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泣きっ面に蜂

僕が新卒入社した会社で新人研修を受けていた時に、実際のプロジェクトを想定したケース課題研修というものがあり、僕はそこでプロジェクト・マネージャー役を任されて5人ほどのチームをリードしていました。これはその研修を終えてからの話です。

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ケース課題研修は新人研修の中でもハードなものであり、僕は期間中ずっと夜遅く、時にはほぼ徹夜して作業をしていたため、気力・体力ともに使い果たしてしまい、最終の成果発表後の土日はほとんど寝て過ごしていました。

そして、その翌月曜日は、たまたま新入社員の健康診断の日となっており、そこで第一の事件が起こりました。

健康診断で採血を受けた後、待合室のソファで座っていると、急に目の前が真っ白になり、次に気がついた時には6人ほどの看護師と医師に囲まれて待合室の床で仰向けになっている状態でした。どうも採血で『血管迷走神経反射性失神』というものを起こしてしまい、意識を失って床に倒れこんでしまったようです。

人生で初めての失神を起こしてしまった割には(知らない天井だ…)とか(手持ちのポケモンが全部瀕死になるとこうなるのか)とかくだらないことを冷静に思い浮かべていたことを覚えています。

その日は失神で倒れた際に頭を打ってないかなどを念のため検査するために近くの大きな病院で頭部のCTスキャンを撮ったりと、図らずしもリッチな健康診断へとグレードアップすることになりました。結果としては異常なく、失神も過労によるものだろうという診断が下り、一安心でした。

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健康診断で起きた出来事を直属の上司に報告したところ「心配なので一度面談しましょう」と言われ、その週の木曜日に本社で直接会って話をすることになりました。そして、第二の事件はその後に起こることになります。

木曜日に外部施設での研修を終えた後、上司と面談するため本社に移動しました。面談では上司から研修のフィードバックと無理のない働き方のアドバイス、労災申請の手続きの案内を受け、「何よりも体を一番大事にしつつ、明日からも頑張ってください。」という無難な言葉をもらいました。僕は(この面談の時間って勤務時間としてつけていいのかな)などと思いながら礼を言い、帰路につきました。

面談が遅い時間であったこともあり、早く帰って寝たいなと思いながら帰り道を歩いていると、自宅まで残り20mの横断歩道を半ばまでいったところで道の左側が異常に明るくなったことに気がつきました。そちらに目を向けた瞬間、左半身に強い衝撃を受け、1mほど宙を舞い、横断歩道から車道に押し出される形でヒーロー着地を決めていました。これが乗用車との人生初の交通事故となります。

僕の後ろを歩いていた40代と60代と思われる女性(おそらく買い物帰りの親子)が「キャアァ!」という茶色い声を上げ、僕は(また帰宅時間が遅くなるよ…)と思いながら衝突してきた乗用車の運転手に対して道の端に寄りましょうというジェスチャーをして誘導をし、降りてきた運転手と警察の手配をしました。

警察を待ってる間、なぜか後ろを歩いていた親子が僕と運転手の会話に加わり、「あなた(僕)は何も悪くないわよ!私たち見てたもの!」「あんた(運転手)危ないじゃない!どこ見て運転してるのよ!」と僕の擁護と運転手の批判を繰り広げ始めました。僕が「買い物された食材が痛んでも悪いので帰っていただいても大丈夫ですよ。」と暗に早く帰れと伝えたのにも関わらず「大丈夫!私たちはあなたの味方だから!!」と言いながら運転手を責め続けました。親子に交互に責められる運転手はなぜか僕ではなく親子に謝っていました。僕に謝って欲しかったです。

警察が到着し、目立った外傷はなかったものの念のため救急車が呼ばれ、病院に運ばれた僕は左手首の捻挫と左膝の打撲と診断されて1日安静するように指示されました。

面談から1時間ほどしか経っていない中で上司に報告するのも気が引けたのですが、黙ってるわけにもいかないのでメールで車に轢かれて翌日の金曜日は研修を欠席する旨をメールしました。程なく携帯に上司から着信があり、出てみると

「嘘でしょ??」

と開口一番に言われ、僕も同じ感想だなぁと思いました。

詳細な状況を報告し、大事には至らなかったことを伝えると、とりあえず休んで回復に努めるよう言われました。こうしてこの1週間で新入社員の中で一番の問題児となりました。僕は悪くないと思うのですけども。

僕が新人研修で誰よりも深く学べたのは、労災申請の仕方でした。

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後日談ですが、僕を轢いた運転手はWikipediaに個人ページがあるくらいのラジオDJでした。治療費として8,000円貰えました。もう少しくれても良いんじゃないかなとは思いました。

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