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『海賊の時間』2024版 対談企画第三弾

こんにちは。『海賊の時間』2024版、演出助手の寺腰です!
スタッフさんと演出の創作にまつわる対談をお届けしていくこの企画も、いよいよ今回で最終回。
企画の最後を飾る方は舞台美術プランのご担当者、「イマにヒとコへ(え)」「演劇ユニット Willow’s」主宰の木川流さんです!
対談だからこそ語られる創作の裏側、舞台製作に秘めた思い。最後までお楽しみください!

▼ 🏴前回の記事はこちら🏴 ▼

■実は長い、二人の関係

ーーー今回は、舞台美術プランナーの木川流さんと演出の芝原れいちさんに対談をお願いしております。本日はよろしくお願いいたします。

木川:はい。よろしくお願いします。
芝原:(プライベートでは)しょっちゅうお話してるんですけど。(木川さんと)対談って初めてかもしれないですね。
木川:たしかに。対談は初めて。
芝原:初めてですよね(笑)

ーーー皆さんご存知ないと思いますので、お二人の関係をお伺いしてもよろしいでしょうか。

芝原:流さんは一個上の先輩で。同じ大学、明治大学の一個上の先輩で、僕より先に芝居をやってらっしゃって。僕は入学してから最初に入った座組からずっと一緒だったんですよね。しかも、最寄りも一緒で。ずっと演劇の話とか、シェイクスピアの話とか聞かせてもらったり、させてもらったりして。で、ちょうど同じ時期ぐらいですかね。劇団を二人とも(立ち上げたのは)。
木川:そう。で、たまたま住んでる駅が一緒で、同じ座組にいたから、よく帰り際に中華一番館でさ......(笑)
芝原:そう、中華一番館で!!(笑)
木川:安いハイボールを飲みながら、結構稽古の話とかしてて。
芝原:そうですね。安いハイボールで(笑)
木川:あとはやっぱ、Willow’sとイン・ノートを立ち上げた時とか、ドンピシャ一緒だったっていうのもあってね。あれだよね。僕が三年生の、2019年の4月。4月からスタートして。
芝原:ですね。その後、イン・ノートが立ち上げて。

ーーー同大学の、しかも同時期に立ち上げた劇団の主宰だったんですね。
長いお付き合いだと思うのですが、お互いやお互いの劇団への印象など教えて頂けますでしょうか。


芝原:んー、でも最初始めたとき、僕は流さんの芝居とか演出がすごい好きだったので。シェイクスピアに対する思いや学や愛情の深さとかは、もう、とてもじゃないけど敵わないな、と思ってて。
木川:(笑)
芝原:で、Willow’sがずっとシェイクスピアやってきてたじゃないですか。しかも古典なのに全く革新的というか、自分たちの言葉に落とし込んで、咀嚼してシェイクスピアを再構築してて。それが本当にすごいと思ってたんですね。でも同時に、オリジナルばっかやってる僕とはちょっと考え方が違うな、という思いもあったんですけど。
木川:うんうん。
芝原:時を経るごとに、流さんもオリジナルをやるようになったりとか、僕も、古典......はまだあんまりないですけど、つかさんのやつ(『売春捜査官-熱海殺人事件-』)をやったりとかする中で、どこか根っこの部分が似てるところもあるなーと思ってて。それは演出の表現とか、芝居に対する考え方みたいなものなのかもしれないですけど。

木川:逆に、僕から見たイン・ノート......まず一つは、似てる点があると思ってるんですね。それは、主宰演出をやってる木川流も柴原れいちも、「メソッドを作りながら稽古をしている」というのがあって。
これはイン・ノートとWillow’sで結構似てることかなーって思うんですよね。逆に、大学時代なんかは、相反するメソッドを使ってたから......
芝原:そうですね、そうですね(笑)
木川:そのー......お互いの(現場に出てる)役者同士で、どっちのメソッドのほうがいいんだろうっていう話とか結構みんなしてたんですけど(笑)
芝原:はははははは(笑)
木川:でもやっぱり僕は「組織」っていうものが結構好きだから、組織を作って、その中で自分たちの作りたい芝居の形があって、そこに俳優のスキルを当てていくっていうのは、我々似てるなーって思ってて。
芝原:うんうん。
木川:まあやっぱり、Willow’sは西洋古典、もしくは翻訳劇を専門としてるし、一方でイン・ノートは日本演劇系の戯曲の系譜を行ってる所があって、そこの違いはたしかにあるんだけど。
似てるところといえば、稽古場でのワークから芝居の作り方までが一貫してるっていう、こういう作り方はイン・ノートとWillow’sに共通してる所だし、他の明治大学出身の劇団の中でも特に我々の特色だなと。
芝原:うんうんうん。そうですね、確かに。

■舞台美術は「土」である

ーーーありがとうございます。それでは、二人の演出家から見た、舞台美術の魅力や使い方について。お聞かせいただきたいです。

芝原:面白い質問だな......(笑)
木川:これは......(笑)難しいよね。僕の(担当した)美術って、れいちくんはもう2回目で、逆に僕が美術を立てた現場とかもいっぱい見てくれてるから分かるかと思うんだけど。僕の美術って、「舞台美術」っていうよりは「演出美術」みたいなニュアンスが近くて。
芝原:そうですね、そうですね。 
木川:「この美術をどう使うのか」とか、「どこに役者や観客を配置するのか」「どういう風に劇場を使うのか」みたいなコンセプトを立てる方が多くなるんですよ。なんというか、そういうのが面白いなって思ってるんですよね。で、インノートで(舞台美術を)やるときに気をつけてるのは、まずれいちがやりたいことを尊重すること。次に俳優が動きやすい、ってこと。これをめっちゃ気をつけてますね。

木川:それで、魅力で言うと......美術の魅力って難しいけど、よく例えるのは、「土」。美術は、実は演出より先に動くから。
芝原:うんうんうんうん。
木川:美術が土を作って、演出家が種をまいて、役者が頑張って伸びていって、音響が水を降らして、イメージを作っていって、最後照明が光を当てる、みたいな。それで、やっと一つの花になるイメージ。美術って本当に土のイメージなんですよね。
芝原:僕もでも、今の話に通じるところで言うと、美術は具象舞台も抽象舞台も、両方ともどっちもすごい良いと思うんですけど、共通して言えるのが一個「フィールド」というか、空間を作るっていうことですよね。
木川:うん、うん。

芝原:その場所を提供する......じゃないですけど、役者が使いやすく、お客さんが想像しやすく、物語に入り込みやすくなり、考えられる場所にもなりうる、という。そういう場所を作ることができるのが美術の魅力なのかなって僕は思ったりしますね。
木川:確かにね。で、まあ、うちも......Willow’sも素舞台でやることが多いんだけれども、さっき話してた通り、やっぱり「美術は土」っていう考え方が僕は好きで。(舞台を構成するときに)素舞台である必要があるっていう概念をイン・ノートは持ってるから。
芝原:うん、うんうん。そうかもしれないです。
木川:だから僕、(イン・ノートのプランは)やってて面白いんですよね。「予算を省きたい」とか、「美術で悩みたくないから素舞台に」、みたいな考えだと、僕は何をやればいいですかって感じになっちゃいますから(笑)
芝原:そうですよね、そうですよね。
木川:だから、今回の舞台は結構さっぱりしたものになると思うんですけど、その中でも「役者が使いやすいように」「役者に負担をかけないように」とか、そういう動線的なところとか、あるいはお客さんの目線とかをかなり考えてまして。僕が思う舞台美術の魅力っていうのは、そういう、人にどう使ってもらうかっていうのを考えるところだなって思ってます。

■囲まれた舞台、悩んだ経緯

ーーー今回は変則的な舞台ですよね。客席に舞台が囲まれているという......

木川:本当ですよ(笑)
芝原:(笑)すいません、難しいことをお願いしてしまって......

ーーー(笑)その舞台について、プランを作成された時のこだわりや意図などあれば教えて頂きたいです。

木川:うーん。まず前提として、かなり悩んだ、っていうのはありますね。
芝原:二、三転くらいしましたもんね、ほんとに。
木川:うーん。そうですねえ。
芝原:でも、ほんとに僕の話したコンセプトとか、「こういうことがやってみたいんです」っていうのを汲み取って考えてくださってて。
その度に1から作って、100だったものを一旦0に戻して、また1からになって、みたいな感じでしたよね。「お客さんと一緒にどう楽しむか」とか、「劇場全体でどういう空間を作るか」みたいなのがやりたくて、(流さんとのやり取りの中で)ああいうものが出来上がったんじゃないかなって僕は思ってるんですけど。

木川:ですね。多分だけど、今まで作る美術の中で一番スタッフさんと喋らないといけなくて......(笑)
芝原:確かに(笑)ほんとそうですね。
木川:一旦図面を描いてみて、これから組み上げていって。今日、通しを見させて頂きますけど、まず演出に説明しないといけない美術だと思うし、それから照明さんからも、いっぱい質疑が飛ぶような気がしてます。
芝原:うんうんうんうん。
木川:だからどう使ってほしいのかっていうのを、まずちゃんと演出に汲んでもらわないとうまくいかない美術だと思いますね。今回はその点でいうと結構難しいと思うんですよ。

ーーーしかしその分、意思疎通や共有ができればものすごい効果があると?

木川:効果はあるでしょうね。(モノは)何もないけど迫力のある舞台にはなると思う。あと、うまく使えれば見せやすい舞台だと思うんですね。

■おわりに

ーーーありがとうございます。ちなみに、演出と舞台美術を務める木川さんと、演出と役者を務める芝原さん。どちらも演出と兼任して他部署の仕事をされていることが共通していると思うのですが、それの良さや、あるいは大変なことなどはありますでしょうか。

木川:あれだよね。大学の時にさ、れいちに「演出やるんだったら、なんか一つぐらいスタッフ作業覚えなよ」って話したんだよね。
芝原:そうそうそうそう(笑)
木川:だよね。僕は大学時代、演出より先に舞台美術を担当してて。舞台美術のことを知ってるからそれを基軸として演出をやってたっていうような感覚があるんですよ。
だから良さという点では、俳優の演技以外の所に縋れるものがあるっていうのが、演出としては武器になるなっていう風に思ってますね。
芝原:うん、うん。それでいうと僕が一番縋りたいのは俳優の体でしたね。そのためにはまず身体のことを理解してたりしないと、ちょっと作れないなってこととかが多くて。
木川:うんうん。
芝原:それでいうと、スタッフワークに縋るっていう所と一緒で、僕は肉体表現みたいな所に縋りたくて、で、そのためには自分ができてないといけなくて。だからこそずっと舞台に立ち続けないといけない、って思いで俳優を続けてますね。

ーーーお二人とも、二つの仕事をしているからこそ様々な思考ができる、ということですね。では最後に、お客さまに一言お願いできますでしょうか。

木川:そうですね......じゃあ僕から。「何を舞台美術したんや?」って言われた時に、「俳優の体を美術してるんだな」って思われるような舞台を作りたいなって思っているので、僕はそこを軸にやっていこうかなと思っています。
芝原:普段、流さんは演出としての存在が一番大きいなと思っていて、その方が美術で入ってくれるっていうことのすごさ。この美術を見て、もちろん僕らとかイン・ノートの芝居もそうだし、それだけでなく流さんの演出も好きになってもらえればいいかなって思ってます。ちょうど2週間後......
木川:そうですね。8月末にね。
芝原:王子小劇場で流さん演出の舞台がありまして。そっちもすごい盛り上がってるし、ぜひご覧いただければ。
木川:折り込みも入ってます(笑)

芝原:(笑)ですね、折り込みも入ってます。
今回の舞台はイン・ノートとWillow’s、それぞれの良さが両方包括されて広がっていく......なんというか、交わる点になればいいなって思ってます。
木川:いつかコラボ公演もやりたいですね。
芝原:本当ですね。やりたい!!まあ、あの、もうちょっといくとこまで行って......うちの劇団がちゃんと話題になるくらいになってから(笑)
木川:やりたいですね。僕らこれ、3年くらい言ってる。
芝原:そうですね。ずっと言ってる(笑)今日は本当に、ありがとうございました。
木川:ありがとうございました!

(2024年8月4日/鎌田区民センター 第二第三会議室)
インタビュアー:中川大喜(劇団イン・ノート)
撮影:和中みらい

今週から稽古場は集中稽古期間に入りました。音楽、照明、ダンス、衣装、舞台美術、様々なものが形となり、花が咲くまではもうすぐです。
皆さまのお越しを劇場でお待ちしております!!
そして、今回お話しいただいた木川流さんについて、主宰団体「イマにヒとコヘ(え)」次回の公演についての情報なども以下にございます!
ぜひそちらも併せてご覧ください!

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木川 流(きかわ りゅう)

Willow's、イマにヒとコヘ(え)主宰。演出家、舞台美術。26歳。
明治大学卒業。専門は「組織文化」。
翻訳戯曲の上演を主戦場とする。
シェイクスピア作品の上演を目的とするWillow'sでは『ロミオとジュリエット』『ハムレット』などのビックタイトルをはじめとした六作を手掛けた。当時の観客が楽しんだように作品を届ける独自のスタイルで、劇中の情報操作を主軸とした演出が特徴。
「若手演出家コンクール2023」では不条理劇の大作『The Dumb Waiter』で参加。優秀賞次点とされ、深い読解力と斬新な解釈を評価される。


イマにヒとコヘ(え) 第五創作
『ねぇ、あのさ、』

脚本 花香みづほ
演出 木川流

●公演日時

2024年8月29日(木)〜9月1日(日)

●会場

王子小劇場
(〒114-0002 東京都北区王子1-14-4 地下1F)

●あらすじ

私たちは、辞書を持っている。
誰とでも意思を交わすための「一般辞書」。
より豊かに言葉を扱うための「上級辞書」。
世界や心に響く言葉を扱える、唯一無二の「特別辞書」。

夫はいつも、庭を見ている。彼は私の、知らない気持ちを持っている。
理解するために言葉にしたい。それなのに、辞書を引いても見つからない。
「あの感じ」を正しく表現する言葉は、いったいどこにあるのだろうか?

●出演

カタール
千葉大地
ゆで ちぃ子。
以上、イマにヒとコヘ(え)。

今井未定
柿澤大翔
木﨑さき
北野義隆
神代樹里菜
桜田実和
廣澤雄万(株式会社LEOPARD STEEL)
古野美優(株式会社ホリプロ)

●チケット

一般 ¥4,000
U-22割 ¥3,500
U-18割 ¥1,000

●お問い合わせ

imanihitokohe@gmail.com

●ご予約


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