莉音の選択
「ねぇ、今日の放課後、時間ある?」
教室の片隅で、僕は彼女に話しかけられた。クラスの中心にいつもいる、目立つ存在の莉音。彼女の姿は、いつも華やかで、クラスの男子たちは皆、彼女に目を向けていた。僕とは住む世界が違う、そう思っていたけど、なぜか最近、僕に声をかけてくることが多くなった。
「うん、特に予定はないけど…どうしたの?」
自分でも信じられないほど自然に返事ができたけど、内心はドキドキしていた。莉音が何を考えているのか、何を望んでいるのか、まったく予想がつかない。
「ちょっと付き合ってほしい場所があるんだ。待っててくれる?」
彼女は意味深な笑みを浮かべてそう言った。僕は断る理由もなく、頷くことしかできなかった。
放課後、学校の裏庭で待っていると、少し遅れて莉音が現れた。シャツの上から羽織ったカーディガンが風になびき、その姿はどこか大人びて見えた。
「待たせてごめんね。」彼女は軽く謝り、僕の隣に座る。
「全然…大丈夫だよ。でも、どこに行くの?」
「ねぇ、将来のこと、何か考えてる?」
急に話題が変わり、僕は少し戸惑った。将来…?そんな大きなことを考える余裕なんて、僕にはなかった。ただ、目の前のことをこなすだけで精一杯だ。
「正直、まだ何も考えてないよ。でも…莉音は何かあるの?」
莉音は少し黙り込んで、遠くを見つめた。そして、ゆっくりと口を開く。
「私ね、今の自分が好きじゃないんだ。」
思いがけない言葉に、僕は驚いて彼女を見つめる。莉音は学校では人気者だし、外見も誰もが羨むほど美しい。そんな彼女が自分を好きじゃないなんて、想像もつかなかった。
「なんで?莉音は皆に好かれてるし、なんでも持ってるじゃないか。」
「それがね、全部…嘘みたいに感じるんだ。みんな私を見てくれるけど、本当の私を知ってる人なんて、誰もいない。自分でも、本当の自分が何なのか、分からなくなっちゃった。」
彼女の言葉に、僕は何も言えなくなった。普段は明るく振る舞っている莉音が、こんなにも孤独を感じているとは思っていなかった。
「でも、君は違うよね。」莉音が急に僕を見つめ、その瞳に不安と期待が交錯しているのが分かった。
「え、僕が…?」
「そう。君は、私の外見とか、人気とか、そういうのに興味がないでしょ。いつも冷静に見てる。だから、青木くんだけには、本当の私を見せてもいいかなって思ったんだ。」
その瞬間、胸が熱くなった。まるで自分が特別な存在になったような気がした。けれど、その裏には、彼女の本当の苦しみがあることを理解しなければならなかった。
「莉音…」
僕が何か言おうとした瞬間、彼女は静かに微笑み、立ち上がった。
「ごめんね、こんなこと言っちゃって。別に重く考えないで。行きたい場所、まだ教えてなかったね。ついてきて。」
莉音は軽い調子で話題を切り替え、僕を案内した。
連れてこられたのは、学校の屋上だった。夕焼けが空を染め、二人だけの特別な空間がそこに広がっていた。
「ここ、私の秘密の場所なんだ。誰にも教えたことないんだけど、君なら大丈夫かなって。」
彼女は少し照れたように笑った。その笑顔が、どこか儚くて切なかった。
「どうして僕なんかに…?」
「分からない。でも、君には安心感があるんだよ。一緒にいると、何も隠さなくてもいい気がする。」
莉音は僕の隣に腰を下ろし、手を伸ばして夕焼けを仰ぐ。
「青木くん、私はこれからもずっとこの学校にいるつもりはないんだ。どこか遠くへ行きたいって、ずっと思ってる。だから、ここにいる時間も限られてるかもしれない。」
彼女の言葉に、胸が締め付けられた。遠くへ行く…?僕と過ごすこの時間は、そんなに長く続かないということなのだろうか。
「でも、それでも君と過ごしたい。今だけでも…君と一緒にいたいんだ。」
莉音の言葉は、まるで別れを告げているかのようだった。僕は何も言えず、ただ彼女の隣に座り続けた。
夕日が完全に沈み、夜の帳が降りる頃、莉音は静かに立ち上がった。
「ありがとう、青木くん。今日ここに来てくれて。忘れないでね、この場所で話したこと。」
僕は無言で頷き、彼女を見送った。彼女の背中が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。
次の日、莉音はいつも通りクラスの中心に戻っていた。明るく、みんなに囲まれている彼女の姿は、昨日の彼女とはまるで別人のようだった。
けれど、僕だけが知っている。彼女の孤独、本当の彼女の姿。そして、いつか彼女が遠くへ行ってしまうかもしれないということも。
その日から、僕は屋上に通うようになった。そこは、彼女との唯一の繋がり、そして彼女の本当の姿に触れられた場所だった。
莉音が去るその日まで、僕はきっとここで彼女を待ち続けるのだろう――何も言わず、ただ、彼女が戻ってくるのを信じて。
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