
HIGHSPEED Etoile
正直なところレース物としての出来はMFゴーストやグランツーリスモの方が面白いし見る価値が高い。
何が面白いのかと言うと奇抜なデザインと設定とレースアニメを作ろうという魂。
「次世代レース『NEX Race』。 最高時速500kmオーバー。AIのサポート。」という舞台設定がどれだけ活かされているかというと、大して活かされてないように見えるのである。
シリーズ中では#7[幸運の女神]が一番面白い。レースをやっている所がよくて、勝負は時の運もあるというエピソード。
とにかくこのシリーズは1クール前半でレースが少ないのである。主人公がクイーンとキングが絡む話などそれぞれ1話使う意味を感じなかった。端折ってもいいと思うほど話が締まらない。キャラ立てと物語の背景を抑えておこうというのは分かるがそれなら他にもやりようはあるように思う。まずはレースを見せてほしいし、レースに入ってのし上がっていく流れを丁寧に描いてもいいはずで、それならレースに参加するいきさつから描いてもいい。主人公自体才能で走ってる奴だからリアルなエピソードは不要だし、映画「グランツーリスモ」の突き抜け方を見習ってもいい。あれで2時間強だから半クールぐらい、それであそこまで出来るけど…。映画とTVシリーズは別物だし、視聴継続率が問題なのも分かるけど?
そのレースがどういう位置づけなのか、観客の姿も見えてないし、世界で熱狂されてるレースという演出だって時折しておいたらいいのに、キングにサインを求めるシーン程度しか思い出せないし、演出意図も違うから効果はない。
このアニメの方向性からして複数のキャラを立てていくというスポンサー、企画側の要求もあるのだろうが、そもそも面白くなければ意味が無い。
個人的には視聴者がチームのファンになってもらえる程度にはレース的な物を演出してほしいし、レースでどういう戦いが起きているのか分からせるところも欲しい。意味不明でも解説して盛り上げてほしいよね。
雨になってウェットタイヤ出てくるんだけどさ、サイバーフォーミュラだったら布石を置いて解説入れて見せ場らしい見せ場作ってたのではと思うんだけど、でもそれはリアリティへの寄せ方でも変わるのでやり方は違うかもしれないけど、ただ面白さが突き抜けない感じが残る。
レースをやりながらマシンの個性についても深堀できそうな気がするんだけど、MFゴーストは実車ベースで語りやすい面もあるが、架空のマシンだからこそ語らなければリアリティが生まれないということに気を使うべきで。
あの映像だけで十分語れているとは思えず…。
リボルバースト使用時の変形なんだけど、カメラワークもっとくどい凝り方してもよかったのでは?
仮に変な凝り方をしてくどいって言われたとしても、放送されたような固定で寄り過ぎな感じではつまらなかった。実際のレースなら車載カメラ感あるかもしれないけど、MFゴーストはドローン撮影ってしつこくやってるのも意味があったんだなってHIGHSPEEDEtoileのカメラの詰まらなさを見て感じた。言うてただのF-1になってるのよ。SF感が無いのよ。こちらとしては近未来SFレーシングだと思って見てるんですけど…。
いつものアニメの文法に沿ってキャラクターが優先されてるから良くないと思うんだけど、そうじゃなくて、キャラクターを優先して面白いストーリーが作れていないことが問題なのよね。キャラクターデザインもメカデザインも良い所があるので見た目じゃなくてリアリティのある中身をもっと演出してほしかったな。
やはり1クールの限界を感じるよね。サイバーフォーミュラのようなムーブメントは作れないよ。今ならもっと計算して作れそうだけど。まぁそれなら別な物を作ってるか。
いっそのことフレースヴェルグをパクってアニメ化した方が面白いと思いますね。F-1のような半端なSFレースになるくらいなら、SFアニメとして作った方が突き抜けて清々しい。デザインも合ってるし。
でも黒いキャノピーってダサいかも。CG使いながら中身描かなくていいから楽できるとか考えてたとしたらセンスがないかもしれない。絵としてつまらないし、省力化を考えつつも見せ方を考えていくのが演出の仕事だと思うし。
追記:
最後のレースが大阪夢洲ってセンスの無さが光ってる。マジで。企画した時は万博盛り上がってると思ってたのか、政治的センス情報収集能力などが皆無だって分かるね。維新がリングを作るって前からもう危険信号出てたのに。所詮量産アニメ屋の仕事とはいえ、もう少し何とかならないのか。クソッタレ維新の計画は万博終了後にリングは撤去され跡地には反対の多いクソッタレカジノが建設される予定だ。それを知ってか知らずか、くそったれ万博リングのある埋め立て地にサーキットを拵えてる。(クソッタレは下品だが作中でキーワードになってるので嵌めてみた。)
文芸が死んでる。
追記2:
主人公の立て方見せ方がいまいちなのは何故なのか。きゃぴきゃぴギャルギャルしてるからなのか。そんな単純な話ではない。演出によってキャラクターの存在感をいかに増すことが出来るか、逆にどうしたら存在感が薄れるのか。視聴者の視線を誘導するかのごとく意識に何かを一つずつ植え込んでいく。周囲のリアクションをどう見せるか。そのベースになるレースのつくり込みが甘いんじゃないかってなるよね。
イニDとかMFG見てると主人公が寡黙で周りのリアクションから存在感を浮き立たせてるのは分かる。(主人公のドライビングに対するリアクション)それらのタイトルは主人公が最初から完成されたドライバーだからそれで成り立つとも考えられる。こちらの主人公は新人でこれから成長して才能を開花させ活躍していくという筋立て。主人公の性格があるとしてそれをどう活用するか難しい舵取りが迫られるんですね、というか主人公を売るために映してるぐらいの感覚はありそう。しかしあのいかにもアニメの女の子という性格のキャラクターをどうやってレーサーとしての存在感とレースの緊張感を作るといいのだろうか、稀有な才能が新天地でハマって一足飛びに勝つってことをやりたい?
そういえば主人公のエトワールという設定も影が薄かったな。それならエトワールを誇張してオーバーラップさせてくるものじゃないか、気配を感じられなかったぞ。死に設定ではないのか。エトワールへの洞察も低そうだ。
しかし雇われ監督からしてみれば上から降りてきた企画意図に沿って手堅く仕上げていかないといけないか。事故は避けないと。
もう一つはレース中にべらべら会話するのもおかしいところ、しかし内心のモノローグをやるかAIと会話するかぐらいの幅で。AIとの会話で進行するのはサイバーフォーミュラで上手くやってるんだからできる。もしその世代が作ってるならもう少しうまくやれって思うけど。設定盛り過ぎ、キャラ盛り過ぎ、進行を急ぎ過ぎで話作りがブレ過ぎなんじゃないか。勿体ないな。
実況アナウンサーがお堅いってのは実況の扱い難しいよな。MFGとかはあれで適度に背景になるように抑えられてるよね。不思議なものだけど。
バラエティ路線で良かったのでは?