「社会に出る」とは何か(せごどん/2)
私たちは日常的に「社会に出る」という言葉に接している。インターネット、テレビ、そして友人との会話など、様々な場面で耳にするこの言葉。しかし、私はこれまでその意味を深く考えたことがなかった。これまでも、「社会に出るとは何だろう」という漠然とした疑問を抱きながらも、具体的なイメージを持つことができずにいた。
しかし、就職活動を終え、来年度から社会人となる今、この抽象的な表現に改めて向き合いたいと思う。今回は「社会に出る」とは一体何なのか。自分自身の言葉で定義し、その意味を考察したい。
「社会に出る」の「社会」の意味
そもそも社会に出るというフレーズの「社会」とは何だろうか。以降の議論を整理するために、辞書で「社会」という単語の意味を調べてみた。
まず、驚いたことは「社会」という単語は「明治初期」という言葉の歴史から見れば比較的最近に「Society」の訳語として作られたということだ。
「社会」には大きく5つの意味があるが、少なくとも「社会に出る」というコンテクストでは、5の「社会化の略」を除いたいづれかの意味で使われているのではないかという予想が立った。それら(1〜4)の意味において、「人々」という共通するキーワードがあることも同時にわかった。
次に、訳された言葉である「Soceity」の意味を辞書で引いてみた。
日本語の「社会」同様、社会が指す対象は広く、コンテクストによって意味合いが変わってくることがわかった。実際、「社会」という訳語が作られたのも、別のワードでは、文脈によって意味合いの変わる「Society」を十分に訳すことができない、つまり、訳語を作らなければその概念を表すことができないからだそうだ。
2つの辞書の結果を比較して、やはり「社会」(Society)は様々な意味を持ち、コンテクストによって意味合いが変わってくることがわかった。
「社会に出る」というワードが使われるシチュエーション
そもそも「社会に出る」というワードはどういう時、どういう場所で使われることが多いのだろうか。私は、高校生や大学生といったまだ本格的な就労を経験していない学生、生徒に対して、保護者や先生といった就労経験のある人が、今後のキャリアについて話す際に使うシチュエーションが多いと考える。
ではそのシチュエーションにおいて、どういうコンテクストで使われるかもう少し掘り下げてみる。「社会に出る」という言葉はそれ単体で使われることはないと考える。言い換えると、「社会に出る」というワードは仮定条件(〜と/〜ば/〜たら)として用いられ、その後に社会に出たことに対する「現時点とのギャップ」を比較し、話されることが多いのではないかということだ。
まとめ:私が考える「社会に出る」
これまで「社会に出る」というワードに対して、辞書的な意味と実際に使われるシチュエーション、コンテクストの2つの視点から考えを整理してみた。
私の考える「社会に出る」を話す前に伝えるべきことは、「社会に出る」というワードは話し手や聞き手のシチュエーション、コンテクストによって意味が異なるということである。つまり、「社会に出る」というワードに明確な定義は存在しないということだ。
では、私が考える「社会に出る」とは何なのか。
それは、「自分自身の視野が広がり、価値観やものの考え方が大きく変化する経験をする場へ足を踏み入れること」である。
そう考える理由は、これまでの私自身の経験にある。私は、高校時代の課外活動や、大学における学生団体の活動において、様々な場所で活躍している大人の方、言い換えれば「社会人」の方々と話をする機会があった。その中で、社会人の方から「社会に出ると、自分より上の人がたくさんいる」というコンテクストで「社会に出る」という言葉を何度も聞いたことがあった。当時は、この言葉を深く考えもせず、何となくそうなのだろうと思っていた。
しかし、就職活動を始め、様々な大学から来た就活生と出会うたびに、その言葉の意味が脳裏をよぎった。というのも、私は文系出身だがIT、特にプログラミングや動画編集といったスキルは文系の中でも優れている方ではないかと自負していた。ところが、同じ業界を目指している就活生の中には、私よりも高いスキルを持つ人が多数いたのだ。その経験を通して、私は自分の知識や能力がまだまだだということを痛感し、まさに「井の中の蛙」だと感じた。
つまり、私は就職活動を通して、自分自身より優れたスキルを持った人を見たことで、自分自身の立ち位置がわかり、結果としてもっとスキルを磨こうという気持ちになった。言い換えれば、様々な人との関わりを通して自分自身の視野が広がり、「私はこうしよう」「私はこうなりたい」といった物事に対する考え方が変わったのである。
そういった、自分自身の視野が広まり、価値観やモノの考え方が大きく変化する経験をする場へ足を踏み入れることが、「社会に出る」ということだと私は思う。
せごどん
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