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学園祭が中止になった話。

学園祭が中止になった話

 この話を書きたいがためにnoteを始めたといっても過言ではなく、全国の大学でも、同じ経験をした学園祭実行委員会は多いんじゃないかと思う。さすがに時効でしょ、と思ったので忘れないうちにあの時の記憶を書き留めておきたいんです。このnoteは、全国の学園祭実行委員会の人たちの目に少しでも届いてほしい。そう思って書いています。

憎き台風

 昨年度は過去最大とかいう台風が二回も来た。過去最高が二回って、もはや何って感じだけど。
 名前まで覚えてる。台風15号ファクサイと、台風19号ハギビスだ。
 関東圏を中心に、二つとも甚大な被害を及ぼした台風だが、これらは狙いすましたかのように学園祭シーズン真っ只中の週末に直撃しました。
 弊学においては、結果として2日間あった学園祭は両日とも全面中止。JR東日本の計画運休の発表が決め手でした。

学園祭の準備

 これは学園祭の実行委員にしかわからない話かもしれないけど、大学の学園祭の準備って本当に大変なんです。学内のサークルの人たちは、もちろん多くの人たちはとてもいい人ばかりなんだけれども、やはり厄介なことを言ってくる人たちは少なくない。資料の提出期限に間に合わないのは常で、そのたびに、こちらからメールをしなければいけない。「○○さん、提出期限過ぎてますけど、大丈夫ですか?」

 もちろん、これが企業と顧客なら話は別だと思う。提出期限を過ぎたのは向こうのミスだから、こっちが何かしてあげる必要はない。でも私たちは学生同士のやりとり。先方のミスだからといって何もしないで、あとでさらっと提出して来た時に、「いや、期限過ぎてますから」というと、逆ギレでSNSやTwitterでたたかれることもしばしば。そんなことゆうてもな、あんたが悪いねん。

 なにより私たちはすべてボランティアなんです。とは言え、好きでやってることではあるから、尊敬してとかそうは言わないけど、すこし優しくしてくれてもいんじゃない?とは思う。(あくまで弊学では)委員は一銭もお金もらってない。むしろ部費とかでお金だしてるんだから。
 何度も言いますが、中には毎回労いの言葉をかけてくださる教職員、学生の方々も多く、とてもありがたい気持ちでいっぱいなんです。ただ、ただ、ごく一部の心無い教員や学生の一言に私たちは酷くつらい思いをたくさんしてきました。気にするなと言われても、メールというのは文面で残るため、どうしても脳裏に焼き付くものです。はっきりとね。

すべての苦労、水泡に帰す

 こんな思いをしながらも、なぜ私たちは一所懸命に準備をするか、それはただ只管に学園祭当日が楽しいこれに尽きます。人がたくさん集まる中、運営をしている達成感、楽しそうな来場者や、学生の顔をみるのが本当に楽しいんです。準備の苦労も、全部吹き飛びます。この2日間のためだけに一年間頑張ってきているといっても過言ではないです。

 そして来る当日、台風ですべてが中止になりました。準備してきた苦労、手作業で判子を押した1000枚を超える書類、運営方針で仲間とぶつかって言いあったりしたすべてが無駄になったのを思うと、本当になんとも言えない気持ちになりました。でも悲しんでる暇なんてなかったんです。それより先に学園祭の後処理をしなければいけなくなりました。学園祭当日に、外は大荒れの台風の中、一人家で後始末を始めるわけです。

中止の後始末

 泣きっ面に蜂というやつで、私たちの作っていた規約といった書類の多くは、学祭が完全中止になるということを全く想定していなかったんです。主に金銭的な面で、かなり苦労をしました。致し方ない理由での中止による、来場者側が支払った額の返金ということを一切考えていませんでした。本当に甘かった。台風だからと言って、お金を払ってくれた人たちが「返金については何も書いてないけど、お金はいいよ」なんて言ってくれるはずありません。当然です。

 著名人をお呼びする企画においては、その参加予定者から「実施しないなら損失もないだろ!金返せ!」とまで言われもしました。そんなわけないでしょう?キャンセル料ってご存知ですか?100%に近いキャンセル料を吹っ掛けられたとの話も聞いています。学生団体というのは非常に弱い立場です。勝てるわけがない。

 学生団体にも、かなり文句を言われもしました。中止判断が遅い、逆になんで両日中止にしたんだ、二日目はできたかもしれない等々、全部、全部覚えてます。中には、「英断だ」などの言葉も頂戴しました。でもそれと同じくらいの、謂われのない誹謗中傷、怒気を孕んだメールをいただきました。それによって傷つく仲間もいました。一番ショックを受けてるのは私たちでした。間違いなく、誰よりも。もちろん、例えば歌やダンスを披露する団体が、この学園祭で3年が引退なんだとか、そういう事情があるのも知っていた。知ってたからこそその場を提供したかった。わかってたのにできなかった。もう、誰も悪くない。全部台風のせい。断じて私たちのせいではない。

難しい中止判断

 もっと早く中止判断をすれば、ともお思いでしょう。でも台風が発生した2週間前ほどの状況でやめる人はいません。意外と逸れたりしますからね。でも一週間くらい前になると背筋がソワソワしてくるわけです。「あれ?なんかこれヤバくね?」

 そこから一週間は地獄のようでした。幹部の人たちが集まって、会議をするわけです。いつ中止判断を下すか、について。幸か不幸か、弊学の大学当局は中止の判断を最後まで委員会に任せました。言葉というのは面白いもので、ポジティブに捉えれば、学生主体の学園祭という点を尊重してくれたのでしょう。悪く言えば、無責任ともいえます。当時はいっそ首を絞めてくれと思いもしましたが、今となってはありがたく思っています。自分で自分の首を絞めたほうが、後悔は薄かったでしょう。

 私は、いわゆる幹部の端くれでしたが、その話し合いのみんなの表情が怖すぎて、一人ひたすら、開催可否についてのお問い合わせメールを書いていたのを覚えています。「まだ決まっていません」ってね、中止決定会議の中で。

 中止判断は、直接下したのはもちろん私ではなく、もっと偉い人たちでしたが、よく中止にしたなぁとは今振り返っても思います。大学当局から言われるわけでもなく、自分たちで、自分たちが一生懸命、一年間かけて作ってきたものを壊すって、なかなかできることじゃない。本当にすごいなぁと当時は尊敬しました。頭ではわかってても、口に出すのは、実際に行動に移すのはためらってしまう。まさにそんな状況でした。

 不思議と開催中止決定の直後はなにも思わなくて、ただ普通に団体さんの対応をしていました。本来は開催してたはずの二日目だったかな、やっと実感が湧いてきて、家で一人泣いてました。友達に電話したら、友達も泣いてました。そういうもん。

なぜ今この文章を書いているのか

 なぜ今、それはこの今の環境が、同じ思いをする学園祭実行委員会が増加させると思ったから。

 Covid-19の影響で、もはや学園祭は窮地に立たされている。一学園祭実行委員としては、今年度中の実施はかなり難しいと思う。まず対策が難しい。密を避けろというが、学園祭の活気は密あってのものだ。入ってくる人たち全員の体温を測定し、アルコール消毒をさせるのはかなり厳しい。人数調整というのも、ちょっと現実味がない。

 また屋外での模擬店等は、対面販売が基本ですが、飛沫飛散を避けるために飛沫防止シートを設置すると、今度はその可燃性や、費用の問題もでる。また、商品受け渡し時には毎回毎回消毒を促すのだろうか?そのアルコールの費用はどこから出るのか?実行委員会側で出せるのか?弊学のように、資金繰りが芳しくない団体だと、全団体分調達するのはかなり難しいだろう。考えなければいけない対応策が本当にたくさんある。

最後に伝えたいこと

 まず、学園祭を控えている実行委員会は、今すぐにCovid-19の対策を考えるべき。まだ先だからとさぼっていると、もしかしたら手遅れになってくるかもしれない。すでにいくつかの大学では学園祭が中止になっているが、今後夏休み以降に開催を控えている大学では、そもそも開催するのか、さらに開催時の対策はどうするのか、について考える必要がある。

 そして一番声を大にして言いたいのは、中止になった時のリスクマネジメントをすること。弊学は昨年度の状況を鑑み、契約時に交わす書類に関してかなり厳重に再考した。他の人たちは規約なんて長ったらしいものは読まないかもしれないけど、でもいざというときに頼れるもの。自分たちの身を守るために、オフシーズンすべてを使って盾を拵えた。今この状況においても、どう転んだとて幾分か余裕をもって対応できるだろうと思っている。

 もしかしたらあなたの学園祭実行委員会の契約に関する書類には、穴があるかもしれない。それをしっかりと確かめてほしい。今となっては契約は済んでいて手遅れかもしれないけど、やれることはあるかもしれない。特に金銭関係についてはしっかりと確認することをおすすめします。

どうか同じ苦しみを味わう人がいませんように。

※弊学においては最終的に大学当局のご助言により、金銭面においてもかなり負担が軽くなりました。大変感謝いたしております。全国の実行委員会の皆々様が、大学当局とどういった協力関係で成り立っているのか、詳しくは存じ上げませんが、弊学においては平時はほぼ、実行委員会にお任せいただき、難しい局面では大いにご支援いただいております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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