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スプリントプランニングのアジェンダのテンプレートを公開

インフォマートの開発部門で様々なサービスの開発や改修を担う社員たちが、時に技術力の向上のために、時に自らの楽しみのために、開発界隈で話題の○○を体験し、レポートするリレー企画です。
今回は、DevOps Rapid Application開発部 廣瀬がレポートを担当します。


■はじめに

こんにちは、プロダクト開発チームでスクラムマスターをしています、廣瀬です。今年の1月よりアジャイルでの開発が始まり、スクラムマスターを務めることとなりました。私自身はアジャイルでの開発経験がなく、現在まで有識者の支援を受けながらスクラムマスターの責務や振る舞いを日々学習しながら楽しんでいます。

■概要

今回は私のチームで実際に使用している、スプリントプランニングのアジェンダのテンプレートを紹介します。スクラムイベントのアジェンダのテンプレートはあまり公開されていないため、参考になれば幸いです。テンプレートは2月頃に作成して、随時改善してブラッシュアップされています。2週間スプリントで稼働しているため、それに合わせたテンプレートとなっていることはご了承ください。

アジェンダのテンプレートを作成した契機は、当時、以下のことがチームの課題に上がったためです。

・SM(私)含めて全員がアジャイル開発の経験がないため、スクラムへの理解が浅い。そのため、スクラムイベントの目的がわからず、うまく機能しない。
・Notionを導入し始めたため、テンプレートの機能を使いたかった。
・プランニングで今なにをしているか、次になにをするか、どうなったらゴールかの認識が揃っていなかった。

■テンプレート紹介

以下がテンプレートとなります。
テンプレートには、以下で紹介するスプリントプランニングのタイムボックス以外にも、今回のスプリントについての事前質問欄や、タスクボードのリンクを貼っていますが、ここでは割愛します。
 
タイムボックス
1部 何をするかを明確にする(ALL) 40分
完了条件は以下の質問への回答ができること。
・このスプリントゴールが新聞の見出しになったら、どのような見出しになるか?
・このスプリントにおけるチーム編成は?
・このチームの最大キャパシティはどれくらいか?
・最もビジネス価値の高いプロダクトバックログアイテムはどれか?
・これらのプロダクトバックログアイテムに関する(技術的、政治的、文化的)懸念事項は何か?
・チームにとってその他の懸念事項は何か?

  1. (PO)情報共有、今スプリントの価値の説明(10分)

  2. (ALL)キャパシティの確認(5分)

    1. 今スプリントのイベント、休暇予定(PO含む全員)、祝日等を確認。開発に充てられる時間やチームの予定、人数を明確にする

  3. スプリントゴールの仮合意(5分)

    1. (PO)スプリントゴールの提案

    2. (ALL)スプリントゴールの仮合意

  4. プロダクトバックログアイテムの仮合意(5分)

    1. (PO)スプリントに入れたいPBIの提案、優先度の提案

    2. (ALL)スプリントに入れるPBIの仮合意

  5. (ALL)開発者からPOに対して質問(15分)

    1. なぜ開発するのか、スプリントで何ができるのかを開発者が主となり明確にする

    2. 開発の懸念事項を明確にする

休憩 5分

2部 どのように実現するかを明確にする(ALL) 45分
完了条件は以下の質問への回答ができること。
・以上をふまえて、スプリントバックログを形作るストーリーや満足条件、タスク、個々のアイテムの見積もりはどのようなものか?
・選択した作業をどのように成し遂げるのか?

  1. (ALL)開発者の裁量によりPBIの実現方法を計画する(25分)

    1. PBIを細分化、あるいは細分化されたタスクの再確認をする

    2. 細分化、あるいは再確認時に、疑問がある場合はPOに再確認

    3. もし今スプリントで実現できない想定のPBIであれば、POと合意を取りプロダクトバックログに戻す

  2. (ALL)PBIの完成の定義やスプリントゴールを再調整する(10分)

  3. (ALL)POと開発者のスプリントゴールの合意(10分)

3部 開発者が実現可能な計画をする(開発者+SM+EM) 150分
完了条件は以下の質問への回答ができること。
・以上をふまえて、このスプリントバックログからプロダクトバックログに戻すべきアイテムはあるか?
・このスプリントにおけるチームの最終的なコミットメントはどのようなものか?

  1. (開発者)PBIの依存関係を確認する(20分)

  2. (開発者)PBIの目安の完了日を決める(20分)

  3. (開発者)SBIの具体的な実現方法を考える(80分)

  4. (開発者)見積もりができていない場合、SBIを理想時間で見積もりをする(10分)

  5. (開発者)全ての対応予定のSBIの担当者の決定(20分)

PBIの依存関係を理解したうえで、目安の完了日を設定した表
SBIの理想時間見積もりと仮担当者を決定した表

4部 実現するプロダクトバックログの確定(ALL) 非同期
POと開発者が、Slack等で今スプリントで実現するPBIの合意を取る。
ただし、スプリントバックログからプロダクトバックログに戻すべきアイテムがある場合のみ実施。

■テンプレートの各項目の説明

これらの項目の意図を説明します。
なお、タイムボックスは記載の通りのため、説明を割愛します。
 
1部 何をするかを明確にする(ALL) 40分
このセクションの目的は、スプリントの目的や目標を明確にし、チーム全体で共通理解を持つことです。完了条件として、以下の質問に対する回答を全員ができることが求められます。

・スプリントゴールが新聞の見出しになったら、どのような見出しになるか?
◯スプリントの成功を簡潔に表現するためのもので、チーム全体が同じビジョンを共有するために重要です。
◯また、デイリースクラムで適用可能なスプリントゴールにするために、何のPBIを消化するかではなく、どのようなことを実現するかとしたいため、新聞の見出しという表現にしています。

・このスプリントにおけるチーム編成は?
◯各メンバーの役割と責任を明確にします。これはなくても問題ないように思えますが、スキルコンバートやスキルアップのための支援要員を明確にする狙いもあります。

・チームの最大キャパシティはどれくらいか?
◯休暇予定や祝日などを考慮し、チームの作業可能な時間を確認します。
◯3部でSBIの理想時間見積もりをした後に、合計の理想時間とチームキャパシティとの比較をして対応可能か確認します。

キャパシティ確認のために、チームの作業可能時間を可視化した表

・最もビジネス価値の高いプロダクトバックログアイテムは何か?
◯バックログでの優先度ではなく、スプリントゴールに対するプロダクトバックログアイテムの優先度を定義します。

・これらのプロダクトバックログアイテムに関する懸念事項は何か?
◯技術的、政治的、文化的な懸念を予め把握し、リスク管理を行います。

・チームにとってその他の懸念事項は何か?
◯その他の潜在的な問題や障害を洗い出し、予防策を講じます。

休憩 5分
集中力を保つために、短い休憩を挟みます。これにより、次のセクションに向けてリフレッシュできます。
 
2部 どのように実現するかを明確にする(ALL) 45分
このセクションの目的は、スプリントをどのように実現するかを明確にし、チーム全体で共通理解を持つことです。
完了条件として、以下の質問に対する回答を全員ができることが求められます。

・以上をふまえて、スプリントバックログを形作るストーリーや満足条件、タスク、個々のアイテムの見積もりはどのようなものか?
◯各PBIのユーザーストーリー、受け入れ条件、完了条件、タスクが明らかになっているようにします。
◯ここで表現しているスプリントバックログは、今スプリントで実現するプロダクトバックログのことを示しています。

・選択した作業をどのように成し遂げるのか?
◯作業の具体的な方法を計画し、実行可能なタスクに落とし込みます。
 
昼休み
テンプレートには記載していませんが、昼休みとなるため、2部と3部の間には休憩を設けておりません。
 
3部 開発者が実現可能な計画をする(開発者 + SM + EM) 150分
このセクションの目的は、開発者がスプリント中に迷わないように更に具体的な計画にすることです。ここではPOは参加せず、EMやSMが必要に応じてサポートします。
完了条件として、以下の質問に対する回答を全員ができることが求められます。

・このスプリントバックログからプロダクトバックログに戻すべきアイテムはあるか?
◯理想時間の合計から現実的に達成不可能なPBIがあれば、プロダクトバックログに戻すことを検討します。

・このスプリントにおけるチームの最終的なコミットメントはどのようなものか?
◯チーム全体で最終的なコミットメントを確認し、スプリントの成功に向けた共通理解を持ちます。
◯この場にはPOがいないため、スプリントゴールが変更された場合には、4部で合意を取ります。

4部 実現するプロダクトバックログの確定(ALL) 非同期
4部については、テンプレートに記載の通りとなります。

■改善点

実際にテンプレートを活用して、スプリクトプランニングを実施した結果、下記のような改善点があがりました。

改善点1
「3部『3.(開発者)SBIの具体的な実現方法を考える(80分)』の時間を半分にしたい」との意見がありました。
現在はチームのスキルのバランスが悪く、フロントエンド担当、バックエンド担当のような状態になっています。そのため、実現方法の認識を合わせるために80分確保しています。スキルのバランスが良くなったら、少しずつ時間を減らす予定です。
 
改善点2
「4部の廃止、及び3部にPOが参加してほしい」との意見がありました。
現在POが多忙なため、3部にPOが参加できていません。プロダクトバックログに戻すべきアイテムがあった場合に4部で合意を取りますが、合意が取れないリスクをなくせます。

■改善してうまくいった点

3部、4部の導入
今までは1部、2部の計2時間で計画を完了させていましたが、3部、4部を追加したことで以下の良い点が発見できました。

・理想時間とキャパシティの比較を行うことで、現実的に不可能であるか事前に判断できました。
・目安の完了日を決めることで、簡易的なWBSを作成でき、デイリースクラムでスプリントゴールが達成できそうであるか判断できました。
・スプリントゴールが達成できない場合に、早めに適応できました。
・具体的な実現方法の認識が揃っているため、デイリースクラムの目的である、検査や適応に集中できました。

■テンプレートの作成をして感じたこと

テンプレートにより、課題だった「スクラムイベントの目的」がはっきりとしました。また、別の課題だった「今なにをしているか、次になにをするか、どうなったらゴールかの認識」も揃うようになりました。

■おわりに

今回は私が所属しているチームで実際に使っている、スプリントプランニングのアジェンダのテンプレートを公開しました。今回のレポートが、スプリントプランニングの具体的なやり方をご存じでない方の参考になると嬉しいです。


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