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子供とのビワイチに関する一考察

 昨年の今頃、次男と自転車で琵琶湖一周(以下「ビワイチ」とする)をした。
 今から6年程前に長男とビワイチをしたのだが、その頃長男は小学4年で、昨年次男が小学4年になった。父親(としての自覚はいささか足りないが)としては、息子二人を平等に扱うためにはここで次男をビワイチに連れて行かなければならないのだろう。しかし次男の方が嫌がる可能性もあるので一応オファーを出してみたら「二つ返事で行きたいとのこと」との返事があったのでその計画を立て始めた。
 もし僕のフォロワーで、ご自身が自転車が好きで、ご子息ご息女もしくはそれに替わる立場のお子さん、あるいはそういった関係でなくともなんらかの理由で小学生をビワイチに連れて行かなければならなくなった諸兄がおられれば本稿が参考になればと願う。


その1 子連れのビワイチははっきり言ってストレスフル

 ここで言う「子供」は小学生を想定しているが、子連れのビワイチはかなりストレスフルである。巡航速度は一向に上がらず爽快感とはほど遠いサイクリング。我々の想像を遥かに凌駕する子供の視野の狭さと交通法規に対する無知でヒヤヒヤの連続。すぐに喉の乾きや空腹トイレあるいはケツが痛いなどを訴える。飲み物食べ物は携帯できるがトイレなど携帯できるわけなかろう(いや実際にはできるけど…ねぇ?)。
 はっきり言おう。自分一人もしくは気心の知れた自転車仲間とのビワイチの方が余程楽しいのだ。子連れのビワイチの主人公は子供であり、子供のビワイチ遂行のためにあらゆる手段を用いて子供に奉仕するのがあなたの役割だ(つまり子育てと同じだ)。その覚悟がないならはじめからやめておいたほうがよい。ちなみにケツの痛さについては、途中の自転車屋さんでふかふかしたサドルカバーを購入した。

その2 何泊する?

 経験者同士大人同士のビワイチであれば、北湖一周160kmは一日で(つまり宿泊なしで)十分だろう。早朝に出発して、適当に昼食おやつその他補給を楽しみながら日の落ちる少し前にゴールといった按配だろうか。だがしかし、だいたい想像がつくだろうが子連れでは一日は無理だ。連れてゆくお子様の年齢体力性別趣味嗜好などを勘案し1泊か2泊を選択することになる(3泊はまず必要ないだろうと思うが、何事にも例外はつきものだ)。6年前の長男の場合は2泊(守山起点:50km+60km+50km)でまわったのだが、さすがに1泊でいいだろうということになり今回の次男は1泊(近江塩津起点:90km+70km)としたが、結論から言うと1泊で十分だった。しかしこれは「ビワイチ完遂を第一義とするならば1泊で十分」ということなのであり、他にもいろいろ見聞を広めてあげたいというのであれば2泊で、といった具合に選択肢は広がる。

その3 どこに泊まる?

 もちろんどこに泊まってもよいのだが、基本的にはビワイチの公式HPに掲載されている宿をおすすめする。公式HPに掲載されている宿はやはりそれなりに自転車に配慮されている宿であり、そうでない宿がそうではないというわけでは決してないが、今回何も調べずに取った近江八幡駅前のホテルにはなんと駐輪場がなかったのでしかたなく駅前の駐輪場に200円払って駐輪した(駐輪場のおじさんはめちゃくちゃ親切だった)。事前調査不足もいいところだが、公式HPに掲載されている宿はまずこういったことは起きない。ちなみに長男のときに利用した自転車フレンドリーな長浜の宿は、会議室に自転車を置かせてくれた。
 もう一つ理由がある。公式HPに掲載されている宿は、ビワイチルートからのアクセスの良さも多分に考慮されている。滋賀県は、ビワイチルートに関しては多少なりとも整備されておりほぼ快適に走ることができるが、一旦ルートを外れるとクソみたいな道路事情のところもかなりある(とくに大津市と近江八幡市)。先段で述べたが、子供というのは交通法規をほぼ知らず視野も狭くその場での判断力なども期待できないため、道路事情がクソなところでは危険な目に遭うこともしばしばだ。ビワイチルートから外れるほど、お子様の危険性は高まるものと認識されたい。

その4 子供の前を走る?後ろを走る?

 ビワイチルートには基本的に水色の矢印もしくはラインが引かれており、地図を見なくとも快適に走ることができるようになっている。ので、基本的には子供を前に走らせ、大人が後ろから走るというのが安全上もよいと思う。

ビワイチルートには基本青い矢印が描かれ
青いラインが引かれている

 しかしである。ウチの次男は、水色の矢印もしくはラインを追うのに懸命になるあまり、信号を見るのを忘れるという失態を少なくとも本ビワイチ中に3回も犯した。なんたる視野の狭さか。
 また、ペースが著しく落ちる場合、大人が前を走って引っ張ってあげなければならないということもあるだろう。向かい風が強いときはあなたがお子様の風除けになってあげなければならない(忘れてはならない。あなたは下僕なのだ)。このようにあなたが前を走るときも、決して子供をちぎってしまうなどといったことはあってはならない。
 自転車で車道を走るときは、その左側を走る「キープレフト」が原則だ。子供を前に走らせる場合、後ろを走る大人は気持ち斜め右後ろを走るような感じがよいだろう。湖岸道路はビワイチのサイクリストが多く、そのことを心得ているドライバーは自転車を大きく回避して走ってくれる。しかしながら大人であろうが子供であろうが幅寄せしてくるマナーの悪い車というものは一定数存在し、子供はその風圧でふらついたり最悪転倒してしまうこともあり得るし、なにより恐怖感を植え付けてはならない。大人が右斜め後ろを走ることで、ある程度風圧を緩和することはできる。幅を取ってしまって車の邪魔になってしまうが、子供の安全には代えられない。大きく回避してくれる車に感謝しつつキープレフトである。

その5 子供のモチベーションをいかに保つか

 いくら景色が良いとはいえ基本は自転車で走るだけ。子供は飽きやすい。たしかにこちらから「ビワイチに行くか?」と声をかけて「行く」と言ったのは子供の方だ。だから「(自分の発言に責任を持って)最後まで走り切れ!」と子供に言うのは正論には違いないが、そんな正論があっさり通用する程現実は甘くは無い。「もう走れない」という子供をその場に放置するわけにはいかず、なんとしてでも(少なくともエスケープできるところまでは)走ってもらわねばならない。
 そのためには、途中で「食べたい」「飲みたい」と言われたものはすべて飲み食いさせねばならない。それだけでは足りない。

ジェラートが食べたいと言われれば食べさせ
皿そばが食べたいと言われれば
皿そばを食べさせねばならない

 途中寄(って楽しめ)るところをちゃんと計画しておかねばならない。ラ・コリーナ(ビワイチルートを多少外れてしまうが、まだ走りやすい)やジュブリルタンなどのクラブハリエ系の施設は言うに及ばず、昼食などもできるだけ子供の好みのものをあらかじめ下調べしておく。

お菓子の国ラ・コリーナ
訪れるたびにデカくなってゆく

 また飲食関係のみならず、琵琶湖周辺にはアクティビティ関係(カヤックやSUPなど)も充実しており、そういったものもよいだろう(ただしあんまりガチにやりすぎると今度は自転車に乗る体力がなくなってしまうので注意が必要だ)。僕個人的には長浜市にある西野水道(にしのずいどう)が、プチ探検感があっておすすめだ。江戸時代につくられたという手掘りのトンネルで、現地でヘルメットとゴム長靴と懐中電灯を借りることができる。懐中電灯は電池が切れていることがあるので、自分で準備した方が無難だ。あとは、西野水道の近場にはなってしまうが賤ヶ岳のリフトや、鉄道好きのお子さんなら長浜鉄道スクエア、「あのベンチ」や「あのブランコ」などみどころはそれなりにある。

西野水道(にしのずいどう)
想像以上に暗くて狭い。明かりは必須だ
通称「あのベンチ」
基本子供は湖の中に生えている鳥居に
興味を示したりはしない

 こういったさまざまなことをこなして得られる達成感は、たとえば子供が書いた絵日記や作文といったものを通してもたらされることが多い。ビワイチによるあなた自身の達成感ではなく、子供がビワイチによる達成感を表現したものを通して得られる達成感だ。そこに書かれた(あるいは描かれた)ものは、あなたが思っていたことや苦労したこととは違うことかもしれないが、それもまたよいものだ。

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