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【「遷」を振り返るvol.1】フロリアン・パリアー: 《ギターのためのソナティナ》 (岡本 拓也)

2020年に公開された、initium ; auditorium最初の特集「遷 [sen] | transition」の出展作品を振り返るnote企画です。

概要

このたびウィーンのギタリストで作曲家、フロリアン・パリアーの《ギターのためのソナティナ》を日本で初公開できることをとても嬉しく思います。今回の企画には、これまで一晩のコンサートに共存しなかったような作品たちが並んでいます。それもオンライン音楽美術館(auditorium)の面白さではないでしょうか。この美術館は今後多くの人と作品の「出会いの場」になることと信じております。(岡本 拓也)


出演アーティスト

岡本 拓也 (ギター)

プロフィールは下記をクリック!


プログラムノート

Florian Palier 《Sonatina for guitar》

この作品はオーストリアの詩人リルケ(1875-1926) の詩に感銘を受け書かれました。3楽章ともにテーマとなる詩があり、どの詩も「時の移ろい」という概念が重要な素材となっています。

リルケの時代の音楽、後期ロマン派音楽の和声法、それからパリアーの得意とするジャズやロックの音楽的要素にはどちらも「それまでの伝統の崩壊によって形作られる」という共通点があり、パリアーは同じくウィーンで確立された12音技法も交えながらそれらを即興的に融合することで、詩の世界観を現代において立体的かつ鮮やかに音楽作品として再現しました。

1楽章はコンパクトなソナタ形式。テーマは12音からなり、楽章を通してどこか落ち着かず、荒廃感あるキャラクター。
2楽章になるとこれまでと対照的に静けさの中で常に鳴り響くEフラットが印象的。単旋律で出現するメロディーの音の数はリルケの有名な詩《黄色なる薔薇の花》の単語数に合わせて作られており、反復する和声進行は詩のテーマにもなっている「憂鬱」「痛み」「衰退」を表しています。

3楽章は活気に満ちた無窮動のロンド。解き放たれたエネルギーが渦巻き、ロンドとはいえテーマも徐々に変わっていく。


プレビュー


完全版はinitium ; auditoriumサイトから!


編集部コメント

まず1楽章を聴いて「12音技法がこんなにエスニックな響きとして聴こえるのか!」と驚かされました。 緩徐楽章となる2楽章では、指板のあたりで弦を弾く音が目立ち、音質の違いに注目すると同時に、楽譜上どのように記述されているのだろう…と興味を持ったことを覚えています。
サンプル動画は3楽章の終わりにあたる、曲のクライマックスとなる部分を切り抜いたものなのですが、1楽章から聴いていくとその部分の格好良さが一層引き立ちますね。無窮動ゆえに音楽の高まりを一層感じさせる3楽章、圧巻でした。言葉では伝わらないのでぜひ聴いてほしい…


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