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カザフスタン旅行の基本情報
ここ数年アピールがすさまじくネットでも流行りのウズベキスタンと比べるとあまり観光地として有名な国ではないものの、大自然や鉄道など様々な魅力があるカザフスタン。これから行く人も少なくはないだろう国ですが、出入国周りで新旧情報が入り混じっているので、実体験を踏まえた記事としてまとめておきます。ウズベキスタン編と同様、ツッコミやエピソードは別記事にまとめる予定です。
この記事はりんのテュルク旅シリーズの一部です。ウズベキスタンやカザフスタン、中央アジアの寝台列車に興味がある人はリンクをポチッと。
【出入国】
日本パスポートの場合、30日以内の滞在ならビザ免除。出国時にパスポートの期限が6カ月以上、査証欄が見開き2ページ以上残っていること。ESTAのような事前登録も必要なし。日本のパスポートで一般的な旅行であればサクッと行ける条件になっています。
今回は陸路(列車)で入国、空路で出国でした。入国時には「カザフスタンは初めてか」「職業は」くらいの軽い質問はありましたが順当に終了。出国時にいたっては無言で終了でした。ネットでは陸路は厳しめという話も見かけますが、国籍によるのか、一等車だったからなのか、たまたまなのか、こればかりは謎。
【入国カードと外国人登録】
検索すると、入国カードのお話が出てくるかと思います。これ、廃止されてます。旅系のスレッドやフォーラムを見るかぎり廃止後1年弱は出入国の担当者が変更を把握してなくて揉めたという話も出てますが、もうすっかり定着したようです。実際ワシも宿でも出国時も入国カードについて何もきかれませんでした。
そして入国カードについての(古い)情報を読み進めると、空路だとパスポートのスタンプとは別にもう1つ外国人入国登録のスタンプを貰えるが陸路だと貰えないので数日以内に役所に出向いて登録を…とか出てくると思います。これも入国カードとともに廃止されています。
つまり、外国人旅行者本人が行う登録とか手続きとかそういうのはありません。留学や就労など滞在許可を持っている場合は別のようですが、ビザなしの範囲内で観光に行くだけなら、他の多くの国と同じようにパスポートのスタンプだけです。
【滞在登録】
ウズベキスタン同様、ホテルなどの受け入れ側には外国人宿泊客の滞在を国のシステムに登録する義務があるようです。違うのは、この宿泊登録の控えを外国人旅行者が保管する必要があるのかないのか不明という点。外務省や大使館などの公式情報から旅行会社のサイト、個人の記事やコメントなども含め検索して歩いても決定打になるものはなく。英語やドイツ語でも同様。信ぴょう性高そうな情報源を見つけても、廃止されて数年経っている入国カードの情報混じっていて賞味期限切れっぽかったり。結論:万全を期すなら宿に「泊まりました」の書類を発行してもらうこと。「控えは必要ない」という公式情報がないから。ちなみにウズベキスタンのような滞在登録だとわかる感じの書類ではなく、領収書のようなものでした。ソ連時代から外国人御用達でその辺ちゃんとわかってるであろうホテル・カザフスタンも領収書モドキを出してきたので、多分これであってる。なお前述のとおり出国時には何もきかれませんでした。
ウズベキスタンと同じく、泊まる前にこの登録手続きをやってるのか宿にきいてみたのですが、ホテル・カザフスタンを除き、イマイチ話が嚙み合いませんでした。なんなら「やってません」と言うホテルまで(明らかに外国人客多いだろうところなのに)。どういうことかと思っていると、ホテルのうち1件が「もしかして旅行・移動の書類のこと?それならチェックイン・チェックアウト日時に応じて発行するよ」と。どうやらрегистрация(レギストラーツィヤ)という単語を使ったのが誤解のもとだった模様。これは廃止された入国カードの2つ目のスタンプの「登録」のことや長期滞在者が移民局などで行うものを意味するようで、そうとなると宿は「やってません」という回答になるのも納得。だって、もう廃止された手続か、役所でやるべきことだから。уведомление о пребывании иностранца(外国人の滞在についての通知、くらいの意味だと思う)という表現を使ったら滞在登録のことだと通じて「やってますよ~」「チェックアウト時に発行するよ~」と。ウズベキスタンではこの外国人旅行者の宿泊登録のことをрегистрацияと言うようなので、ちょっと注意。
【持ち込み・持ち出しの規制】
1万米ドルとかそういうレベルで現金や貴重品を持ち込む以外はとくに引っかかりそうなものはないかと。武器、麻薬、ポルノ、特別重要な美術品や保護対象の動植物とかのよくあるリストです。謎なのはカザフスタンの旧紙幣(無効になったもの)の持ち出しが禁止対象なこと。誰もチェックしない気もしますが。
【通貨と支払い】
カザフスタンの通貨はテンゲです。ちなみにロシア語で「お金」の意味の単語「デンギ(деньги)」と語源が同じらしいです。なんとロシア語ではなく突厥語が語源側。
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ウズベキスタンと違って二重通貨状態ではないようです。ATMはターミナル駅には必ずあったし街中でもいたるところにありました。すぐに遭遇できなくてもYandex Mapで検索すればほぼほぼいつでも見つかるかと。ローカル食堂やスーパー・商店でもカード払いができたりとなかなか便利です。
こうきくと問題なさそうですが、場所によってはカザフスタン独自のガラパゴス決済システムしかキャッシュレス決済ができなかったり、アルマトイ(とアスタナもかな?)の路線バスは専用のプリペイドカードでしか運賃を払えなかったりと、地味に不便です。ガラパゴス決済を使うにはカザフスタンのモバイル番号が必要だったりどこでもバス用のプリペイドカードが手に入れられるわけじゃなかったりと、旅行者にはちょっと使い勝手が悪いです。都会のバス以外は現金の支払いができないということはあまりないと思うので、現金を持ち歩けば大体は大丈夫かと。ガラパゴスキャッシュ決済がメインのところだとお釣りの用意があまりなかったりするので、小さい額面で用意しておくとなおよき。バスのプリペイドカードについては実体験ゼロです。物価の安さに甘えていつもヤンデックスGOでタクシーライフしてたので。
【カザフスタンの物価】
ウズベキスタンほど安くはないものの、かなりお財布に優しい国でした。
・アルマトイの地下鉄1回乗車 120
・駅のローカル食堂のプロフとマンティ2つとお茶 1600
・食堂車のビール 800
・ミネラルウォーター(1-1,5L) 350-500
ローカル食堂も安いところ高いところ様々ですが、これは安めのお店の値段。高いところだと同じものを頼んでも2000テンゲすると思いますし、選ぶ料理の単価次第でもあります。ビールは庶民的な食堂車だったセメイ→マンギスタウの列車のもの。同じ食堂車といってもアスタナ→セメイの列車のものはちょっと高級風だったせいか倍の値段でした。ミネラルウォーターも街のスーパー、駅舎の売店、ホームの売店の順で値段が上がります。
【気候】
10月後半に滞在しました。ウズベキスタンよりガッツリ秋が深まっていて、もう冬がチラ見えしている感じでした。青森生まれドイツ在住、耐寒性抜群の北方種なのでカーゴパンツ、長袖、プルオーバーでちょうどよかったです。つまり、大多数の日本人的には冬の装いになるかと。地元民っぽい人たちは同じような格好の人が多かったです。しかし、雨と小雨が多かったのが地味に辛かった。荷物を持っていると傘をさしにくいとか、街歩き散歩が楽しめないとか、それ以前の問題として足が濡れる。道路がへこみばかりで水たまりが発生してる。たまに沼レベル。そして沼ばっかりで避けれない。何なら沼がデカすぎて不可避。雨自体は弱かったりもうすでに晴れていても、沼が干上がるまでは足びちょびちょの危機。ウズベキスタンやキシナウ(モルドヴァ)でも道路はガタガタのへぼへぼでしたが、雨が降ったときのコイツらがここまで凶悪だったとは……。
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さすがにこの写真レベルの沼はアルマトイやアスタナでは見かけなかったものの、足が濡れる場面は多いかと思います。雪のシーズンではなくても悪天候に強めの靴を用意するといいかもしれません。
【Yandexとロシア語】
この辺りはウズベキスタン編と被りますが、Yandex Map、Yandex GO(配車アプリ)、ロシア語は三種の神器。ウズベキスタンほど観光地になっていないせいか、英語が問題なく通じたのはホテル・カザフスタンのみ。博物館やホテルでも、限りなくベーシックな単語しか通じないか、ロシア語が返ってきました。たまに外国人と交流したいという動機や親切心から一生懸命英語で話してくれる人に当たると感激。中央アジアの中でもロシア化が強いというイメージのせいもあるかもしれないけれど、おそらくウズベキスタンよりもずっとロシア語のプレゼンスが強い。もちろんカザフスタン国内でも地域によるみたいですが。グーグル翻訳を使う場面も多いと思うので、モバイル通信環境は整えていきましょう。
【服装】
ドイツとあまり変わらない印象でした。日本のようなお洒落さはないものの、洋服の人が多い。もちろんヒジャブにアバヤ(のようなワンピース型のゆったりとした服)の女性や、ウズベク帽/カザフ帽のような伝統的な帽子をかぶった男性も見かけるものの、その割合はウズベキスタンよりずっと低かったと思います。東アジア的な見た目の人なら、カザフスタンは東洋的な顔立ちの人が多いので、プレーンな服装なら季節と天気に合わせてさえいれば浮くこともないかと。
【まとめ】
出入国周りで古い情報が残っていたり、そもそも観光地としてちょっとマイナーな旅行先かもしれません。ですが、鉄道、広大なステップや山、砂漠といった大自然、美味しいカザフ料理とたくさんの楽しみ方があります。数年前からビザなし観光可になり出入国も楽になったので、みなさんもぜひ行ってみてください。