『ブータンの映画からみる"現代"』
こんにちは、こんばんは(。ᵕᴗᵕ。)
今回は ある映画について紹介しようと思います。
タイトルは…『ブータン 山の教室』
ブータンの映画です。
どんな映画かと言うと、首都に住むやる気のない若者の教師が ブータン北部の辺境の地に赴任して 村人や子供たちとの交流を通して 心境が変化していく・成長していく物語です。
いま全国で上映していますが 大体の映画館で上映終了になっているかと思います。
映画館によって遅れて公開したところもあるので、まだやっているところもあります。
日本で最初の公開は今年の3月に開かれた大阪アジアン映画祭でした。
次に公開されたのが4月3日に初上映した岩波ホールでした。
私は岩波ホールの劇場公開 初日に映画館で観ることができました。
でも実は その前にオンラインで観る機会がありました。
3月の末に設けられた25名限定のオンライン試写会に抽選で当たることができたからです。
たしか 3日ほどの期間内なら何度でも視聴ページにアクセスできました。
この映画を何度も繰り返し見ることができるのはとても幸運なことだと思い何度か観ました。
初めて観た時の感動、2回目に見た時の納得、3回目に観た時の発見、劇場で観た時の衝撃、と何度も新しい感触があり、今でも忘れられない映画体験として心に刻まれています。
映画の舞台はまさにいま・現代のブータンで、進む近代化や情報化の社会的背景がしっかりと映画にも反映されていました。
主人公の教師・ウゲンは、歌手になりオーストラリアに行くことをひそかに夢見ています。
ところが、ある日上司から呼び出され 標高4800mの高地に位置するルナナの学校に赴任するよう告げられました。
一週間以上かけて 険しい山道を歩き 村にたどり着いたウゲンは、電気も通っていない村で現代的な生活から完全に切り離されたことを実感します。
村の学校には黒板やノートなどの基本的な教材もありません。
村の人々は新しい先生となる彼を温かく迎えてくれました。
ある子供はウゲンに対して 先生になりたいと告げ、その理由を聞かれると次のように答えました。
「先生は未来に触れることができるから…」と。
すぐにでもルナナを離れ 街へ戻りたいと考えていたウゲンでしたが、
学ぶことに目を輝かせる子供たちの瞳や荘厳な自然とともにたくましく生きる村人たちの姿をみて、
少しずつ 自分の心の中に新しい感情が芽生えるのを感じるようになります。
と、あらすじはこんな感じです。
この映画の監督はブータン人のパオ・チョニン・ドルジさんが務めました。
パオ・チョニン・ドルジ監督はこの映画で何を伝えたかったのか…
そこには 現代に生きる私たちだからこそ、知ってほしい、気づいてほしいという思いが込められていました。
グローバル化がすすみ、世界の景色が画一化し続けているこの時代に、「ほんとうの豊かさ」とかはなにか 改めて考えさせられる映画でした。
近代化・グローバル化・情報化と、あらゆる方面から変革の波が世界を席巻するなかで、ブータンは独自の文化と伝統を維持しようと慎重な姿勢を貫いてきました。
テレビとインターネットが解禁されたのは1999年と、世界でも最も遅いタイミングで解禁した国のひとつと言われています。
このタイミングまで 情報化の門戸を開くのをためらっていたのには、外からの影響を受けることでブータン独自の文化が変わってしまう・失われてしまうという危惧があったからです。
実際に外の世界を少しずつ受け入れていく中で、それまでの"ブータン"が目に見える形で変わっていくのをブータンの人々ひとりひとりが肌で感じるようになりました。
発展していく街、過疎化が進んでいく農村、何よりも若者たちの価値観や人々の考え方に顕著な変化が生じました。
「この映画のストーリーのあらゆる要素は、私がブータン中を旅したときに聞いたエピソードや、出会った人々がベースになっている」とパオ監督は話します。
続けてパオ監督は、「そこにこそブータンという国の本当の価値が宿っている」と
これからを生きる世代がブータンの独自性を忘れないでほしい、、そんな思いがこの作品に込められています。
一般的にあらゆる変革の波は中心から周縁へという順に起こります。
この映画ではブータンの中では比較的発展した街・首都ティンプーに住む若者であるウゲンが、発展とは縁遠い北部の辺境を訪れることによって多くの学びと発見、そして成長をします。
この伝統的な生活が残っている土地を訪れることによって、人間の根源的な生きるよろこび、本当に大切なことに気づくという逆説的な発見がこの映画をこれほど新鮮な作品に仕上げたと思います。
監督はインタビューの最後に次のコメントを残しています。
「ブータンと日本は、文化、伝統、そして人々の内面において多くの共通点があると感じています。100年前の日本はまさにブータンのような国だったのではないかと想像しています。
この作品で、日本の皆様とつながることができれば嬉しく思います。」
このブータンの映画を通して、自分たちはいまどのような社会に生きているのか、どのような道を歩んできたのか、といったことが相対化され 少し離れた場所から自分のいる社会を観察するとができるのではないでしょうか。
少し長くなりましたが ブータンの映画を通して"現代"を見つめてみる、という回でした。
読んでいただきありがとうございます( ・ᴗ・ )♡