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システムはチームで育て、チームで磨く <プラットフォームイノベーション部 有岡寿典>

インフォマートの開発部門のメンバーにインタビューし、開発者を職業に選んだ理由から、開発という仕事や手がけたサービスへの想いまでを存分に語ってもらうこの企画。3回目に登場するのは、入社から15年目、現在プラットフォームイノベーション部で請求書クラウドサービス「BtoBプラットフォーム 請求書」のプロジェクトマネージャーを務める有岡寿典。本サービスの立ち上げから、国内シェアNo.1に成長するまでシステムを磨き続ける役割を担ってきた彼ですが、「自分がやった」という実感はなく、「チームの力でなんとかしてきた」というのが本音とのこと。では一体、開発者が集まるチームとはどんなものなのでしょう?

<プロフィール>
有岡寿典(アリオカトシノリ)
ITIL部門プラットフォームイノベーション部/課長

東京工科大学卒業後、通信系IT企業を経て、2009年に株式会社インフォマートに入社。「BtoBプラットフォーム 受発注」の開発を担当したのちに、「BtoBプラットフォーム 請求書」のサービス立ち上げ時から、要件定義や開発、運用に従事。現在はプロジェクト全体のマネージメントに携わる。

■同じチームで長く一つのプロジェクトを

――このインタビュー連載は、有岡さんで第3回目となります。
過去二人のインタビュー、とても面白く読みました。だからこそ私でいいのか? という不安がありまして……。こういう場はかなり苦手なんですよね。

――そうおっしゃらずに、どうぞよろしくお願いします。初めに、有岡さんがエンジニアリングやITに関わるようになった経緯から教えてください。
私は大学で電子工学を学んでいて、半導体の評価に関する研究をしていました。エンジニアリングやITとはまったく違う分野で、パソコンを使うのは資料やレポートを作成する時くらいだったんです。卒業後の進路に関しても当時は就職氷河期だったこともあって、とにかく就職先を見つけたいというのが正直なところで。多くの企業を受け、内定をいただいた通信系のIT企業に就職した、というのがエンジニアとしてのキャリアの始まりです。お恥ずかしながら、最初は「IT業界って何?」というレベルでした。

――有岡さんが就職した1990年代後半のIT業界はどんな感じでしたか? 脚光を浴びる少し前ですかね。
友人に「どこに入社してどんな仕事をしているの?」と聞かれた時に、「IT業界でシステムエンジニアをしている」と答えても、誰もピンときていませんでした(笑)。今はさすがにそんなことはないですけれどね。

――入社後はどんな業務を担当されたのですか。
半年間の研修でプログラミングを集中的に学んだ後、チームに配属され、特定のプロジェクトを担当するようになりました。クライアントのシステム開発を請け負う会社でしたので、チームで一定期間クライアント先に出向いて仕事をして、案件を終えたら次のクライアントへ移る、というスタイル。大変な時もありましたが、仲間と仕事をやり切った後に味わえる達成感は大きなモチベーションになっていました。

――有岡さんは前の会社に10年ほど勤めた後、2009年にインフォマートに入社しています。転職のきっかけを教えてください。
一番大きな理由は、前社の組織体制の変更に伴い、共に働いていたメンバーが次々と辞めてしまったことです。仲間がいたからこそ大変な局面も乗り越えられたわけで、私一人で続けるイメージが持てなくて。そこで次の就職先では、同じチームや環境の下で長く働けるよう、自社システムを開発している企業がいいと考えるようになったんです。その点当時のインフォマートは、自社開発した「BtoBプラットフォーム 受発注」が伸び始めていて、これから国内外を問わず様々な業界に導入される可能性があると思い、興味を持ちました。これは、今後の伸び代が大きいなと。そして何より、同じチームで長く一つのプロジェクトを担当できるという環境に惹かれ、入社を決めました。

■システムは使ってもらって初めて価値が評価される

――有岡さんが入社した頃のインフォマートの社内はどんな雰囲気でしたか。
和気あいあいとして活気がありつつも、居心地が良かったのを覚えています。2009年の入社当時、自社サービスは「BtoBプラットフォーム 受発注」の他はそれほどなくて、システムの利便性を高めるために、機能開発や拡充に力を入れていたタイミングでした。私が最初に担当したのは「フランチャイズ機能」といって、飲食のフランチャイズ本部の方々が取引先とのやりとりや請求管理を円滑にするための機能。その後様々な機能開発を経てプロジェクトのリーダーとなり、他部署の方々と話し合いながらシステムや機能の要件定義を行うことが増えていき、2012年からは「BtoBプラットフォーム 請求書」のサービス立ち上げに関わることになりました。

――有岡さんは「BtoBプラットフォーム 請求書」の立ち上げ時に、どんな役割を担っていたのですか。
それ以前と同じようにシステムに必要な要件を定義し、他部署の方々と話し合いを重ねる役割でしたね。想定ユーザーを設定して必要な機能を洗い出し、画面の仕様や具体的な入力項目といった詳細を詰めて開発を進めていたのですが、これがまあ、大変なプロジェクトで(笑)。

――「BtoBプラットフォーム 請求書」のお客様はフード業界に限らず、製造や金融、コンサルなど、とにかく幅が広いですよね。多様なお客様のニーズを叶えるシステムを作るのは、大変なことだったと想像します。
そうなんです。細かな仕様の開発もすごく大変だったのですが、一番苦戦したのはスケジュール管理。元々は社内の経理部門をユーザーに想定して開発を進めていたものの、システムの形が見えてくるにつれ、「他のお客様にとって使いやすいのか?」という観点から色々な意見が出てきまして。一度システムを修正するとテストもやり直しになるので、スケジュールがどんどん遅れていく……。一時は忙しさの波にのみ込まれるほどでしたが、多くの方々の助けを借りながら、なんとかローンチできたという。

――そんななかで、開発者として特にこだわったことはなんでしょう。
こだわりというよりも誇りを感じている部分になるのですが、「BtoBプラットフォーム 請求書」は一見シンプルな設計であるものの、システムの中はお客様ごとに仕様が分かれる複雑な仕組みになっています。この複雑な処理をスムーズに行い、それほど大きな不具合を出さずに運用できているというのは、今の私たちの開発チームだからこそできることだと思います。

――控えめな有岡さんがそう言うのだから、そこは強調しておきたいですね(笑)。リリース後、周囲からはどんな反応がありましたか。
「特定のデータだけダウンロードしたい」など、お客様から様々なリクエストをいただきました。社内でも予め色々と議論はしていたつもりだったんですが、想像が及んでいなかった部分も多くて、「お客様に言わせてしまったな」という申し訳なさを感じました。ですがシステムというのは、お客様に使っていただいて初めて良い点や悪い点、そしてその価値が分かるものでもある。開発側からすると厳しい意見や難しい注文であったとしても、お客様から率直な声をいただけるのはとてもありがたいことです。出てきた課題をどう解決するかをチームで考え、システムを徐々にブラッシュアップしていく工程にとてもやりがいを感じています。

■100万社のお客様の“重み”に応えるために

――現在「BtoBプラットフォーム 請求書」は同種のサービスでは国内シェアNo.1、実に100万社を超える皆様にお使いいただいています。10年以上開発や改修に関わってきた有岡さんは、現状をどう捉えていますか。
自分が手がけたサービスがまさかここまで広がるとは思ってはいなくて、驚いています。以前まったく違う業界の知り合いと話していた際に、インフォマートという社名やサービスの名前が自然と会話に挙がった時はすごく嬉しくて。ただ正直なところ、嬉しさよりも不安な気持ちの方が優っている気もしています(笑)。何かのエラーでシステムが止まってしまうと、お客様に多大なご迷惑をおかけしてしまうので、その重みを痛感しているところです。開発チームとしては、エラーを出すことなく、納期とコストを守ってシステムをつくり切る。これは絶対的な責任だと思っています。

――請求書はお客様の会社の売上に直結しているからこそ、重大な緊張感がありますよね。時代の変化とともに、「BtoBプラットフォーム 請求書」に求められる機能や役割も増えてきたと思うのですが、サービスは今後もどんどん変化していくのでしょうか。
そうですね。最近ではインボイス制度の施行にあたってシステムを大幅に改修しました。サービスをリリースしてから、最も長い期間と大きなコストをかけて対応したと思います。それをなんとか終えた今考えているのは、これからも社会の変化に伴って改修すべきことは出てくるにしても、サービスの大枠に関わる機能追加というのはそれほど多くはないんじゃないかということです。そのあたりの分析はだいぶ突き詰められてきたなと。求められているのは、現段階でシステムに搭載されている機能をどう使いやすくつなぎ合わせていくか。お客様の利便性や業務効率を向上させるためにできることはまだあるので、そのあたりをチームでどんどん深掘りしていきたいですね。

■メンバーが思い切り活躍できるチャンスを提供したい

――チームという言葉が何度も出てきていますが、有岡さんから見て、インフォマートの開発チームの特徴はどんなところですか。
私のチームに関して言うと、個人としての力、チームとしての力どちらも高いと思っています。個人としては細部まで突き詰めることができる人たちが集まっている。ただそれだけではダメで、「BtoBプラットフォーム 請求書」のように多様な機能が搭載されているサービスの場合は、エンジニアによって得意、不得意な機能がありますし、前にAさんが触った機能を、今回はBさんが触るという場合もある。その時にお互いに声をかけ合い、フォローし合える体制ができているのは大きな強みです。また、私が入社した頃と比べると、時間をかけて人を育てていく社風に変わりつつあるので、会社としていい方向に向かっているようにも感じます。

――自社で開発者を育てようという気運が高まっている背景にはどんな事情があるのでしょうか。
たとえば「BtoBプラットフォーム 請求書」の開発当時はとにかくスピード感が重視されていたので、すでに高いスキルを持つエンジニアを中途採用して、すぐに活躍してもらおうという傾向にありました。ですが次第に、その下の人材が育っていないがゆえに、システムの運営や改修に課題を抱えるようになってしまって。エラーの対応や不具合の改修が必要になった際、エンジニアがシステムのコードがなぜそうなっているのかを理解していないと回りくどい修正をしてしまい、結果的にシステムが肥大化してしまうんです。内部でしっかりと人材が育っていれば、受け継がれるべきことはちゃんと受け継がれたうえで、システムをスリムな状態で維持できるようになります。今はその理想形に向けて人材教育に力を入れ、開発手法の見直しも進めているところです。

――教育方針や開発手法を含めて、会社の環境や風土が変わりつつあるなかで、有岡さんはどんな役割を担っているのですか。
プロジェクトのスケジュール、工数、予算、システムの方向性の確認、および人の管理が主な業務です。「BtoBプラットフォーム 請求書」のプロジェクトマネージャーになって5年が経ちますが、実は現場のエンジニアとしてプログラムと向き合っていた時よりも、今の方が自分に合っている気がしていて。

――なぜそう感じるのですか。
一言でエンジニアといっても、専門的な技術やスキルを磨きたいタイプと、少し引いたところからプロジェクト全体を見渡したいタイプに分かれます。私の場合は間違いなく後者。ひょっとすると、技術的な専門用語やポイントを噛みくだいてお客様に伝えるのが、人よりも少し得意なのかもしれません。システムについてお客様と議論する際も、お客様の視点に立って言葉を選びながら、個別の機能の話だけでなく、全体像を整理して方向性を決めるようにしています。

――プロジェクトマネージャーとして現場を率いるうえで、大事にしていることはありますか。
お客様はもちろん、メンバーともしっかり話すことを意識しています。やはり人は「生もの」ですから、置かれている立場や状況でその都度考えが変わっていきます。だからこそ、些細なことでもチームメンバーとコミュニケーションをとり、ちょっとした表情なども気にかけるようにしています。チームメンバーがそれぞれの役割を果たしていかなければ、システムは十全に機能しませんからね。

――まさに「システムは人なり」ですね。最後に、開発者としての有岡さんの今後の目標を教えてください。
ネガティブな意味合いはまったくないのですが、「BtoBプラットフォーム 請求書」のように、多くの方に使われるサービスを私が今後ゼロから作るのは、年齢的にも技術的にもなかなか難しいと思うんです。でもうちのチームのメンバーにはぜひそういうチャンスを提供していきたい。そのために、最新の技術トレンドや業界のニュースにアンテナを張ったり、日々の雑談の中からヒントを得たりして、自身の頭を柔らかくしながらアップデートし続けていきたいと思います。


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