サブスクが嫌いだとか言ってるやつ
音楽業界に限らず、今やあらゆるエンタメ、サービス、インフラにいたるまで浸透した様々なサブスクリプションについて思うところを書いてみる。
というか、音楽業界のサブスクについて(どーん)。
当方30後半。青春時代はCDはもちろん、MDを聴きまくった世代だ。
あの四角くてスタイリッシュでメタリックなフォームが忘れられない。
今でも無意味に持ち歩きたいぐらいLOVEだった。
さらに古くはカセットテープだって聴いてたし、カセットのウォークマンも大好きだった。
あの頃はようやく手に入れたカセットだかCDだか(買う金なんてなかったから、怪しげなレンタル屋で当日レンタルなんかしてせっせと録音して)の音源を、音質なんてそっちのけで擦り切れるほど聴いた。
印象に残ってるのは、一番安いA面5分、B面5分の10分テープに、A面に中島みゆきの『旅人のうた』を、B面にサザンオールスターズの『マンピーのGスポット』を入れて、本当にリピートしまくったこと。録音の仕方もわからなくて、どうしてもと頼んでお兄にやってもらったので、それしか聴けない。でも、全然飽きることがなかった。
なけなしの音源をエンドレスリピートした、というのは、
ある世代以上の人なら誰にだってある思い出だと思う。
だけど、サブスクはそんなかわいい思い出を一変させる黒船のごとく襲来し、紆余曲折を経て、結果的に、音楽業界、ひいては音楽体験そのものを席巻してしまったと言っていい。
もうサブスク前の世界線には戻れないし、その意味で、ごめんだけど全盛期のようにCDが売れることはもうないと思うのだ。
例にもれず、中島先生とサザンのエンドレスリピートだった俺も、今ではAmazonのサブスクに入り、毎日違う音楽を聴くようになった。
(子育てしてるとね、目を奪われるからね、どうにか耳だけは自我を保とうとするんだけど、それはまた別の話)
同時に、一回聴いた音楽は、よっぽどのことがないとリピートしなくなった。
そこで、どうやったって、こう主張するやつが出てくるわけ。
サブスクなんて嫌い。サブスクはアーティストの収入を激減させた。曲を何度も聴いてもらえないから、寂しい。
CDの時代はよかった。夢があった。今はだめ。せっかく作った音楽が軽く扱われすぎる。アーティストが育たない。
バカ言ってんじゃないよ。
お前、自分に都合のいいことばっか言ってんじゃないよ。
ポジショントークだろうがよ、それ。
自分だけがよければ他はどうでもいいっていう典型だよ、お前。
時代を責めたって仕方ないし、どうにもなんないじゃないかよ。
今はサブスクだし、誰にもどうにもできないんだよ。
CDにはCDの良さがあったし、俺らの青春なのは間違いない。
だがよ。
だがよな、Z世代の青春はサブスクなんだ。そうやって、青春はその時その時で変化していくんだ。
俺らより上の世代はレコードだし、さらに上の世代は生演奏しかなかった。それだってかけがえのない青春だ。
どれがいい、何がいいとかじゃない。お前はお前の青春を大切にしてればいい。
サブスクに限らず、何かの黄金時代が終わるとき、だだっこのように「あの時はよかった」と言い始めるやつが必ずいる。
ウディ・アレン監督の映画『ミッドナイト・イン・パリ』では、小説を執筆する主人公が1920年代にタイムスリップして、あこがれの大作家に会うが、彼は「昔はよかった」とつぶやく。さらに30年を遡って出会った作家がまた「昔はよかった」とつぶやく。
いつになっても回顧してしまうんだよね、人間は。
儚いというか、そうしないと上手に年を重ねられない。
だだっこ結構。
みんな人間だから。
青春を大切にしつつ、サブスクの便利さも享受しちゃおう!