちのデジカメとアウディ車載の360度カメラしかない。(360度カメラ、1台あるだけで車内の様子と前方の景色を両方カバーできてすごい)

『ウンナンの気分は上々』や『水曜どうでしょう』を思わせる画作りだけど、この旅、本当に本人たちの自由にしているので何も準備がない。「長瀞で釣りをする」と泊まる宿だけ決まっていて、釣る場所も釣り具もない。蕎麦屋でご飯を食べるけど、肝心なところでカメラが回ってない。あげく、目的地に着く寸前で車載カメラのバッテリーが切れたりする。

↑同行ディレクターのツイート

そんな事態を前にして、2人のテンションは「なんでやねん!」では「なんなの」である。テレビ用に気持ちを整えたり、変な素人にからんだり、対立の軸を作ったり、全然ない。お笑いの深い話とかも特にしない。ずっと「ちょっとなんなの」でいく。それが見ていて心地いい。


いわゆる「ロケテクニック」的なものが意識されるようになってずいぶん経つ。例えば『相席食堂』を見ていると、世の中には上手いロケと下手なロケと、そんなスキルレベルを凌駕する奇跡があることがわかる。見ている側も「ここであの家族に話聞くとかすればいいのに」とか思うようになっちゃう。

『ハネノバス』の2人は「ロケ」の檻からまさに羽を伸ばし、自由に行き当たりばったりの旅をする。それでもいろんな神様が味方して、放送時間の30分があっという間に過ぎてしまう。

あまりにゆるいロケだったので、別の番組でなにもできなくなるほどだったらしい。

後藤「僕ら1週間後にまた秩父にロケに行ったんですよ。別番組で。こんなにゆるいことしたから、僕らなんにもできなかった」
草薙「関西の大物芸人さんとかいっぱいいてね。千鳥さんとかかまいたちさんとか…」
(中略)
草薙「悪いクセついちゃったよね」
後藤「秩父旅はこれでいいんだって」
草薙「(笑)」
後藤「ダメ。全然ダメでした。いやいや、でもすぐに行けてよかった」
草薙「ハッ!ってなったもんね」
後藤「日テレが崩したフォームをフジテレビが立て直しました。あぶない」

他局で支障をきたさない程度にまたやってほしい。お正月の昼間とかに見たいなぁ。


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井上マサキ
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