〜「イマ」の正体〜 『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2期 第11話』感想
はじめに
第11話は、同好会の「イマ=現在地」を再確認し、未来を見据えていく物語です。
メンバーが増え、叶えたい夢も増えていった。
その中でさえ、いつだってアクセルを全開にするのが同好会の姿勢でした。
しかし、ここで1度立ち止まって、部活ではない同好会の「イマ」を振り返る機会が訪れた。
ここで改めて「同好会とは何か?」を再確認することで、13人全員がこれからも一つの「有機体」として進んでいくのです。
それと対照的に描かれるのは、変化をしていく一人ひとりを見て、「去っていく者」としての立場を考え始めるメンバーの姿でした。
……
それぞれの夢と幸せを叶えるための物語も、いよいよ(感動の)フィナーレが近づいてきました。
第11話は、そのフィナーレのための、いわば想いの最終確認の回だったと言えるでしょう。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会とは何なのか?
そして、
同好会の「過去・未来・イマ」とは何なのか?
それを、共に解決していきましょう。
スクールアイドル「部」
まず最初のトピックは、「スクールアイドル同好会の部への昇格」です。
部になることで、様々なメリットが当然ありますし、何よりもラブライブ!への出場が叶います。
確かにラブライブ!はスクールアイドルなら誰しもが憧れる夢の舞台…ですが、同好会が最初に決めたこととして「ラブライブ!に出場しない」がありました。
それはかつて、中川菜々と優木せつ菜という2つの顔を持っていた人物に対して、侑が放った
「だったら、ラブライブ!なんて出なくていい!」
という言葉が発端でした。
「ラブライブに出られるなんて美味しい話じゃないか!」と言わんばかりに、ここでいきなり方向転換して出場!なんてことになったら自分はこれまでの評価を全てひっくり返すところでした。
しかし、出場しない気持ちが変わっていなくて良かったですね。
ただ、部に昇格することで他の「美味しい話」があるのも事実です。
普通なら「スクールアイドル部」になるところでしょうが、今ここで13人の総意、つまり13人にとってのスクールアイドル「同好会」への想いが問われたのです。
これは、13人にとってのスクールアイドル同好会とは何なのか?という問いと同じです。
では、その答えとは?
……
定期試験は、学生にとってつきものです。
ここで赤点を取ってしまうようでは本末転倒、同好会以前に生徒としての立場が危うくなってしまいます。
お世辞にも頭脳明晰なメンバーが多いとは言えない同好会においては、「協力しあうこと」が重要になります。
これは、ただ協力しあうのではなく、強烈な個性を持つメンバー同士の関係性を深める行為であり、同好会が13人の有機体として成立するための重要な営みでもあります。
これまでの同好会、特に1期は「それぞれ」に注目してきたわけですが、ユニットも結成された今、「みんな」のために力を発揮することが求められるのです。
これは、「個→全」という虹ヶ咲アニメ全体を通しての大きな流れに沿っていますし、ある意味ではSIF(スクールアイドルフェスティバル)と似たようなことです。
……
部になったら、より大きなこと、新しいことができるかもしれません。
同好会の「過去」においては、ソロ活動が中心で、もちろんユニットを結成することもありましたが、みんな揃って歌ったりするような、いわゆるラブライブ!らしさはあまりなかったでしょう。
しかし今、同好会ではなくて部になることで、グループで大きく活動することができるようになるのではないか?と部長たるかすみが考えるのは当然のことです。
……
その一方で、嵐珠はある意味自分中心であり、周りを見て活動するということの反対側として存在していました。
ラブライブ!に出場するというのは、嵐珠の「過去」と真逆の道を歩むことでもあるのです。
しかし、出来ないであろうことを出来るようにするというのは、ある意味で成長そのものです。
こうして仲間達が肯定し、応援してくれるのが同好会の良さでしょう。
それぞれが個性を持つ人間として、お互いがお互いを高め合う存在であると同時に、お互いがお互いの成長を願っていくのです。
……
勉強会の後、部への昇格を決める時が訪れます。
最初にも述べましたが、これは単純に「同好会を部にするのかどうか?」という形式的な問いではなく、同好会のメンバーそれぞれが同好会に対して抱いている想い、それぞれが同好会で何をしたいのか?を自分自身に問うものです。
そして、それを再確認した上で、決断をしなければならない。
これは結局、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会とは何なのか?という問いでもあるでしょう。
……
……
要するに、同好会のメンバーの個性の根底にあるものは「みんなとスクールアイドルがしたい」だったり、「スクールアイドルが大好き」という想いなのです。
それこそがまさに「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」そのものです。
それぞれがやりたいこと、叶えたい夢も違うけれども、ここならばそれが実現できる。
部になることで「新しいこと」が出来るようになるのは事実ですが、それ以上に同好会である「イマ」を大切にしたい、この環境や状況を大切にしたい。
それが「未来」にもきっと繋がる。
これが、同好会においてそれぞれが幸せになるための結論であり、再確認の機会でもあったわけです。
もちろん部に昇格しラブライブ!に出場し優勝を追いかける物語でも、幸せな出来事は数多く訪れるでしょう。
しかし、同好会であり続けることで叶えられる夢や幸せの比重は、それよりも遥かに大きいわけですし、同好会らしくみんなで出来る楽しいこともある。
だから、たとえ部にならなくとも、ラブライブ!に出なくても、同好会である「イマ」がベストであると考えたのです。
苦悩
未来に向けて動き出した同好会とは対照的に、果林は「イマ」に悩んでいました。
……
「未来」に向けて動くことは、成長することでもあります。
時間の流れと共に、自らの考え方や行動が変わっていく中で、それぞれがやりたいことを見つけ、夢を、未来を叶える道筋があります。
しかし、スクールアイドルという短い有限の時間の中で、3年生である果林にとっては、未来を考えることとは「別れ」を考えることでもあるのです。
当然、それに最も近い存在だからです。
果林の気持ちを察することが出来るエマや彼方の存在は、3人が共にした「過去」を意味します。
「イマ」の正体
なぜ『充実した時間「だった」』と過去形であるかといえば、果林たち3年生は残り半年も経たずに卒業し、「いなくなる」からです。
同好会が出来てまだ半年、1年生や2年生のように比較的長い期間が残されているわけでもない。
だから、もし果林がそういう立場なら、もっと同好会としての夢や幸せが叶えられたかもしれないし、ソロとして活動する上でもそうだったのかもしれません。
しかし、時の流れは待ってくれません。
その一方で、それを感じ取るのは正しく自分自身の心であり、その心で感じ取る「イマ」こそが本当の意味で生きていることであり、それが何よりも尊いものなのです。
過去も未来も、「イマ」があるからこそ存在するものです。
そのイマは間も無く過去になり、未来は間も無くイマになる。
だから、訪れる未来も過ぎ去った過去も、それは結局はイマに通じているものでしかない。
それならば、せめて「イマ」を生きていくことこそがその人の歴史そのものであり、生きていることの証明にもなるだろう。
だからこそ、「イマ」を生きていく中に不安や後悔を置き去りにした幸せは存在し得ると、自分は考えるのです。
それが、在るべき形ではないかと思います。
……
……
第11話の象徴は「レインボーブリッジ」です。
レインボーブリッジは虹ヶ咲のあるお台場の象徴であり、それが文字通り虹色に輝くことは、お台場という地にある同好会に訪れるであろう虹色の奇跡を表現していると思います。
そして、虹という鮮やかな色の集まりは、それぞれが描く鮮やかな夢や未来の結晶でもあります。
それは、「イマ」が作る時間軸に寄り添った幸せの形です。
誰の答えも自分の答えではないのが人生だと思えば、「スクールアイドルが好き」という気持ちを糧にし、周りを信じて進む先に、自分なりの奇跡をも見ることが出来るのではないだろうかと思うのです。
……
果林が気づいた「イマ」の正体、そこから生まれた想いを形にするべく、「First Live!」が構想されました。
それは、「ソロもユニットもグループも、私達13人の全部を詰め込んだステージ(せつ菜)」です。
同好会はソロ活動から始まり、ユニットを結成した。
なぜユニットになったのかといえば、「自分の個性を発揮するため」でした。
その個性を"より"発揮するには、ユニットという形からもう1つ拡張した、グループという形が最適です。
そして、それは部に昇格させずとも、同好会という今までと同じ看板を掲げていても実現する形です。
同好会は、13人だけでここまで来たわけではありません。
SIFの時のように、様々な人に支えられ、応援してくれたからこそ、同好会は同好会としていられたはずです。
そんな「同好会以外」の人々に感謝の気持ちを伝える機会が「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のFirst Live!」であるとすれば、それはとても素敵なことですね。
……
そして、侑もまた、未来に向けて歩き出すのです。
音楽の力で、同好会をどう動かしていくのか。
同好会は、どういう音楽で世界を動かしたいのか。
それが、「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」という1つの物語の総決算です。
おわりに
第11話は、2期で最も重要な回と言っても過言ではないと思います。
メンバーにとっての同好会とは何なのか、それをもう一度確認し、更に未来へ向けて成長し、変化していく。
その中で、最初に学校を去る3年生にとっての最も近い未来とは「別れ」です。
それを考えると寂しくもなるけれど、「イマ」を全力で生きることこそが、目には見えなくても心に残る、同好会で楽しく過ごしてきた証明になる。
そして、同好会にとっての「イマ」は、目下First Live!へ向けて進んでいく時計の針そのものでもあるのです。
……
13人で歩む同好会の過去も未来も、「スクールアイドルが好き」という変わらない想いの、イマの中にある。
その「イマ」の正体こそが、人生の歴史とその証明である。
これが、僕が受け取った2期第11話の全てです。
それでは、また今度。
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さよなら、さよなら、さよなら。
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