2022年8月19日~20日 酒。読書。観劇。それだけ
私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。
たとえば、2022年8月19日~20日にかけて……
2022年8月19日
18:30 舞台『世界は笑う』@渋谷・Bunkamuraシアターコクーン
幕間20分を含め3時間45分、たっぷり楽しむ。
終演時間が22時を超えたため、真っ直ぐ帰宅。
缶ビールを飲みながら、パンフレットと小林信彦著『決定版 日本の喜劇人』(新潮社)をパラパラ捲って感想記事を書く。
『決定版 日本の喜劇人』は、著者の小林氏が元々辛口なのもあるが、当事者たちと交流していたため、個々の喜劇人をノスタルジーで伝説化・神格化しておらず、全体的にトーンが重い。
1970(昭和45)年生まれの私にとっては、生まれる前か幼い頃にかろうじて間に合った喜劇人が多く、物心ついた頃に放送されていたような「懐かしの芸人特集」的テレビ番組で紹介された面白い場面ばかりが記憶に残っていたため、そのギャップに戸惑った。
クレイジーキャッツ、特に植木等は売れっ子ゆえ、所属していた渡辺プロダクション(というか、当時の社長・渡辺晋氏)の思惑に翻弄され、人一倍苦悩を抱え込むことになってしまったと知って胸が痛んだ。
クレイジーキャッツといえば「シャボン玉ホリデー」で、これについては、影山民夫氏が『ガラスの遊園地』(講談社文庫、1991年)で小説にしている。彼は同番組の作家をやっていて、その経験を基にフィクションを紡いだわけだが、当時の彼は大学生で下っ端だったため(しかも、憧れのクレイジーキャッツだし)、(小林氏とは違い)キラキラした青春物語となっている。
この小説では夏元遠治として登場する秋元近史氏は「シャボン玉ホリデー」のプロデューサー兼ディレクターだが、彼が、『俳人・秋元不死男の子息で、劇作家・秋元松代の甥にあたる』と知って驚いた。
小林氏は『クレイジーをもっとも生かせたのはこの人』と彼を評している。
ちなみに、『ガラスの遊園地』の夏元遠治は、『肝臓癌で死亡』となっている。
……なんてことを考えたりしている間に、気がついたら、26時を超えている。
とりあえず、「白いワニ」を出して強制終了。
明日のために寝る。
2022年8月20日:再演作を観る日
9月にユーロスペースで行われる『今、出来る、精一杯』の上映会のチケットを取る。2019年12月に上演された舞台の記録映像で、私は生で観ているのだが、作・演出の根本宗子さんと主演の伊藤万理華さんのトークイベント付きということで、チケットを取った次第。
無事購入できたので、気分良く外出する。
向かう先は、渋谷。
13:00 舞台『VAMP SHOW』@渋谷・PARCO劇場
まさか初演から30年、再演からでさえ21年も経っている芝居が再び観られるとは……というか、30年前の初演(再演も)を観ている自分にも驚く。
2022年でも、今どきの若い俳優が演じても、ちゃんと面白くて怖いというのは凄いことで、とても満足して劇場を出る。
つい先日も、劇団☆新感線が29年前に上演した『TIME SLIP黄金丸』を少年社中がリニューアル改訂版で上演したが、他国に比べ新作が評価される日本において、過去の作品が見直されるのは良いことだと思う。
渋谷の街は小雨が降っている。傘は持っていない。渋谷駅まで早足で歩く。
渋谷から今度は池袋に向かう。
16:20 池袋・弁慶
池袋も小雨。
池袋西口、西一番街中央通りの池袋演芸場を通り過ぎ「弁慶」という大衆酒場に入る。
カウンター席に座り、入り口のタテカンにあった「入店時にお伝えください」という言葉に従い、「表に『生ビール 200円』って書いてありましたが……」と伝えると、女性店員は素早く頷いて、奥に引っ込む……程なくビールが届く。
テレビでは、巨人-阪神戦をやっている。阪神の藤波投手が今季初勝利目前とのこと。
ぼんやり試合を眺めながら、ビールを飲み干し、米焼酎のロックに切り替え、ついでに焼鳥のセットを注文する。
17時前、地上波の野球中継は試合終了を待たず終わってしまう。
私の目の前のグラスも皿も空になってしまったので店を出る(藤波投手は今季初勝利を挙げたらしい)。
酔い覚ましに東急百貨店の書店をブラブラしてから、東京芸術劇場に向かう。
18:00 舞台『Q:A Night At The Kabuki』@東京芸術劇場プレイハウス
劇場に入ると、そう、思い出した。初演と同じだ。
あの時も確か、開演前に何故か「王様」の『深紫伝説』が流れていた。
1995年に突如現れた「王様」なる人物が、1960年代後半から70年代前半に人気があったイングランドのロックバンドDeep Purpleの曲を「直訳日本語」で歌うメドレーという、企画モノ臭ぷんぷんの曲である。
その二番煎じで、爆風スランプのパッパラー河合が「女王様」と称して、Queenを「直訳ロック」していたはずだが、そちらではなく、何故かDeep Purple……(もしかしたら、私が劇場に入る前には「女王様」が流れていたかもしれないが)。
21時前終演。
「BOHEMIAN RHAPSODY」のギターソロを口ずさみながら劇場を出る。
まだ小雨が降っている。
真っ直ぐ帰宅し、昨日と同じようにビールを飲む。
相も変わらず、「酒。読書。観劇。それだけ」の週末だった。