ITインフラとは? 情シスが管理するITインフラの基本
情シスの主要業務にITインフラの運用管理が挙げられます。ITインフラはその名の通り、企業のIT活用に欠かせないビジネス基盤の1つです。今回のnoteでは、ITインフラとは何か、そして運用管理する際のポイントについて紹介します。
なお、このnoteは主に中堅・中小企業の新任情シスや兼任情シス向けの内容です。
1. ITインフラ管理の基本
1-1 ITインフラとは何か?
「ITインフラ※」とは、企業の業務に必要なアプリケーションを動かすために必要とされるソフトウェアやハードウェアを指します。この時の「ソフトウェア」には各種OS、データベースなどのミドルウェアが含まれます。「ハードウェア」にはサーバ、クライアントPC、ネットワーク機器などが含まれています。これに、「設備」を含める場合もあります。
また昨今、ここで言うハードウェアやソフトウェアなどのITインフラをクラウド上で利用できるサービスも増えています。これを、IaaS(Infrastructure as a Service)と呼びます。IaaSは自社にサーバなどの機器を所有し管理しなくてもよいというメリットがあります。
※このnoteでは、企業等のIT基盤を指す用語であるITインフラストラクチャー(IT Infrastructure)を、すべて「IT インフラ」と記載しています。
1-2 主な5つのITインフラ管理業務
情シスはここで取り上げたITインフラを管理することになりますが、具体的にどのような項目を管理するのでしょうか。実は、企業のITインフラは多くのシステムや機器などが複雑に関わり合っていることが多く、容易に管理できない場合があります。そのような場合も含めて、ITインフラで管理すべき5つの項目を取り上げます(順不同)。
① ITインフラ機器の基本的な情報
機器とその IP アドレス、担当している会社(SIer、ベンダーなど)、どこに設置してあるか、どこにあったのかなど基本的な情報を確認する。
② ソフトウェアを確認する
サーバにインストールされているソフトウェアは何か、その種類やバージョン等を確認する。
③ネットワーク構成を確認する
全体・各拠点等のネットワーク論理構成・物理構成を確認する。各機器のLAN・電源接続情報を確認する。
④ネットワーク機器の情報を把握する
ルーターやスイッチ等の機器に付与された番号、機器番号などを一元管理して、ネットワークの関係性を把握する。
⑤PC、サーバ、モバイル機器を確認する
PC、サーバ、各種モバイル機器などの各機器が健全に動作するか確認する。
1-3 なぜITインフラ管理が重要か?
ITインフラ管理は重要な業務です。もし、ITインフラを管理しないとどのようなことが起きるのか、いくつかその例を挙げてみましょう。
●顧客や従業員満足度の低下
サーバの不具合が把握できなかった場合、従業員向けのシステムの場合には業務が止まってしまい、社内から不満が出てしまうことも。また、社外向けシステムの場合、販売機会の損失を招いたり顧客満足度が低下したり顧客離れにつながったりする可能性があります。
●重要データの損失
サーバやソフトウェアの不具合によりデータの保全・バックアップが正しく行われないと、重要データが消失しても復旧できない可能性があります。
●属人化問題・IT運用管理コストの増大
ITインフラ管理が担当者任せになってしまい、知識や業務の引き継ぎが不正確になってしまうと、様々なシステムトラブルの原因になります。問題発生時に情シスが対応する時間やコストの増加につながりかねません。また当然、ビジネス面でも支障が出てしまう可能性があります。
●サポート切れでセキュリティ対策が不十分に
ソフトウェア、ハードウェアのサポート期限を正しく把握しておかないと、リプレイスやバージョンアップのタイミングを逃しかねません。サポート切れが起きると、セキュリティ対策の支援が無償では受けられなくなる、提供が止まるといった可能性があります。また、問題発生時の対応もすべて有償化したり、問題箇所の部品手配などに時間がかかってしまったりします。
●トラブル時に原因切り分けできない
機器の接続状況などをネットワーク構成図や危機管理台帳・IP管理台帳などを用いて正しく管理・更新しておかないと、IT インフラがブラックボックス化してしまう可能性があります。ブラックボックス化してしまうと、問題発生時にも原因等の切り分けが困難になり、業務停止時間が発生してしまうことになりかねません。
このように、ITインフラはユーザーにとって普段はあまり意識しないものかもしれませんが、何かトラブルが発生すると業務が止まってしまうなど、大きな問題を引き起こす可能性があります。生活上のインフラと同様、ITインフラも定期的な管理が必要で、失われた時にその重要性がわかるものなのかもしれません。
2. ITインフラ管理のヒント
2-1 ITインフラは管理台帳や構成図で管理する
ITインフラを正しく管理するためには、サーバやネットワーク、設備等の現状を調査して把握しておく必要があります。そのためには、次のようなドキュメントを作成することになります。
●ネットワーク構成図(論理構成図、機器構成図)
ネットワーク機器やネットワークに接続されたサーバ、その他デバイス等の接続状況を調査し、ネットワーク構成図を作成して一元管理しましょう。ネットワーク構成図には主に2種類あります。「物理構成図」は、物理的な配置や機器情報を把握するための図で、フロアや設置場所も記載します。「論理構成図」は、IPアドレスやサブネット、ルータ/スイッチなどの種類などを記載します。
●IT資産管理台帳
ネットワーク機器、サーバ、PC、モバイル端末など、あらゆるIT機器とソフトウェアを管理するための台帳です。Excelを用いる方法やIT資産管理ツールを用いる方法などがあります。新たに機器などが追加されたら必ずこの台帳に記載します。また、購入、レンタル、リースの種別や期限、サポート期限など、管理上必要な情報を記載するようにします。
●サーバ構成管理表
サーバ構成一覧には、サーバを構成する様々な情報を記載します。ハードウェア情報/インストールしているソフトウェア情報などを記載することになりますが、主な項目を下記に挙げます。
ホスト名、IP アドレス、CPU の種類、メモリ容量、HDD の容量、OS の種類、OS のバージョン、ソフトウェアのバージョン など
ほかにも、サーバラック管理図などが必要な企業があるかもしれません。自社のITインフラを抜け漏れなく管理することを考えましょう。
2-2 ITインフラは定期的な“健診”が必要
ITインフラは常に同じ状態ではありません。古い機器を入れ替え新たな機器を導入したり、クラウド化し不要になったりと流動的です。そのため、常に現状を確認できるような仕組みづくりが欠かせません。
しかし、自社でシステムを維持できない・システムを入れても使いこなせないなど、ITインフラ管理の人材不足が深刻という企業もあるかもしれません。その時の対処法としては、(1)人材を採用する、(2)既存社員への教育・育成、(3)業務の効率化を行う、(4)外部サービスを利用する、などが考えられます。
(1)採用、(2)教育・育成は、現在のITインフラ管理者の時間やコストが必要となります。
(3)効率化は、ITインフラ管理対象項目をクラウド化推進することや、RPA、AIなどの活用が考えられます。
(4)外部サービス利用では、ITインフラの可視化(構成図や管理台帳などドキュメント作成)、監視、運用管理アウトソーシングなどのサービスを利用する方法もあります。
3. おわりに
このnoteでは、情シスが行うITインフラ管理業務の基本について紹介しました。ITインフラは日々新たな技術が登場する分野ですが、適切な管理により企業の業務を支えることには代わりありません。ぜひ、自社に合ったITインフラ管理の方法を見つけてみてはいかがでしょうか。
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