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いつか身につけるべきことも、いったん見なかったことにする勇気【攻略動画との付き合い方】

4ヶ月ほど前、『GULTY GEAR -STRIVE-』を始めた。人生で初めての格ゲーだ。それまでの格ゲー知識といえば「ウメハラが強いらしい」くらいで、本当に右も左もわからない状態だった。それが今はランクタワー7-8階。ぼちぼち中級者くらいにはなりつつある。(……よね?)

8階に上がれたときはめちゃ嬉しかった

ありがたいことに、現代は攻略情報に溢れている。「ゲーム名」+「初心者」みたいなワードで検索すれば、ある程度盛り上がっているゲームなら初心者向け攻略動画がヒットする。ありがとう見知らぬ先生。

しかし、これらの動画を見て、俺は一つの壁にぶつかった。きっと同じ壁にぶつかった初心者も多いだろう。そう、情報量が多すぎるのだ。

コンボ動画一つ取っても、小技始動、近S始動、空中技始動、下段始動、対空始動……。加えて画面中央 or 画面端、ノーゲージ or ゲージ使用。果てはバースト対策がどうの、キャラ限定がどうの……。

立ち回りの話でも、とりあえずこの技を振れ、空中からはこの技で差し込め、相手の飛び込みはこの技で落とせ……。相手の攻撃はガードしろ、フォルトレスディフェンスで距離を離せ、相手のコンボはバーストで中断しろ、ゲージを使って超必を打て、相手のガードは投げか中下段で崩せ……。

初心者向け攻略動画を見て情報過多に陥るのには、大きく2つの要因がある。

第一に、初心者といってもかなりの幅があること。例えば、一言で「赤ちゃん」といっても、まだ首が座っていない子、寝返りを打ち始めた子、座って一人遊びできる子など、色々だ。格ゲー初心者だって、技の性能がわからない人、コマンドが出ない人、コンボができない人……。人によって抱えている課題の質も量も異なる。そのため、初心者向けの動画でも、自分に適した難易度を越えている場合も多い。その動画のうち一部分は自分に合っているが、残りのパートは自分にはまだ早い、ということもある。

第二に、何回にも分けて習得するべき内容を一つの動画で紹介していること。「○分でわかる○○の使い方」みたいな動画は、大事なことを厳選してギュッと濃縮してくれている。この濃縮によって、実際の習得には30分かかる内容でも10秒くらいでさらっと流していく。例えるなら、寝返りの打ち方から、ハイハイのやり方、つかまり立ちのコツ、歩き方まで早回しで教えてくれている。そりゃ一回見ても追いつけない。

公式ミッションにすら、やたらムズいコンボが置いてある

こういった情報過多を解決する方法はただ一つ。情報を切り捨てることだ。全てをいっぺんに頭に入れようとしない。全てをいっぺんに習得しようとしない。いつかは身につけるかもしれないが、いったん見なかったことにする。

俺の場合、最初はP・K・S・HSの4ボタンが多すぎて、対戦中に目的の技を打ち分けるのが難しかった。そこで、とりあえずP・Kの2ボタンの存在を忘れ、S・HSの2ボタンだけをガチャガチャ触ることにした。そうしてとりあえず操作に慣れつつ、S・HSで出る技を知ることを目指した。使い方動画ではほぼすべての技が解説されていたが、半分くらい無視したことになる。

コンボにしても、そこそこ慣れてきてから、近S始動で短いものを一つだけ習得(近S>2HS>HS横イルカ)して、それ以外を全て見なかったことにした。他の始動技や壁割りコンボは後回し。どうしても使いたくなったときに、できそうなものを一つだけ選んで覚える。動画では10も20もコンボが紹介されているが、その中から一度に取り入れるのは一つだけ。今でも基本コンボ動画の内容の大半は習得していない。(伸び代ですねぇ!)

ロマキャンも、対戦相手がロマキャンコンボをいっぱい使ってきて、ワンタッチ当たりのダメージ効率でどうしても勝てなくなってから初めて覚えた。それもまずは、特定の技を当てたときだけロマキャンして、当たったときに完走するコンボを一つだけ覚える(HS横イルカ>赤RC>近S>2HS>HS横イルカ)という形にした。ロマキャンコンボ自体はいくつか紹介されていたが、一旦自分がよく使う技だけで構成されているものを選んだ。

そのときの自分にできる最大コンボ(≠動画で紹介されている最大コンボ)

とにかく重要なのは、今の自分が処理可能な範囲に絞り、それ以外をばっさり切り捨てること。多くから一つを選ぶときは、自分の手が届きそうなものを選ぶこと。攻略動画を見るときには、難しいことは未来の自分に任せる場当たり的思考こそが必要だ。「内容を全て理解しよう、身につけよう」と肩の力を張りすぎない。すぐに活かせるのはほんの一部、むしろ少しでも活かせたら御の字。奇跡的なめぐりあわせでもない限り、動画の内容全てが今の自分にぴったりということはありえないのだから。

また、これは友達や上級者からアドバイスを受けたときも当てはまると思っている。直接もらったアドバイスは、その辺の動画で得た攻略情報より無下にしづらい。けれど、もらったアドバイスが多すぎて処理しきれないなと思ったとき、ちょっと難しすぎるなと思ったとき、アドバイスをくれた方には最大限の敬意と感謝を払いつつ、いったん押入れの奥にしまう勇気もときには必要だ。いつか活かす日は来るけど、それは今日じゃない。明日また引き出すかもしれないとしても、いったんしまう。一番避けるべきは、キャパオーバーなアドバイスをいっぺんに処理しようとしてゲームが辛くなり、モチベーションを下げてしまうことだ。

新しいゲームを始めるのは難しい。知らないことがたくさんあって、その習得に焦ってしまうこともある。しかし、我々は趣味でゲームをやっている。ゲームに意識高く向き合う姿は確かにかっこいいが、それにこだわりすぎるのも健全とは言いがたい。自分自身のキャパに収まるように、ひとくちサイズに切り分けて、マイペースに遊んでいく。ゲームの練習が辛くなったり途方に暮れたりしたら、いったん荷物を下ろして、楽しく付き合っていきたいものだ。

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