〜境界線の向こう側〜 ラブライブ!スーパースター!! #1 「まだ名もないキモチ」感想
はじめに
こんばんは。
ついに、ついに。
やってきました。
新たな物語が。
Liella!が。
ラブライブ!スーパースター!!が。
待ちました。
いや、待ちすぎたのかもしれません。
......
2010/6/30、それがラブライブ!の始まりの日です。
μ's、Aqours、虹ヶ咲と続いてきた系譜。
12年目に突入した今、4番目のグループであるLiella!はどういう物語を紡いでいくのか?
いや、いけるのか...?
期待と、正直に言えば、ほんの少しの不安もありました。
しかし、ついに地上波全国放送まで来た、このシリーズ。
きっと、超えてくれるだろう。
そう信じていた。
僕の目に映った「物語」の幕開けは...
鮮烈でした。
第1話「まだ名もないキモチ」。
2つの境界線の向こう側は、きっと───
挫折と矛盾
物語は、挫折から始まりました。
歌が大好きな澁谷かのんは、「いざって時に歌えない」ことで、大好きな夢を「おしまい」にしようと決意していたのです。
自分が本当にしたいことがあるのに、そのキモチに嘘をついてしまう。
一人で矛盾を抱えながら生きるのは、とても辛いことだと思います。
5人が通い始めた学校は創立初年度。
音楽学校を前身とした、音楽に力を入れている学校です。
元々歌が大好きなかのんは、音楽科に進もうと思っていました。
夢は、新設された結ヶ丘女子高等学校の音楽科に進み…
歌で、みんなを笑顔にすることです!
しかし、先述した「いざって時に歌えない」という致命的なマイナスを抱えていたため、大切な発表会や入学試験はことごとく失敗してしまったのです。
だからかのんは、「おしまい」にすることに決めました。
『合格しなかったら、最後にする』って。
『諦める』って。
......
1つ目の境界線は、「かのんの外側」に存在します。
そもそも音楽科に進むことが叶わなかったかのんは、普通科の生徒として生活することに。
「音楽科に行けなかった」自分、「才能がなかった」自分...
色々なマイナスの自分を嫌というほど突きつけられてしまったかのんはいつしか、かつて夢見た道を諦め、自分自身を信じることができなくなったのです。
夢は、ネコを飼うことで〜す...
でも、1人なら自由に歌える。
誰かの目を気にせず、のびのびと歌えるのです。
……それは、誰のために?
……
偶然出会った、音楽科の制服の子。
自分とは対照的に、学校に早く行きたかった様子です。
やっぱり、音楽科に受かる子はすごいな〜...
歌うことが好きなかのんを、みんな知っています。
そしてみんな、かのんの歌が好きなのです。
だから、音楽科に落ちたことも知っています。
明らかに気を遣ってくる相手に対して、
それに、普通科の方が気楽だしね。
と、自分のキモチに嘘をついてしまったかのん。
本当は、音楽科に進みたくてたまらなかった。
本当は、落ちた自分が悔しくてたまらなかった。
本当は、自分の「大好き」を肯定してあげたかった。
それなのに……
目の前の人間と自分の間に、見えないながらも明確な境界線が引かれていたのです。
何度も屈辱を味わい、自分と自分以外の境界線を意識していくたび、かのんは本当に「1人」を求めてしまうようになりました。
これで何も聞こえない。
あのヘッドフォンは、「自分」と「自分以外」の境界線を引くための道具になっていたのです。
僕は、音楽を聴き、知らない世界に触れることで自分の内面は豊かになると考えています。
だからこそ、ヘッドフォンとは本来「自分の世界を広げるためのもの」だと思うのです。
それなのにかのんは、逆にヘッドフォンで耳を塞ぐことで、「1人の世界」を形成していた。
それが悪いことだとは全く思いません。
ただ、殻に籠るようになってしまったかのんを見ていると、それは本来の望みとは全く逆の、ネガティブな行為であると感じざるを得ないのです。
大好き
そんなかのんの歌を聴いて衝撃を受けた、1人の子がいました。
唐可可です。
元々スクールアイドルがやりたくて日本にやってきた可可。
可可は、皆さんと一緒にスクールアイドルがしたいです!
まずは部員を集めることからスタートしなければいけない状況の中で、かのんの「歌」と「ルックス」に一目惚れ。
朝出会った時に、『この子だ〜!』って!
そんな可可は、運命的にかのんと同じクラスになったのです。
そして猛プッシュ。
かのんさんの歌はスバラシイです。
だから可可と、スクールアイドルをはじめてみませんか?
ぜひ、私と一緒にスクールアイドルを...
それに、可愛いです。
とっても、可愛いです。
絶対(歌が)好きです。可可わかります。
だからかのんさんと一緒に始めたい。
プッシュに応えられないかのん。
明らかに過去の挫折を引きずり、可可との間に、スクールアイドルとの間に境界線を引いています。
こういうの、やるタイプじゃないっていうか...
そんな攻防戦の中で突然登場した葉月恋。
どうやらスクールアイドルの勧誘をよく思っていないのでしょう、早速スクールアイドルを否定しにかかります。
この学校にとって音楽はとても大切なものです。
生半可な気持ちで勝手に行動することは慎んでください。
恋のそうしたdisに、かのんは果敢にアンサーを返すのです。
きっと、誰かの「大好き」を否定することが許せなかったんだと思います。
『ふさわしい』って何?スクールアイドルのどこが『ふさわしくない』って言うの?
このような姿を見た可可は、かのんの内側に潜むスクールアイドルに対する愛や情熱を直感的に感じ取りました。
そんな可可に対して、前述したように、かのんは自分の「大好きなもの」を「おしまい」にする決意を述べたのです。
大好きなんだけどね...
きっと、才能ないんだよ。
だからもう、歌はおしまい。
誰かの「大好き」を否定することが許せなかったであろうかのんは、自分の「大好き」を否定した。
それこそ、可可にとっては許せないことだったのだと思います。
『おしまい』なんてあるんですか!?
好きなものを頑張ることに、『おしまい』なんてあるんですか!?
1話での1番のパンチラインと言っていいでしょう。
頑張る
嵐千砂都は、ダンスを頑張っている。
唐可可は、スクールアイドルを頑張っている。
ではかのんは、何を頑張ればいいのでしょうか?
歌が大好きなかのん。
かつて弾いていたギターに手を伸ばした時、その手が届くことはありませんでした。
1度夢を「おしまい」にする決意をしたかのんにとって、もう1度進む決意を固めるハードルは想像以上に高かったのかもしれません。
......
依然として勧誘を続ける可可。
どうしてもかのんさんと一緒にスクールアイドルがしたい!!
という言葉には、かのんへの愛と、スクールアイドルへの情熱が詰まっています。
歌が好きならば、スクールアイドルをしてほしい。
歌が好きならば、夢を追いかける仲間になってほしい。
スクールアイドルがしたいから日本に来て、かのんと運命的に出会うことができたのだから...
何度目の勧誘でしょうか。
いや、ここまで来ると、もはや懇願に近いと思います。
お願いだから、自分とスクールアイドルをやってくれないか?
と。
かのんさんは歌が好きです。
歌が好きな人は、(みんな)心から応援してくれます!
可可はそんな人とスクールアイドルがしたい。
その懇願に対してかのんは
がっかりするんだよ!
いざって時に歌えないと、周りのみんなもがっかりさせちゃうし!
何より、自分にがっかりする!!
そういうの、もう嫌なの!
と最後の抵抗。
いや、抵抗というよりも感情の吐露でしょう。
自分のマイナスで、自分も周りも不幸になる、そういうのはもう「おしまい」にしたいのだ、と。
そのかのんに対して
応援します!
かのんさんが歌えるようになるまで、諦めないって、約束します!
だから試してくれませんか?
可可と、もう1度だけ、始めてくれませんか?
と、可可も最後のお願い。
しかしそれにすら何の返事もせず、背を向けてしまったかのん。
僕は、悲しくなりました。
このまま、夢を諦めるのだろうか?
「おしまい」にしてしまうのか?
無かったことにしてしまうのか?
あれだけ好きだったんじゃないのか?
歌うことが……
サヨナラの前に
2つ目の境界線は、「かのんの内側」にあります。
自分は、歌うことが大好きだ。
でも、肝心な時に歌えない。
誰かをがっかりさせてばかりの人生だった。
何より、自分にがっかりしてばかりの人生だった。
だから、大好きな歌にはサヨナラを告げよう。
新しいことを始めよう。
もう、「おしまい」に……
自分の大好きなこと、叶えたい夢。
そうしたプラスが胸の内には間違いなくある。
その一方で、「がっかり」させてしまったことに対する恐れ、不安、そうしたマイナスも間違いなくある。
かのんの脳内には、明確に2つ目の境界線が引かれていると思いました。
……
じゃあ、自分の叶わないだろう夢に「才能がない」とサヨナラを告げて、どう生きるんだ?
周りのみんなと自分のキモチを裏切って、どう生きるんだ?
そもそも、スタートとゴールの境界線は誰が引くんだ?
儚くて今にも消えそうな「名もないキモチ」に、ささやかな名前をつけてあげないのか?
僕は、そう感じていました。
……
いいの?
私の歌を大好きって言ってくれる人がいて...
一緒に歌いたいって言ってくれる人がいて...
なのに、本当にいいの?
本当にこのままでいいの?
そしてかのんは、自分の中の葛藤と向き合い、境界線の前に立つのです。
学校の門、境界線。
これを踏み越えて、向こう側へ行ってしまえばきっと、もう2度と戻れない。
あれだけ好きだった歌を歌うことも。
歌でみんなを幸せにすることも。
いや、いっそのこと越えてしまえば、苦しみから逃れられるのかもしれない。
でも、でも。
応援してくれる人を簡単に裏切るような真似だけは、できなかった。
ここで「おしまい」にしてしまえば、本当に周りをがっかりさせてしまう。
何より、自分にがっかりしてしまう。
だから。
がっかりしたままの物語に、サヨナラを告げよう。
過去の自分にも、サヨナラを告げよう。
そうだ、澁谷かのん。
そうやって、物語は動き出すんだ────
……
小さな頃から、ずっと思っていた。
私は歌が好き。
ずっと歌っていたい。
歌っていれば、遠い空を、どこまでも飛んでいける。
暗い悩みも、荒んだ気持ちも。
全部、力に変えて、前向きになれる。
いつだって、歌っていたい!
……
白い羽。
ラブライブ!の象徴とも言える羽。
その羽は、かのんのもとへ舞い降りた。
物語が変わろうとも、決して変わらない一つの羽。
その羽で、飛んでいけ。
未来はきっと、ハレだから。
……
大好きな歌で。
境界線を壊そう。
夢を叶えよう。
世界を変えよう。
そのキモチに、名前をつけてあげよう。
さあ、「私を叶える物語」を始めよう。
おわりに
やはり、鮮烈な幕開けでした。
物語の始まりが、こんなネガティブなものになるのだろうか?
と、最初は少し緊張していました。
しかし、大都会の中で生き、苦悩し、挫折し、段々と可可に心を開いていくかのんの姿は、今を生きる若者らしかったです。
ところで、最後までかのんに「スクールアイドルになってほしい」と訴えていた可可。
そこまで愛している理由は何でしょうか?
それも、後々明らかになるのでしょうね。
……
渋谷、原宿、表参道。
どれも、日本の流行と文化の最先端を行く、正直かなりリッチな土地です。
そんな土地の中にいると、時代の変化についていけなくなる時があるのではないか?と思います。
自分の時間軸と、周囲の時間軸の不一致です。
時間がゆっくりと流れる沼津なんかとは対照的ですよね。
その土地ならではの感覚なども、今後反映されると面白いです。
なかなか僕のような人間には馴染みが…という感じですが、今度東京に帰ったらお台場と一緒に訪れようと思います。
昔とは景色が違うだろうけど、空気感は変わらない。
独自の雰囲気を堪能したいですね。
……
ラブライブ!スーパースター!!。
それは、鮮やかに、爽やかに進んでいく物語でしょう。
その物語の行く末が、楽しみになりました。
あと、牛タン食いたい。
唐可可だけに。
ちなみに推しね。
聖地のあたりに店があったら食べに行きましょうね。
それでは、お時間です。
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さよなら、さよなら、さよなら。
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