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チェルノブイリ大惨事 による健康影響 の 実相:二つの報告書 から―― 無視され続けてきたがん以外の健康被害

多臓器炎症劇薬接種処方教唆卍型製薬企業等も地球環境核汚染マフィア等も病気製造免疫細胞殺戮医療詐欺マフィア等も金権腐敗堕落災難犯罪犠牲者生贄搾取教唆思想=悪魔教(悪思想=元品の無明=大悪鬼)の奴隷国際的組織犯罪(搾取団)シンジケートの計画的犯行の災難犯罪の部分を構成する組織群。

https://takasas.main.jp/down/Kagaku_201111_Sakiyama.pdf

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googleは卍型犯罪組織配下による検閲がある
記事引用はじめ
”チェルノブイリ大惨事 による健康影響 の 実相:二つの報告書 から―― 無視され続けてきたがん以外の健康被害
崎山比早子 さきやま ひさこ
高木学校(医学博士)
1156 KAGAKU Nov. 2011 Vol.81 No.11
チェルノブイリ大惨事から 25 年,第二のチェ
ルノブイリ事故はチェルノブイリ自体から起こる
かもしれないと危ぶまれてきた中,福島第一原子
力発電所に大事故が起きてしまった。しかも事故
はまだ収束からは程遠い。1 号機から 3 号機まで
建屋の中は数十から数千ミリシーベルト(mSv)/時
(8 月 14 日付東京新聞)もあり,必要な作業を拒んでい
る。何時大きな余震がきて大量の使用済み核燃料
を入れた冷却プールが倒れてくるのか,ようやく
低下した冷却プールの温度コントロールが一挙に
破壊されるのか,何時また危険な水素爆発が起き
るのか,誰も予測がつかない。そしていまなお破
壊された建屋からは減少したとはいえ放射性物質
の放出は続いているし,原子炉建屋の地下に溜ま
った汚染水処理は大量の地下水流入によって困難
を極めている(9 月 20 日付東京新聞)。地下水が流入し
ていることは放射能が地下水に拡散しているとい
うことではないのか。
日本人の多くが放射能に汚染された地に住み,
汚染された食べ物を食べることを強いられている。
これまで遠い国のこととして考えてきたチェルノ
ブイリ大惨事が突然にわが身の問題となってしま
った。チェルノブイリ大惨事については,2009
年にニューヨーク科学アカデミーから『チェルノ
ブイリ大惨事,人と環境に与える影響』1が,今年
4 月 に は 核 戦 争 防 止 国 際 医 師 会 議(IPPNW)か ら
『チェルノブイリによる健康影響―大惨事から 25
年後』2が出版された。この両者に共通するところ
は,これまで国際原子力機関(IAEA),世界保健機
関(WHO)や国際放射線防護委員会(ICRP)が発表し
てきたチェルノブイリ大惨事による被害を過小評
価であるとして見直していることである。過小評
価の原因となったのは,西側が主に英語で書かれ
た論文を評価し,ベラルーシ語,ロシア語,ウク
ライナ語などで書かれた論文を無視してきたため
に,地域に密着した研究が抜け落ちていたからで
ある。これら二つの報告書ではこの弊害を除くた
めに,これらの地域で発表された論文も網羅した。
核エネルギー利用を促進する機関である IAEA
と人の健康問題を扱うはずの WHO が協定を結
んでいるため,WHO は本来の責務を果たせない
でいることを両報告書は共に厳しく批判している。
また,最も重要であるはずの子どもの健康状態に
関する報告は,甲状腺がん以外,これまでほとん
ど知られていなかった。健康な子どもの割合が大
惨事以前は 90% 以上であった高汚染地域におい
て,現在はその割合が 20% 以下に減少している
という1, 2。低線量放射線の影響研究についてはこ
れまでほとんどが,がんを中心に行われてきた。
しかし,これらの報告書は心臓血管系疾患,若年
性の老化,先天異常,脳神経疾患,内分泌疾患,
免疫疾患等々,多種類の疾患の増加も示している。
人類がチェルノブイリ大惨事の全体像を知るのは
まだまだ先のことなのだ。とはいっても国際原子
力事象評価尺度(INES)がチェルノブイリ大惨事に
匹敵するレベル 7 となった福島の未来は,チェ
特集チェルノブイリの教え
チェルノブイリ大惨事 による
健康影響 の 実相:二つの報告書 から
―― 無視され続けてきたがん以外の健康被害
崎山比早子 さきやま ひさこ
高木学校(医学博士)
Not just cancer; a review of two reports on the radiation induced
health effects of the Chernobyl disaster that discuss not only
cancer but the other ignored health risks
Hisako SAKIYAMA1157科学チェルノブイリ大惨事による健康影響の実相:二つの報告書から
ルノブイリ大惨事から予測可能なはずである。チ
ェルノブイリ地域よりも人口密度が 15 倍も多い
福島で,放射能汚染にどう対処するのか,その方
策を考えるためにこれらの報告書を参考にする必
要があるだろう。
両報告書によれば,放射線被ばくは想像以上に
多岐にわたる疾患を引き起こす。ここではこれま
でほとんど無視されてきたがん以外の疾患で比較
的頻度の多いものに重点を置いて紹介したい。
汚染の拡がりと被ばく者数
チェルノブイリ大惨事が人の健康にもたらした
被害を知るためには,放出された放射能量,それ
による汚染の拡がり,および被ばく者数を正しく
把 握 し な け れ ば な ら な い。し か し,ヨ ウ 素(I)-
133,I-135,テ ル ル(Te)-132 の よ う な 半 減 期 の
短い核種は後に計測されたセシウム(Cs)-137 のレ
ベルよりも桁ちがいに多かったと考えられるが,
その量を推定するのは困難である。また,IAEA
および WHO は,放出された放射能の 57% が降
り注いだ旧ソ連以外の国々(p. 1128 の資料 1 汚染地図参
照)を無視し,汚染地域をベラルーシ,ウクライナ,
ヨーロッパ側ロシアのみに限定して健康被害を評
価してきた。しかしチェルノブイリ大惨事では地
球の北半球が広く汚染され,子どもを含む 6 億
人の男女が,危険レベルである 37 キロベクレル
(kBq)/m2 以上の汚染を受けた地域で被ばくしたの
である(表 1)1。
ロシア,ベラルーシ,ウクライナにおける汚染
地 域 別 の 住 民 数 を 表 2 に 示 す。こ の デ ー タ は
1995 年のものであり,2009 年に発表された報告
書1ではこの 3 国の合計がちがっている(表 1)。報
告書の中で表 1 の特に被ばく線量が高かった事
故処理者(平均個人線量は 100 mSv)と避難者(平均個人線
量 は 55 mSv),高 汚 染 地 区 の 住 民(平 均 個 人 線 量 は
33 mSv)の健康状態は非汚染地区の住民のそれと比
較されている。
ヨ ー ロ ッ パ で Cs-137 に よ っ て 37~185 kBq/
m2 以上の汚染を受けた国々とその面積は:
表 1―チェルノブイリ大惨事により被ばくした人口1, 2
グループ 人数
事故処理者
ベラルーシ 4,000,130,000
ウクライナ 4,000,360,000
ロシア 4,000,250,000
その他の国 (約)90,0000,
30 km 圏内からの避難者・移住者
ベラルーシ 4,000,135,000
ウクライナ 4,000,162,000
ロシア 4,0000,52,400
ロシア,ベラルーシ,ウクライナの高汚染地区 4,008,300,000
ヨーロッパの低汚染地区 4,600,000,000
ヨーロッパ以外 4,000,000,000
表 2―1995 年におけるベラルーシ,ロシア,ウクライナの汚染地域別居
住者数2
Cs-137(kBq/m
2) ベラルーシ ロシア ウクライナ 合計
37~185* 1,543,000 1,654,000 1,189,000 4,386,000
185~555** 1,239,000 1,234,000 1,107,000 1,580,000
555~1,480*** 10,98,000 1,095,000 1,000300 1,193,300
合計 1,880,000 1,983,000 1,296,300 5,159,300
*低汚染区域,放射能管理強化区域
***中等度汚染区域,移住権利区域
***高汚染区域,移住義務区域1158 KAGAKU Nov. 2011 Vol.81 No.11
スウェーデン 1 万 2000 km 2
フィンランド 1 万 1500 km 2
オーストリア 8500 km 2
ノルウェー 5200 km 2
ブルガリア 4800 km 2
スイス 1300 km 2
ギリシャ 1200 km 2
スロベニア 300 km 2
イタリア 300 km 2
モルドバ 60 km 2
などである2。チェルノブイリからの放射能はそ
の他にアジア(8%),アフリカ(6%),アメリカ(0.6
%)にも降下し,合計は放出放射能量の 14.6% に
のぼった1。
チェルノブイリ大惨事が公衆の
健康にもたらしたもの
チェルノブイリ大惨事は正しく評価されていな
いと二つの報告書は共に主張している。その大き
な原因の一つは事故から 3 年半にわたる旧ソ連
当局によるデータの隠蔽と医療記録の偽造である。
特に 80 万人を超えるといわれる事故処理者に対
して事故後 1 年間は彼らの病気と放射線被ばく
とを公式に関連づけることが禁じられていた。そ
のため,1989 年までの彼らの罹病率データは永
久に失われてしまった。また,事故処理に参加し
た 6 万人の兵士のうち 37% は急性放射線障害の
症状を示していたにもかかわらず,兵士の記録カ
ードには 1 人として 25 レントゲン(250 ミリグレイ,
mGy)以上の被ばく記録はなかった。これらの事
実に代表されるように,チェルノブイリ大惨事が
もたらした公衆への健康影響を,正確に評価する
ためには多くの要因が障害となっている。それに
もかかわらず,疾病と被ばくとの因果関係をより
正しく推定する方法は存在する。たとえば,(1)
疫学調査で一般的に行われているように,死亡率
や罹患率を比較する場合,調査集団と対照集団で
被ばくレベル以外では社会的,経済的,環境等々
の条件を極力一致させる,(2)同一個人または遺
伝的な近親者の健康と染色体異常を体内にとり込
んだ放射性核種の種類や量と関連して比較する,
(3)体内にとり込んだ核種の量と疾病の罹患率の
関係を比較する,(4)まれな疾患が時間的,空間
的にかたまって現れた場合にその場所の放射能汚
染度を比較する,(5)体内に蓄積した放射性核種
の量と臓器の病理変化,それによって引き起こさ
れる疾病の関係を明らかにする,などである。
事故処理者(リクビダートル)の健康問題
チェルノブイリ大惨事の被害を最小限に押さえ
込むために膨大な人数の事故処理者が投入された。
彼らの大部分は放射線のリスクを知らされず,そ
の任務のために命と健康を捧げたのである。それ
にもかかわらず,彼らの功績は十分には評価され
ていないうえに,被った健康被害は正しく認識さ
れず,補償もされていない。旧ソ連政府の下で全
国から事故処理者が集められたために,旧体制の
崩壊と共に彼らは方々にちらばってしまい,住所,
氏名がわかっているのは全体の約半数に過ぎない。
このような欠陥はあるが,事故処理者の健康状態
を調査することによって放射線の影響を全般的に
把握し,理解することは可能である。まずこの被
ばく集団について考えてみよう。
被ばくによるがん以外の疾病については広島・
長崎原爆被爆者の生涯追跡調査でも線量に比例し
て明らかに増加することは報告されている。しか
し,国際的な機関から出版される報告書や論文で
は無視され続けている。非がん―放射線被ばくが
原因ではない―したがってチェルノブイリとは関
係ない―という論争の繰り返しが行われてきた。
これが事実に反するものであることは,事故処理
者がその後どのような疾病に苦しめられてきたか
を見れば明らかだ。
表 3 はロシアでの事故処理者に見られた疾患
を事故後経年的に調べた結果である。これからわ
かるように,事故の起きた 1986 年以後調べられ
た 12 の臓器系統での疾病が年を追うごとに著し
く増加している。1159科学チェルノブイリ大惨事による健康影響の実相:二つの報告書から
チェルノブイリ大惨事前と比較して増加の顕著
なのは悪性腫瘍よりもむしろ消化器系,内分泌系,
神経系および感覚器,泌尿器系などの疾患である。
ロシアで 2004 年に発表された報告によると,公
式に “病気” と認定された事故処理者は,事故後
0 年 で 0%,5 年 で 30%,10 年 で 90~92%,16
年で 98~99% になっている1。パリのウクライナ
大使館でも事故後 19 年(2005 年)には事故処理者の
94% が何らかの病気を抱えていると発表してい
る。
2005 年 9 月に開催されたチェルノブイリ・フ
ォーラムで IAEA と WHO は高線量被ばくグル
ープにおいて,がんと白血病で最大 4000 人の過
剰死が発生するだろうと発表した。この極端な過
小評価に対し,1992 年ベルリンで開かれた第 2
回被ばく者国際会議で,ミンスクの G. F. Lepin
教授は,7 万人の事故処理者が健康を害しており,
1 万 3000 人がすでに死亡したと発表している。
A.Yablokov は,種々の調査を総合すると 2005 年
までに,11 万 2000~12 万 5000 人の事故処理者
が死亡した,と推定している。ウクライナとロシ
アの死亡率調査によると,彼らの主要な死因は非
悪性疾患と重篤な複合的な疾患で,次いで多いの
が悪性腫瘍である。一般に信じられているように,
必ずしも悪性腫瘍のみによる死亡率の増加ではな
いのである。事故処理者の病状で特徴的なのは同
時に 4 種類から 5 種類の疾病にかかるというこ
とである。これは被ばくによる若年性老齢化と分
類され,約 70% の事故処理者にみられる。
放射線被ばくによる加齢の促進
ベラルーシ,ロシア,ウクライナからは放射線
被ばくが加齢を促進するという研究が多数発表さ
れている。事故処理者にみられる老化現象は被ば
くを受けていない人よりも 10 年から 15 年早く
現れる。そのため電離放射線による老齢化の促進
を研究することは,正常の加齢研究のモデルにも
なりえると考える研究者もいる。なぜなら電離放
射線が細胞に与える影響というものは正常な加齢
の過程で細胞中に起きる事象と似ているからだ。
たとえばフリーラジカルの反応,DNA 修復の過
程,免疫機能の変化,神経系に系統的に起こる変
化などである。広島・長崎の被爆者でもがん以外
の疾病による寿命の短縮は報告されている。
加齢促進の特徴を挙げると
⿠血管の老化の促進―特に脳,心臓血管系
⿠血液・造血系疾患の増加
⿠若年性白内障,眼底血管にみられる動脈硬化,
若年性近視
⿠中枢神経系の損傷による高度な知的認知能力
の喪失
⿠外来因子による遺伝子損傷修復に関与する抗
酸化系の安定性消失
⿠糖尿病の増加
血管の老化に関しては,WHO の調査で事故処
理者の心臓血管系疾患が有意に増加していたとい
う結果が 1996 年に発表された。また,ロシアの
表 3―事故処理者に見られる患者数の経年変化(10 万人あたり)1, 2
疾病/臓器 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993
感染症と寄生虫症 036 1,096 1,197 1,276 1,325 1,360 1,388 1,414
腫瘍 020 1,076 1,180 1,297 1,393 1,499 1,564 1,621
悪性腫瘍 013 1,024 1,040 1,062 1,085 1,119 1,159 1,184
内分泌系 096 1,335 1,764 1,340 2,020 2,850 3,740 4,300
血液および造血器 015 1,044 1,096 1,140 1,191 1,220 1,226 1,218
心理的変調 621 9,487 1,580 2,550 3,380 3,930 4,540 4,930
神経系および感覚器 232 1,790 1,810 2,880 4,100 5,850 8,110 9,890
循環器 183 1,537 1,150 1,910 2,450 3,090 3,770 4,250
呼吸器系 645 1,770 3,730 5,630 6,390 6,950 7,010 7,110
消化器系 082 1,487 1,270 2,350 3,210 4,200 5,290 6,100
泌尿器系 034 1,112 1,253 1,424 1,646 1,903 1,180 1,410
皮膚および皮下組織 046 1,160 1,365 1,556 1,686 1,747 1,756 1,7261160 KAGAKU Nov. 2011 Vol.81 No.11
事故処理者では 40% のリスク増加を示している。
また,中枢神経系の疾患については,被ばく者
の脳に基質的変性が現れる。この事実は 1990 年
にすでに警告されていた。また,セミパラチンス
クの核実験場(カザフスタン)周辺住民は神経系,感
覚器の障害や頭痛に悩まされているという報告が
すでに 10 年も前に書かれている。しかし,西側
ではこれらの障害を真剣には捉えてこなかった。
そればかりか “放射線恐怖症” なる言葉を捻出し,
チェルノブイリの後遺症で発生した多くの健康障
害は放射線被ばくのためではなく,根拠のないヒ
ステリーだという考えを浸透させていった。しか
しこれには反証がある。たとえば,多くの事故処
理者が訴えるめまいについても中枢神経の損傷に
よるものだという証拠が示されている。
ペテルスブルグの病院で診察を受けた 1600 人
の事故処理者の 80% は心理的な問題を抱え,治
療を受けている人の 40% は記憶の喪失などの神
経疾患に苦しんでいた。また,数万人の事故処理
者が失語症,鬱,記憶障害や集中力の低下などに
苦しんでいる。これらの疾患は被ばく時年齢が若
いほど重篤である。これらの患者の MRI や脳波
の検査では異常が認められている。同様な症状は,
アフガニスタン戦争,湾岸戦争,ボスニア戦争に
参加して,劣化ウランの粉末を吸い込んだ兵士た
ちにも報告されている。
事故処理者の子どもたち
事故処理者の子どもの遺伝子にはたくさんの変
異が見つかっている。同じ兄弟で,事故処理に従
事する前に生まれた子どもと比較すると変異は 7
倍にもなっていた例もある。この変異はただちに
は病気を引き起こさないかもしれないが,これか
らの世代に引き継がれていく可能性はある。変異
の数は事故後すぐに妊娠した子どもに多く,時間
が経つに従って減少した。遺伝子異常のある子ど
もの父親の被ばく線量は 50~200 mSv であった。
また事故処理者の子どもにがん,白血病,先天性
奇形,内分泌・代謝障害,精神障害が他のロシア
の子どもに比較して多いという報告がある。
遺伝子損傷と先天性奇形
遺伝子の損傷をモニターするのは困難である。
その理由の一つは遺伝子の変化の大部分が数世代
を経なければ目に見えるようにならないからだ。
そのため遺伝的障害の基礎知識は世代交代の早い
ショウジョウバエなどを使って行われた実験から
得られてきた。したがって,今見えているチェル
ノブイリ大惨事が人の遺伝子に与えた影響はまだ
まだ初期段階なのだ。
国連科学委員会(UNSCEAR)の報告によると集団
線量(被ばく線量×被ばく人口)はチェルノブイリ地域
よりもむしろヨーロッパのほうが多い(表 4)。そ
れはヨーロッパのほうが人口密度が多いためであ
る。これから考えるとチェルノブイリ大惨事によ
ってこれからヨーロッパでは遺伝子損傷を抱えた
人間が 1 万 8000~12 万 2000 人誕生すると予測
しなければならない。
染色体異常の頻度はチェルノブイリの放射能に
汚染された地域のすべてで他の地域よりも有意に
高くなっている(表 5)。たとえばベラルーシにお
いて Cs-137 の汚染が 37~555 kBq/m 2 の汚染レ
ベルの地域に住む子どもを調べた結果,52% が
非汚染地区の子どもに比べて有意に高い染色体異
常をもっていた。また,被ばく時年齢が 6 歳以
下であると染色体異常の頻度がより高く,その異
常は年を経ると増加していた。ウクライナでも 0
~3 歳で被ばくした 5000 人以上の子ども,胎児
被ばくした子ども,プリピャチ市から避難した子
どもの染色体異常は対照群の子どもよりも有意に
高かった。ロシアでも子宮内で被ばくした子ども
のほうが事故後時間が経ってから生まれた子ども
よりも染色体異常が多く起こることが報告されて
いる。また汚染地区に住む子どもの DNA 修復機
能が低下しているという報告もある。染色体異常
の頻度は土地の汚染度に比例し,汚染度が高くな
ると異常の種類も多くなる。
旧ソ連以外の国では,ユーゴスラビア,オース1161科学チェルノブイリ大惨事による健康影響の実相:二つの報告書から
トリア,ドイツなどで事故後子どもや大人に染色
体異常が増加したことが報告されている。
事故時に 5~12 週齢だった胎児に特に先天性
奇形が増加した。事故前と事故後における先天性
奇形の種類と発生頻度を汚染程度別に表 6 に示
す。
明らかに先天性奇形は事故を境として増加して
おり,その影響は 1990 年以後も続いている。ま
た,低汚染地区においても奇形の頻度は上がって
いることが読み取れる。
ミュンヘンでは事故後 9 カ月でダウン症が正
常時の 3 倍に増加し,ベルリンにおいては 9 カ
月後通常では 2~3 例生まれるダウン症が 12 例
に増加した。ダウン症の増加はスコットランド,
スウェーデンでも報告されている。また,東ドイ
ツの Jena では,1985 年と比較して 1986 年から
1987 年では先天性奇形が 4 倍に増加した。当時
東ドイツでは 16 歳以下の死亡と流産の場合は法
律で解剖が義務づけられていたので,流産した胎
児が奇形をもっていれば検出できたのである。主
な奇形は神経管と腹壁の欠損であった。ドイツ北
部の最も汚染を受けた地方では 1987 年には口唇
口蓋裂が 1980 年から 1986 年までの平均に比べ
て 9.4% 増加した。1987 年,バイエルン州では
セシウムの汚染度が最大の 4 地区では最低の 4
地区と比較して先天性奇形の出生頻度が 4 倍高
く,死産も増加した。
胎児期の被ばくにより知能レベル(IQ)が下がる
という調査結果はノルウェーから発表されている。
ブルガリア,トルコ西部でも 1986 年末には無
脳症や神経管欠損が増加したと報告されている。
表 4―北半球,チェルノブイリ地域とヨーロッパにおけるチェルノブイリ大惨事以後の遺伝リスクの推
定2
地域 集団線量(人・Sv) 子供をもつ年齢の
集団線量(人・Sv) 第 1 世代の遺伝
的損傷(10%) 遺伝的損傷の総計
(100%)
北半球 600,000 240,000 3,300~23,000 33,000~230,000
チェルノブイリ地域 216,000 886,400 1,200~88,300 12,000~883,000
ヨーロッパ 318,000 127,200 1,800~12,200 18,000~122,000
表 5―チェルノブイリ大惨事前後での異常細胞と染色体異常の発生頻
度(%,平均)(リンパ球 100 個あたり)
異常細胞 染色体異常
ウクライナ,1970 年代初期 n/a 1.19±0.06
ウクライナ 1986 年以前 1.43±0.16 1.47±0.19
世界平均,2000 年 2.13±0.08 2.21±0.14
ウクライナ,キエフ,1998~1999 3.20±0.84 3.51±0.97
30 km 圏内 1998~1999 5.02±1.95 5.32±2.10
表 6―ベラルーシのチェルノブイリ大惨事前後における高汚染地区と低汚染地区での先天性奇形の頻度(出産
1000 に対して)
高汚染地区 低汚染地区
年 1981~1986 1987~1989 1990~2004 1981~1986 1987~1989 1990~2004
すべての先天性奇形 4.08 7.82* 7.88* 4.36 4.99 8.00*
無脳症 0.28 0.33* 0.75* 0.36 0.29 0.71*
脊椎ヘルニア 0.57 0.88* 1.15* 0.69 0.96 1.41*
多指症 0.22 1.25* 1.10* 0.32 0.50 0.91*
ダウン症 0.89 0.59* 1.01* 0.64 0.88 1.08*
複数の先天性奇形 1.27 2.97* 2.31* 1.35 1.23 2.32*
新生児と死産児合計 58,128 23,925* 76,278* 98,522 47,877 161,972*
先天性奇形をもった
小児と死産児 237 187* 601* 430 239 1,295*
*p<0.051162 KAGAKU Nov. 2011 Vol.81 No.11
内分泌系の疾患
生体では,視床下部,下垂体,甲状腺,副甲状
腺,副腎,副腎皮質,膵臓,卵巣,睾丸などから
分泌される内分泌ホルモンがお互いに協同して作
用し合いはじめて身体は正常に発育し,各器官も
正常に機能するのである。チェルノブイリ大惨事
で放射能汚染を受けた広範な地域において全内分
泌系疾患が増加した。表 3 で明らかなように大
人の事故処理者においても事故後,内分泌系疾患
数の増加は顕著である。しかし,甲状腺ホルモン
の異常をはじめ内分泌疾患は放射線による障害と
は認められず,生活環境や栄養の変化,重度の心
労,より頻繁で綿密な検査と記録のためとされて
きた。
甲状腺の放射線被ばくは甲状腺がんのみならず,
がん以上の頻度で甲状腺の腫大,自己免疫性甲状
腺炎,甲状腺機能低下を引き起こす。特に子ども
が甲状腺被ばくを受けるとホルモンのバランスが
崩れて機能障害,発育障害が増加する。
IAEA が 1991 年に発表した国際チェルノブイ
リ・プロジェクトの結果は “検査した子どもたち
は一般的に健康であった” “事故後白血病や甲状
腺腫瘍の顕著な増加はなかった” であった。しか
し,チェルノブイリの子どもたちの甲状腺組織標
本はすでにあったし,子どもたちの間に甲状腺機
能障害の有意な増加があるという報告はなされて
いた。にもかかわらずこれらは無視されたのであ
る。
笹川プロジェクトで山下俊一らはウクライナ,
ベラルーシ,ロシアで惨事が起きた時に 10 歳以
下であった子ども 11 万 9178 人を調べた。その
中から 62 例の甲状腺がんが見つかり,4 万 5873
例のがん以外の甲状腺疾患が見つかった。すなわ
ち 62 例のがんが発症する背景には 730 倍にも及
ぶ甲状腺疾患があるということを示している。し
かし,山下氏はチェルノブイリにおいて急性障害
で死亡したのは 28 人であり,子どもの甲状腺が
んが増えただけだと述べている。
甲状腺がんは高汚染地区に住む子どもたちの間
で特に急速に増加した(表 7)。甲状腺がんの発症
を年齢別に見ると 0~18 歳の年齢層で最も著し
い増加を示している。惨事当時すでに大人だった
人にも甲状腺がんの増加は見られている。日本で
は甲状腺の等価線量が 5 Sv になると予想されな
い限り 40 歳以上にはヨウ素剤の投与を行わない
ことになっているが,この結果を見る限り,予防
のためには配布すべきである。
事故処理者における種々の血中ホルモン濃度も
調べられており,すべてのホルモンが対照群に比
べて異常値を示している(表 8)。高汚染地区に住
む子どもにも事故以後,内分泌系疾患が急速に増
加している。副腎皮質ホルモン,テストステロン,
インスリンなどの分泌低下が報告されている。テ
ストステロンの低下は身体の発達障害や生殖機能
障害の原因となるし,インスリンの分泌低下は 1
型糖尿病を引き起こす。子どもおよび 10 代の青
表 7―ベラルーシ,ゴメリ地方におけるチェルノブイリ大惨事
前後 13 年間の甲状腺がんの発症比較
年齢 1973~1985 年 1986~1998 年 増加
0~18 07 407 58 倍
19~34 40 211 5.3 倍
35~49 54 326 5.6 倍
50~64 63 314 5.5 倍
>64 56 146 2.6 倍
表 8―男性事故処理者 *
のホルモン濃度
事故処理者 対照
アルドステロン 193.10±10.60 142.80±11.40
コルチゾール 510.30±37.00 724.90±45.40
インスリン 012.60±01.20 018.50±02.60
ACTH(副 腎 皮 質 刺
激ホルモン) 028.80±02.60 052.80±05.40
プロラクチン 203.70±12.30 142.20±15.20
プロゲステロン 002.43±00.18 000.98±00.20
レニン 001.52±00.14 001.02±00.18
*すべて有意差あり
表 9―ベラルーシの高汚染地区と低汚染地区に住む子どもおよ
び 10 代の青年における 1 型糖尿病の発症(10 万人あたり)
1980~1986 年 1987~2002 年
高汚染地区(ゴメリ地方) 3.2±0.3 7.9±0.6*
低汚染地区(ミンスク地
方) 2.3±0.4 3.3±0.5*
*p<0.051163科学チェルノブイリ大惨事による健康影響の実相:二つの報告書から
年の 1 型糖尿病は高汚染地区において事故以後
顕著に増加している(表 9)。
免疫系の疾患
ウクライナ,ベラルーシ,ロシアの調査で,チ
ェルノブイリ大惨事による被ばくで生体防御シス
テムである免疫系が抑制されることが明らかにな
った。リンパ系(骨髄,胸腺,脾臓,リンパ節,パイエル
板)は高線量であっても低線量であっても電離放
射線の傷害を受ける。その結果,リンパ球の量や
活性が変化し,抗体産生も影響を受ける。免疫系
の障害は免疫力の低下をおこし,重篤な急性,慢
性の感染症を繰り返すことになる。被ばくによる
免疫力の低下は “チェルノブイリ・エイズ” とし
て知られており,被ばくした地域に広く観察され
る。多くの研究の結果,この免疫系の主要な原因
は胸腺機能の低下によるものであることがわかっ
た。T リンパ球,B リンパ球の減少は一般的に観
察される。そのため細胞性免疫も液性免疫も傷害
されることになる。子どもたちに特に多いのは反
復性の気管支炎,消化器疾患である。
* *
二つの報告書を読むと,ここに紹介できなかっ
た疾病も含め,これまでいかに甲状腺がん以外の
疾病の増加が無視されてきたか,あらためて思い
知らされる。チェルノブイリ大惨事による健康被
害は甲状腺がんだけではないことは明らかだ。し
かし,この行き過ぎた過小評価は何のため,誰の
ためなのだろうか? 福島原発事故以後の汚染さ
れた環境で生きることを強いられた多くの被ばく
者にも,これから同じような力が働いて,同じよ
うな基準で疾病の診断がつけられる恐れがあるの
ではないか。その兆候はすでに明らかである。た
とえば文部科学省の「放射線を正しく理解するた
めに―教育現場の皆さまへ」3なる資料の中に見え
る。この資料には問題が多々あるが,その一例と
して次のようにある。「チェルノブイリ原発事故
では,小児甲状腺がん以外のがんの増加は認めら
れていません」といい,身体の不調はストレスか
らと説明したうえで「放射能のことを必要以上に
心配しすぎてしまうとかえって心身の不調を起こ
します」と述べている。まさにチェルノブイリ大
惨事の時に「放射線恐怖症」といって現に起きて
いる病気を無視した姿勢を彷彿とさせる。
市民はチェルノブイリの轍を踏まないために,
チェルノブイリ大惨事の実態をよく理解し,記憶
して行動する必要があるだろう。
文献
1―V. Yablokov et al.: “Chernobyl: Consequences of the Catas-
trophe for People and the Environment”, Annals of the New York
Academy of Sciences, vol. 1181(2009)http://www.strahlentelex.
de/Yablokov%20 Chernobyl%20 book.pdf
2―IPPNW & GFS: “Health Effects of Chernobyl: 25 years after
the reactor catastrophe”(2011)http://www.nirs.org/reactorwatch/
accidents/chernob_report 2011 webippnw.pdf
3―文部科学省:「放射線を正しく理解するために―教育現場の
皆さまへ」http://www.pref.fks.ed.jp/sinsai/adv

”引用おわり

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