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大人の休日

古本市に行ったことはあるだろうか。

誰かにかつて読まれ、もう読まれなくなった古本が所狭しと台に並べられている。

ちょっと見ながら通り過ぎようのつもりが、いつのまにかあの本はあるか…ときょろきょろと物色し始めてしまう。

こないだたまたま通った商店街で、絵本の古本市をやっていた。

普通の本と違い、視覚的に懐かしさを感じられるのが絵本だ。
誰に許可を取るわけでもないが、ちょっとだけ、と吸い込まれてしまった。

エルマーの冒険、こんとあき、ぐりとぐら、かいけつゾロリ…

絵本は新しいものもあるが、もう何十年も読まれてきている、所謂不朽の名作みたいなものもある。

一冊、懐かしい本があった。
スーホの白い馬。国語の教科書に載っていたと記憶している人も多いのではなかろうか。

読んだのは小学2年生くらいだった気がする。
表紙を見て見覚えはあったものの、内容をほぼ忘れていた。
馬飼ってた青年の話だよな、程度だった。

久々に読むと中々な内容である。
以下、ネタバレを含むのでスーホの白い馬をまっさらな状態で読みたい方は閲覧注意だ。

***

ある羊飼いの少年スーホが、ある日仕事に出かけた先で捨てられた仔馬を助けてくる。年月が経ち、大事に育てたその馬は立派な白馬に成長した。
ある日、王様が娘の結婚相手を決めるために競馬大会を開くということで、青年になったスーホはその馬と出場し、ぶっちぎりで優勝する。
しかし王様は娘と結婚させるどころか、銀貨3枚で白馬を寄越せと要求する。スーホが拒むと、ボコボコにされた上、結局馬は奪われてしまう。

数日後、王様が馬に乗ろうとすると、馬は暴れ出し逃げ出した。王様は怒り馬を殺すよう家来に指示する。
命からがらスーホの家に帰ってきたが、傷だらけでそのまま息絶えてしまう。悲しみにくれたスーホだが、ある夜、夢の中にその馬が現れ、自分の死体を使って楽器を作るように言う。それで作られた楽器が馬頭琴というモンゴルの民族楽器になった。

***

というお話だ。

昔は主人公に自分を重ねるので、当然、環境が違うだけで自分も主人公と同じような人間性と行動力を備えていると錯覚する。

大人になると、この主人公たちの人間力の凄さが分かってくる。今の自分と比べたらどうか。

まず、今の仕事が大変なのに新たな仕事(仔馬を育てる)を取ってこない。しかも直接自分の利益になるわけでもない。

そして、今の自分の立場を完全に捨てて、新たな環境に挑戦する勇気もない。(王様の娘との結婚)

スーホがどんな意図でこの競馬大会に出たのかはよく分からないが、当然、出場するのに仕事も休み練習しただろうし、そのコミュニティから離れるかもしれないことへの周囲の説得もあったはずだ。そこまでの覚悟を持って挑戦する度胸と、優勝する自信、王様の娘と結婚しようとする野心。

どう考えても、ただの心優しき青年ではない。
この時点で自分とはだいぶ違う。

そして一番はやはり、王様に歯向かうところだ。
自分は上司、先輩、力のある目上の人のやり方、要求に対してNOはなかなか言えない。

ましてや王様のような口答え一つ許されない相手であれば尚更だ。

自分や自分の周りの身を守る為なら、多くの人は強者に従うことを選択してしまうんじゃないだろうか。

子供の頃はそれでも、自分もスーホと同じこの選択を取れる、と思っていたのだろうか。主人公の答えが正しいと思っていた頃は、そんなことは考えなかったかもしれない。

今ならスーホという人間について論文が書けるな。
大人になってたった十数ページの絵本について思いを馳せることがあると思わなかった。

しかしこのくらいの分量であれば共有しあえるし、大人目線での考察をするのもなかなか楽しい。そこで新たな発見、教訓を得られるかもしれない。

自分のために一日中絵本を読み漁る、そんな大人の休日があってもいいかもしれない。

おわりに


今週は生糸が担当しました。

先日、二人で始めるpodcastのタイトルを、候補を出し合いながらついに決定しました。
着々と配信の準備が整ってきております…

またとうとう20代も折り返し地点を過ぎてしまい、次の節目に向けてどんな人生を送ろうかとふと考えてしまいます。

そんな赤裸々な思いもいろんな形で出せれば良いのかなと思っています。

まじめに後書いてしまいましたが、週末真剣に絵本を読んでいたアラサーだと思って、気軽に仲良くしてくださいませ。

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来週はおリンが担当します。
お楽しみにー!

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