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インフラ巡礼 in 北海道 網走川の豊かな自然環境を守る <網走川大曲堰編>

にこちゃん

みんな、北海道にある網走川(あばしりがわ)大曲堰(おおまがりせき)って知ってる?
すごく大切な施設なんだよ!

きらちゃん

うん、聞いたことはあるけど、何をする施設なの?

げんきくん

堰って、確か川の水を便利に使えるようにする役割があるんだよね。
農業用とか工業用の水を川からとるのに使うって聞いたことがあるよ。

にこちゃん

その通り!だけど、堰は他の使われ方をするものもあるみたいだよ。

きらちゃん

そうなんだ!
じゃあ網走川大曲堰って、具体的にはどんな風に使われているの?

にこちゃん

それは実際に網走川大曲堰を訪れて、詳しく調べてみようよ!
現地で見ればいろいろ分かるかもしれないね。

ということで、にこちゃん、きらちゃん、げんきくんは、北海道の網走川にある大曲堰まで現地取材に行ってきました!


網走川大曲堰が作られた背景

網走川大曲堰は、オホーツク海から網走湖への海水の流入を防ぎ、網走湖で青潮やアオコが発生するのを抑えるという重要な役割を担っています。

網走川大曲堰
にこちゃん

網走湖って、海から海水が流れ込んでるんだね!

きらちゃん

そうみたいだね。
網走川大曲堰は、流入する海水をうまくコントロールする役割があるみたいだよ。

げんきくん

そうなんだ。
海水の流入を防ぐ仕組みってどうなってるのかな?
それと、青潮やアオコの話も気になるな。

網走湖について

網走湖は、オホーツク海と網走川で結ばれている面積32.3平方キロメートルの湖で、日本で17番目、北海道で8番目に大きい湖です。水産業も盛んで、中でもヤマトシジミ、ワカサギ、シラウオは道内一の水揚げ量を誇ります。

網走湖

この網走湖は、オホーツク海と結ばれているため、海水と淡水が混じり合った湖で、「汽水湖(きすいこ)」と呼ばれます。


にこちゃん

網走湖の水は、淡水と海水が混じってるんだね!
湖全体が海水っぽくなってるのかな?

げんきくん

淡水と海水が2層に分かれた構造になっているみたいだよ。
網走湖に入ってきた海水は、湖の地形とか比重の違いで、湖の底に沈むんだって。

淡水と海水の2層構造(淡水層と塩水層)
きらちゃん

海水は、湖の下のほうに流れ込むんだね。
上の方は淡水層、下の方は塩水層、って呼ばれているんだね。

網走湖の水環境改善のための対策

網走湖の汽水湖という環境は、多様な生態系が形成しています。一方で、湖の下部の塩水層は、アオコや青潮を発生させる原因ともなりえます。アオコや青潮は、魚のへい死や魚介類の酸欠死を引き起こすことにより、魚介類への被害を生じさせます。また、景観の悪化や悪臭なども発生させます。


にこちゃん

網走湖に海水が流れこむことで、多様な生態系が形成する一方で、魚介類への被害が出てしまったりもするんだね。

げんきくん

そうだね。これについてはバランスが大事みたいだね。
アオコや青潮が起こる原因は、この後でまた詳しく見ていくよ。

きらちゃん

網走湖や網走川の水環境を改善するために「清流ルネッサンスⅡ」っていう計画が作られて、いろいろな対策を行ってきたみたいだよ。

平成16年に網走川流域の関係機関や団体が連携し、青潮発生の抑制やアオコ発生頻度の低減などの施策を含む「網走川水系網走川水環境改善緊急行動計画」(通称:清流ルネッサンスⅡ)が策定されました。その清流ルネッサンスⅡで計画された対策の一つが、今回の主役である「網走川大曲堰」なのです。

網走川大曲堰は、平成18年1月から平成21年度まで仮ゲートによる試験運用が行われ、ゲートの有効性や湖の環境への影響を実証、確認した上で、工事が開始され、平成25年3月に完成、平成26年1月から本格運用となりました。

アオコや青潮の発生原因

網走湖に海水が流入すると、淡水層と塩水層の2つの層の境界が上昇し、それがアオコや青潮の発生を誘発します。

ここで、アオコと青潮が発生する仕組みをそれぞれ見てみましょう。

アオコの発生

にこちゃん

網走湖の下の方の塩水層って、栄養塩っていうのがいっぱいらしいよ!

きらちゃん

栄養塩って、海藻とか植物プランクトンが増えるのに必要らしいね。
それがいっぱいあるのは良さそうだね。

げんきくん

とにかく多ければ良い、というものではないみたいだよ。
栄養塩が多すぎて植物性プランクトンが増えすぎると、悪臭や魚のへい死など困ったことも起こるみたいだね。


アオコは、気温が高く、好天時に植物性プランクトンが窒素やリンなどを栄養に異常増殖を起こし、湖面や湖岸に絵の具を流したような状態となる現象です。塩水層に含まれる栄養塩は、この植物性プランクトンの栄養源になっていると考えられています。そして、塩水層が水面に近くなると、栄養源の供給が起こり、アオコが発生しやすくなります。

アオコの発生

青潮の発生

にこちゃん

網走湖の塩水層って、酸素がない状態なんだって。

きらちゃん

酸素がないってことは、魚は生きられないよね・・・

げんきくん

そうだね。
この無酸素の塩水層が、強風で魚介類がいるところに吹き上げられると、魚介類の酸欠死が起こってしまうらしいんだ・・・

青潮は、強風が一定時間連続して吹いた場合に風下に湖水が吹き寄せられ、風上側に塩水層が上昇することで、魚類のへい死の被害が発生する現象です。こちらも、塩水層が水面に近いと、塩水層の上昇が起こりやすくなり、青潮の発生につながります。

青潮の発生

このように、アオコや青潮の発生を抑制するためには、淡水層と塩水層の境界を上昇させないことが効果的です。そのため、網走川大曲堰によって、この境界の上昇につながる海水流入を防ぐことが重要になります。

げんきくん

網走川大曲堰で、海水の流入をコントロールするのが重要になるんだね!

網走川大曲堰の仕組みやもたらす効果

網走川大曲堰の仕組み

網走川大曲堰は、可動式のゲートにより海から湖への海水の流入を防ぎます。

網走湖の水位が海の潮位より高いときは、湖水が海に流出していく流れになるため、この可動式のゲートは倒した状態にして流れに影響を与えないようにします。一方、網走湖の水位が海の潮位より低い時は、海水が湖に流入する流れになるため、可動式のゲートを立てることで海水の流入を防ぎます。

網走川大曲堰の仕組み


きらちゃん

網走湖の水位に対する海の潮位の高低に合わせて、可動式のゲートを動かしてるんだね。

げんきくん

網走川大曲堰でゲートを動かしている人がいるのかな?

にこちゃん

このゲートの操作は、北見河川事務所から遠隔で行われているらしいよ。
それも自動で制御してるんだって。すごいよね!

網走川大曲堰の運用

この網走川大曲堰の運用は、常時行うのではなく特定期間のみに絞って行われています。具体的には、湖への海水の流入は、潮位が湖水位より高くなる時期が多い冬に多くなることや、ワカサギやシラウオなどの魚類の遡上・降海が比較的冬期は少ないこと、堰周辺の舟運が冬期に減少することなどを考慮し、11月から3月の冬期間にのみ可動式のゲートの操作を行うそうです。


げんきくん

現地取材で、網走川大曲堰が果たしてる大事な役割がよく分かったね!

きらちゃん

うん!
水産業も盛んな湖だから、魚介類への被害を防ぐのは本当に重要だよね!

にこちゃん

そうだね!
網走川大曲堰の仕組みも知ることができて良かったね!

げんきくん

今回も、インフラの利活用や重要な役割について学べて良かったね!

きらちゃん

今回のインフラ巡礼も本当に有意義だった!
引き続き、取材した内容を紹介していきます。次回もお楽しみに!