課題作文「声」
「声」の一文字で800字の作文を書く課題でした。
「声」
「はなはさ〜自炊した方がいいよ、食費浮かしなよ。そしたらさ、好きなことにお金使えるじゃん。」
うるさい。黙れ、黙れ。最初っからアタリ引いてるやつに言われたくないんだわ。こういうこと言う人ってもれなく実家暮らしじゃないですか?既に調味料も器具も揃ってて、二口コンロなんでしょ。4人で1000円に抑えるための自炊でしょそれ。手間とお金考えてさ、1人なら、冷凍パスタ170円の方が安いよ。
と言いたい気持ちをグッと抑えて、「そうだよね、やってみようかな。」と答える。華々しく放送される朝のグルメ番組は、遠い夢の話だと思っていた。入学時、当たり前のように持たれ始めるハイブランドバッグに劣等感と疎外感を感じた。地方に生まれ落ちたこと、親には申し訳ないけど「ハズレ」だなと思う。それでも奨学金をもらって都内に出られたのは、ハズレの中でも十二分にアタリの方だ。
全ての情報は、関東圏・東京に集約されている。留学・就活情報、文化や旅行の話、LGBTQ+だったり外国人労働者だったりするマイノリティの声。数多の経験のチャンスが転がっていて、自分の位置を省みる機会がある。幼い頃からこれらに触れてきた人達はずっと大人びていて、軸がある。どんなに羨んでも、私はこれになれないんだろうな。自炊が出来ないことを指摘され逆上している時点で、お察しだ。
先日のアカデミー賞授賞式で、白人俳優がアジア人俳優を差別していると話題になった。そもそも、白人の目にアジア人は映っていないのだろう。差別するもしないも、昔からアジア人はその位置にいる。白人はアジア人の立場になったことがないから、その痛みを想像することも出来ない。私も常に、無意識裡に差別を働いているのかも知れない。東京に生まれた人も生まれ落ちた地ゆえの悩みがあるのかも知れない。折角ハズレで生まれたのなら、優しくありたい。自分だけ被害者ヅラするのではなく、人の声なき声を想像し続けなければならない。
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