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公的機関におけるDNSベースのセキュリティの普及:その背景と意義

サイバーセキュリティの脅威が高まる時代において、大学や研究機関は、貴重なデータや知的資産を保護する革新的な戦略を取り入れる最前線に立っています。そのような戦略のうち、勢いを増しているのがPDNS(Protective Domain Name System)の導入であり、これは彼らのサイバーセキュリティ防御を強化する積極的な姿勢を示しています。

インターネットの三本柱であるTCP、IP、DNSのうち、DNSは40年以上にわたって運用され、オンラインコンテンツやアプリケーションへのシームレスなアクセスを可能にしてきました。TCPとIPは過去にサイバーセキュリティコミュニティから大きな関心を集め、これらを中心に防御機構の設計に対する多大な研究開発の努力が集中してきましたが、DNSはしばしば見過ごされてきました。

しかし、近年その重要性が特に公的機関で認識されつつあり、これに伴って採用が急速に進んでいます。このブログでは、公的機関の間でPDNSの採用が増加している背景と、それが彼らのサイバーセキュリティフレームワークにもたらす利点について深掘りしていきます。
 



DNSとセキュリティ運用の理解


 なぜ大学や研究機関がPDNSを重要視するかを論じる前に、その本質を理解することが重要です。DNSはインターネットのディレクトリとして機能し、人間が読めるドメイン名をコンピュータが理解できるIPアドレスに変換します。PDNSは、DNSクエリを精査し、疑わしいまたは悪意のあるウェブサイトへのアクセスを阻止することでセキュリティを強化します。DNSレベルで動作するため、リクエストをインターセプトし、ユーザーを潜在的に危険な場所から遠ざけることで、サイバーセキュリティリスクを軽減します。
 
サイバー脅威の変化を考えると、プロアクティブな防御体制のアプローチが重要です。ここ近年、AIの進歩が加速する中、AIを悪用して攻撃がより高速かつ高度化することで、従来のパッシブセキュリティ対策は必要不可欠でありながらも、その限界が明らかになってきています。これに対し、PDNSは既知の悪意のあるドメインや、リスク要素の高いドメインへのアクセスを常時監視、遮断することで、プロアクティブな防御機構を付け加え、これらの防御範囲内のユーザーが偶然に有害なコンテンツとの接触を減らすと同時に、マルウェアが攻撃者と通信する能力を無効にすることで、さらなる段階の攻撃を防げます。
 
サイバーセキュリティ業界の調査によると、1日に平均20万件の新しいドメインが登録され、そのうち70〜85%が悪意のある意図を持った脅威行為者によって悪用されています。したがって、これらの悪質なドメインへのアクセスを初期の接触点で阻止することがますます重要になります。これは、PDNSによって効果的です。
 

サイバーセキュリティ体系の再考


 大学や研究機関は、独自の研究、学生記録、財務情報など、貴重なデータを所有しているため、サイバー攻撃の主要な標的となっています。金銭目当てのサイバー犯罪者から国家主導の組織まで、さまざまな脅威行為者が、これらの機関のネットワーク内の脆弱性を悪用してデータの盗難、スパイ活動、業務の混乱などの悪質な目的で攻撃を行います。人類の更なる発展を推進するためには、これらの組織のデータの機密性、完全性、可用性を守ることは欠かせません。
 
セキュリティ専門家によると、セキュリティ対策を行う際には、最初にデバイスベースの防御メカニズムを導入し、デバイススキャンによる不正なメモリやファイルアクセスを監視するのが一般的です。そして、その次にネットワークベースの検知サービスを導入し、内向きと外向きの通信を監視し、侵害の痕跡を特定することが重要とされています。

これらの最初の2つの段階が、サイバーセキュリティ防御システムの基盤を形成しています。この基盤を基に、セキュリティ専門家は他の検知技術を検討し、基本ラインを補完するために進化し、他のサービスを追加することで、多層防御の戦略を展開します。多岐にわたるサイバーセキュリティ防御機構の中で、なぜ大学や研究機関がDNSベースの防御メカニズムに特に注力するのでしょうか?
 
これは、公的機関で活動するサイバーセキュリティ専門家の背景に大きく影響を受けています。彼らの多くは、一般的なIT管理とヘルプデスクの業務と並行してセキュリティの責任を担当しながら、コンピューティングおよび通信システムの基礎に深く入り込む新興のエンジニアです。彼らは、DNSをインターネットのディレクトリーと認識しています。

これは、一般的なソフトウェアやシステムがオンラインリソースにアクセスしようとするときの最初の接点として機能します。このDNSルックアッププロセスは、今日のインターネットトラフィックの99%以上を占めるハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)などの通信プロトコルよりも先行します。多くのドメインが悪意のある意図で作成され、ほとんどのマルウェアがDNSルックアップを必要としてその後の悪意のあるアクション(マルウェアのダウンロードやコマンド制御など)を促進することを理解し、これらの専門家たちは、現在のサイバーセキュリティパラダイムの欠陥を認識しています。

あるインターネット上の接続先が高い危険因子を持つなら、システムが接続を許すことは本末転倒ではないでしょうか? 代わりに、その前のDNS解決の段階で脅威をストップするのはどうでしょうか? DNSサーバーが外向きのアクセスを検知しブロックする能力を持つなら、脅威の初期段階で中和できるのではないでしょうか。
 
これにより、DNSが初めからセキュリティ防御の一員としての位置付けをされた場合、どのようにサイバーセキュリティ戦略が進化するかを、考える契機となります。
 
PDNSへの関心のもう一つの理由は、サイバー攻撃への防御の独自のアプローチにあります。従来の検知サービスは、通常、マルウェア自体の識別と分析に焦点を当てています。この方法論には、攻撃パターンの事前知識が必要であり、しばしば攻撃者が行動を起こすのを待つ反応的な立場が必要です。その後、研究者は、攻撃者によって残されたマルウェアバイナリーや侵害の痕跡を解析し、過去の攻撃キャンペインとの比較した結果、防御システムに統合するための侵害インディケーターを特定します。
 
一方、PDNSは攻撃者が利用するインフラを狙います。攻撃キャンペーンの90%以上がDNSインフラの設定に関与していることから、PDNSは攻撃者のDNS通信内の活動に対する統計分析を活用しています。このアプローチにより、研究者は完全に機能する前に潜在的に悪質なドメインを識別し、予測することができます。この方法論をクラウドベースの計算リソースの拡張性と機械学習機能と組み合わせることで、PDNSは迅速にドメインの悪意を予測し、潜在的な脅威が具現化する前に防御システムを強化することができます。
 
結果として、これらの先見の明るい学者たちが重要な分析と実験に従事することへの推進力は、このパラダイムシフトの原動力となります。彼らの伝統的なサイバーセキュリティの実践の枠組みを超えた取り組みと革新的な解決策を模索する姿勢は、サイバーセキュリティの領域における持続的な学びと適応の重要性を示しています。新しいアプローチとテクノロジーを取り入れることで、これらの学者は自らの機関の強靱性を向上させるだけでなく、サイバーセキュリティ実践の広範な発展に貢献し、より安全なデジタル環境を確保しています。
 

「Target Rich, Resource Poor」な環境に適したソリューション


 PDNSに対する学術機関の強い関心を理解するには、年齢層によるインターネット利用のパターンの多様性を考慮することが重要です。大学生や研究者のかなりの部分は、デジタルネイティブとされる若年成人のカテゴリーに属しています。これらの個人は、学術研究と個人表現の両方のためにオンラインプラットフォームと関わることが主であり、インターネット利用に対して流動的で適応性のあるアプローチを体現しています。
 
さらに、彼らの試行錯誤する傾向と十分なサイバーセキュリティ意識の欠如が、個人のセキュリティを危険にさらしたり、機関のデータの完全性を危うくしたりするために設計された欺瞞的なウェブサイトやアプリケーションに遭遇する可能性を高めています。また、学生や研究者によるBYOD(自分のデバイスを持ち込む)の普及により、一般的なセキュリティポリシーでの監視や制御が困難になっています。
 
さらに、費用の課題もあります。公的機関は、常に研究や教育プログラムの資金を優先しており、サイバーセキュリティ対策に十分な予算を割く余裕はありません。そのため、学生や研究者のインターネット利用の傾向と財政的制約が組み合わさり、脅威行為者による悪用の可能性が高まる環境が生まれています。
 
このような「Target Rich, Resource Poor」(攻撃対象が多く、リソースが不足)な環境では、多くの脆弱性が存在するため、基本的かつ汎用的な防御メカニズムがリスクを軽減することが不可欠です。これは、学生、研究者、およびスタッフが悪意のあるリンクやリスクの高いコンテンツにできるだけ回避させることを意味します。PDNSは、外務省が常時に更新、発行する、危険レベルが分類される渡航勧告と同様に、ユーザーを潜在的な脅威から守るためにドメインへのアクセスを監視・規制する基本的な保護手段として機能します。デバイス間やサービス間の通信を促進する上で普遍的な役割を果たすDNSは、公的機関の環境内でのサイバーセキュリティ防御を強化するためのシンプルで費用対効果の高い解決策を提供します。
 
PDNSの展開は、ネットワーク帯域幅の節約という重要な副作用も提供します。DNSは制御面で動作するため、ユーザーデータ通信の開始の主要な仲裁者として機能します。危険または非必要なドメインへのアクセス要求をインターセプトして拒否することで、PDNSはユーザープレーントラフィックの帯域幅要求を効果的に削減します。この削減は、ネットワークの効率性を向上させるだけでなく、ファイアウォールやエンドポイント検知システムなどの追加の検知サービスの作業負荷を軽減します。したがって、PDNSで強化されたネットワークは、より効率的に動作し、より持続性の高いキャンパス環境に貢献する可能性をもたらします。
 
 

 

結論


まとめると、エスカレートするデジタル脅威の中で、PDNSの採用は公的機関内のサイバーセキュリティ防御を強化するのに高い効果を示しています。悪意のあるドメインへのアクセスを事前にブロックすることで、機関は初期の接触点でサイバーセキュリティリスクを緩和することができます。このパラダイムの転換は、DNSの重要性とインターネットのディレクトリとしてのDNSの重要な役割を微妙に理解することによってもたらされています。さらに、大学生や研究者の人員構成上の特性と行動は、積極的なサイバーセキュリティ対策の必要性を強調しています。PDNSは、サイバーセキュリティ防御を強化し、研究、教育、知的発展の未来を守るためのシンプルで費用対効果の高い解決策として立ち上がっています。
 
大学や研究機関におけるDNSセキュリティの広範な導入は、民間企業におけるその認識と採用の促進につながっています。これらの公的機関が積極的にこれらの対策を展開することで、セキュリティに関する意識が高まるだけでなく、セクター全体のセキュリティプロトコルも強化されています。さらに、新たなセキュリティ技術やベストプラクティスの積極的な追求と実践は、民間企業にとっての模範となり、DNSセキュリティソリューションのより広範な普及と実装を促進しています。この相互の影響の交換は、大学や研究機関が民間企業におけるDNSセキュリティ対策の広範な受容と採用を促進する上で、重要な役割を果たしています。このような採用の必然性から、DNSベースの脅威検知は、TCPやIPベースの検知技術と並んで、サイバーセキュリティにおける主要な支柱として受け入れられ、採用されることが期待されます。



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