過去の作文
昨年作文の授業を取っていて、週1で書いていたのを比較用として載せます。文章へたっぴだけど、この時よりも成長できるように頑張る。
毎週お題を渡されて、それに従って書く形でした。1・3個目は800字指定、2個目は400字指定だったと思います。
環境
大学一年の夏、SNSで偶然見た動画に衝撃を受けた。こんなに麗しく煌びやかに踊る男性が本当は女性?なんて上品で非現実的な世界なんだ…。これが宝塚歌劇団との出会いだ。
動画の男役は大きな目が特徴的なジャニーズのような顔立ちだった。洒落た音楽にのりタップを踏む彼女。すっかり一目惚れし、翌週夜行バスに乗って兵庫県へと向かった。
ドラマや映画で話題となった「ハイアンドロー」の宝塚バージョンとイタリアの街を舞台にしたショー。宝塚といえば、濃いメイクに独特な発声、バッドエンドを迎える色恋。何となく古臭くて、近寄り難い感じの印象だった。壮大なハーモニーを奏でるコーラスや指先まで揃ったダンスに心躍る。ショーでは流行りの曲も多く使われ、偏見は全て覆された。キラキラの笑顔を向けてくれるタカラジェンヌに心酔し、あっという間に三時間が過ぎた。そこから宝塚一色の生活が始まった。公演のために遠征を繰り返し、家ではDVDを何度も再生した。上京し知り合いのいない自分にとって、宝塚こそが心の支えだった。
今年九月、一人の団員が自ら命を絶った。膨大な職務による過労、上級生からの執拗な暴言などを理由に遺族は劇団の謝罪を要求した。週に十公演こなし早朝から深夜に及ぶ毎日の稽古のみならず、アクセサリーは自作で上級生の手伝いまで行う。メディア出演も控え、睡眠時間は三時間程であったらしい。
十代から徹底的に叩き込まれる、上級生を崇める態度や舞台人としての厳しい規律は「伝統」として宝塚の非現実観を形作ってきた。ファンもそれを美しく正しいものだと感じていた。煌びやかな夢の世界が人を殺した。
夢の世界の住人も同じ人間だ。虚構と現実を履き違えてはならない。劇団には人生を懸けて入団し稽古に励むタカラジェンヌがまだ四百人残っている。彼女らの笑顔を守りながら宝塚を存続させるためには、旧態依然の現状を一刻も早く是正しなくてはならない。
困っていること
「おはよう。この映画が面白かったから見てみてや。」「おはよう。ちゃんと勉強は捗っとる?」おはよう、おはよう。正直面倒だ。
毎朝エセ関西弁でモーニングメッセージ。私も今年で二十歳だし、いくら一三〇〇キロ離れているからと言っても、もう子離れしていい頃ではないか。妹と弟もいるのだから。
私は万年スーパー反抗期少女を父親に決め込んでいた。まあでも親が子供を心配する気もちもわからないわけではない。一通一通丁寧に返すよう最近は心掛けている。父は親世代では珍しく、文面の方がやけに素直だ。
「はなたちには出来るだけ支援してあげたいわけよ。自分がなりたい将来像に少しでも近づけるように。ま、後悔のないように日々を過ごしてくれ。」
中々素直になれない所に、血は争えないなあと思う。
後悔のないように、次は私のおすすめ映画を沢山送りつけてやろう。しつこいくらいに「おはよう。」もつけてやろう。
希望
「はなちゃんの作文、大人みたい!」中学生の頃から何度も何度も言われたこの言葉。当たり前だ。大人が書いているのだから。
成績は常に五位以内。吹奏楽部所属の傍ら駅伝選手に選ばれ、合唱祭の実行委員も務めた。県内トップ校の受験を控え「何でも出来る子」の肩書きを意識的に磨き上げていた。
その重荷は思っていたより首を絞めた。元々何か飛び抜けて出来たわけではない。勉強でさえ一位は取れない。自信がなかった。文章は一番「自分」が出る。本当の私を見せた瞬間、打たれ弱い姿や未熟な考え方が漏れ出してしまう。積み上げたものが崩れる気がして、作文は殆ど父に書いてもらっていた。
高校1年世の秋。本を紹介する授業があった。すっかり書き忘れていた私が取り組み始めたのは、深夜1時。父は仕事で疲れ熟睡している。起こすのは流石に気が引け、どうにでもなれ、と自分の言葉で書き上げた。
震える声を必死に抑えながら、朝井リョウの「どうしても生きてる」を紹介する。「中身が空っぽな自分が嫌でタイトルに惹かれ買った短編集です。『籤』のハズレくじを人生を掛け合わせた話が大好きで…。悩んだ時は『籤を全部繋げてリボンにするのだ。辛い時には包帯としても使える。』の一文を読み返します。」静かな教室。顔が焼けるように熱い。
「河野さん」授業後、担任の小原先生から呼び止められた。「本の話、本当に良かった。聞いていて、涙が出そうでした。」驚いた。あんなに拙い文章だったのに。後日、「あの本買ったよ」と感想を言ってくれる子もいた。
本当は、ずっと誰かに自分を知って欲しかったのだと思う。難しい言葉を使わなくても、突飛な内容じゃなくてもいい。自分に正直に書けば、誰かに伝わるんだと実感した。
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